第08回|「経験年数も、AIスキルも見ません。じゃあ何を見るか」
AIの会社なので、「AIを使いこなせる人が欲しいんですよね?」とよく言われます。意外かもしれませんが、私たちは「AI使えます」を採用要件にしていません。今回はその理由を正直に話します。
選考で見ているのは、2つだけ
私たちが選考で本当に見ているのは、突き詰めると2つだけです。
素直な知的好奇心——「分からない」とちゃんと言えるか
相手の困りごとに寄り添う共感力——人の話をじっくり聞く姿勢があるか
これまでの技術経験よりも、「新しいことを学ぶのが楽しいか」「人の役に立つシステムを作りたいか」というマインドを重視しています。極端に言えば、いまAIに触ったことがなくても、この2つがある人と働きたい。
なぜ「AIスキル」を要件にしないのか
理由はシンプルです。AIを操作するテクニックやプロンプトの書き方は、3ヶ月もすれば技術が変わって陳腐化するからです。
去年の正解が今年には古くなる世界で、特定のツールの習熟度を採用要件にしても意味がありません。入社時点のスキルは、半年後にはほとんど価値が変わってしまう。
一方で、
「これってどういう仕組みなんだろう?」と面白がる好奇心
ITに困っている中小企業の社長の言葉を、じっくり聞ける共感力
——これらは、どれだけAIが進化しても陳腐化しない、一生モノの人間のコアスキルです。それさえあれば、技術はいくらでも後からついてきます。順番が逆なんです。技術を持っている人を採るのではなく、技術を学び続けられる人を採る。
「経験年数」も、見ていません
もうひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。私たちは、「何年やってきたか」という経験年数そのものを、評価の軸にしていません。
経験年数は、その人がこれから伸びるかどうかを保証してくれません。長くやってきたことと、これからの環境で価値を出せることは、別の話です。むしろ私たちの実感では、経験が浅くても貪欲に学ぶ人が、一年後にいちばん伸びている。だから——「自分はまだ経験が浅いから」「AI開発なんて未経験だから」とためらっている若手・第二新卒・キャリアチェンジの人にこそ、まず話を聞かせてほしいと思っています。この連載を、そういう人への手紙のつもりで書いています。
(もちろん、長く現場で腕を磨いてきた方を歓迎しないわけでは全くありません。ただ、私たちが見るのは"年数"ではなく"中身"。そこは面接でじっくり確かめさせてください。)
「分からない」と言える強さ
特に大事にしているのが、1つ目の「分からないとちゃんと言える」素直さです。
第7回で、AIが暴走して「サーバーを解体しろ」と言ってきた失敗の話をしました。あの教訓の本質は、「分からない時に分からないと言えること」が、人にもAIにも一番大事だということ。知ったかぶりで突き進むより、「ここは分からないので確認させてください」と止まれる人のほうが、結果的にずっと信頼できる仕事をします。
だから、いま技術がなくても大丈夫
「AIの会社なんて、自分のスキルじゃ無理だろう」と尻込みしている人にこそ伝えたい。私たちが見ているのは、今の手札ではなく、学び続けられる素養です。次回は、その先にある——なぜ私たちが「それでも主役は人間だ」と言い続けるのか、思想の核の話をします。
