憧れた人は、夢を諦められない大人だった
初めて会った時、その人はパソコン画面に並んだ小さな小窓の中にいた。
緊張感の漂う会議の途中、小さく手を挙げた彼女は、ピリリと厳しい顔で鋭く意見する。流れが変わった。会の進行を任されていたはずの私の頭の中は、すでに焦りで半分以上が白くなっていて、彼女のその一言に救われた。
「すごい会社」で働く「すごい人」。最初に私が雑につけた彼女のラベルだ。とある仕事でタッグを組んでいる彼女は、何の役にも立たないだろう私からの「すごい」の称号に、ケタケタと笑った。
「さっきの会議、フォローしていただいてありがとうございます」
そう話しかけた私に、さらっと人懐こい笑顔を向ける。さっきまでと打って変わって、少女のように無邪気に笑う彼女は、ただただ私に安心をくれる。嫌味なく、威圧的でもなく、どこまでも謙虚。こんな人になれたらいい、と、憧れのような感情を抱いたのは久しぶりだ。
「すごい会社」で働く「すごい人」で、
「ものすっごくいい人」。
3つ目の雑なラベルは、それでも私の本心だった。
普段は画面越しでしか会うことのなかった彼女と、先日初めて一緒に食事をした。対面で会った彼女は、画面の中そのままの姿で、そのままの人だった。
お酒を飲みながら、仕事の話、お互いの職場のこと、これまでのキャリア、家族やプライベートについて、いろんな話をした。もう大きなお子さんがいることも、その時初めて知った。
彼女は、私に夢を語ってくれた。
「どうしても諦められないの」
「夢を叶えている人を見ると、くやしぃぃ!って思う」
「ドライに割り切ることなんてできなくて」
それは、私もよくよく知っている感情で、思わず私も口にする。
「私もです!いろんなこと、諦められんくて」
少し酔いの回った顔で、彼女が私に手を差し出す。ひんやりと冷たくて、柔らかい手が私の手を握った。
「嬉しい」
にっこりと目を細めて呟く、少女のようなその人は、
その瞬間、今度こそ本当に、憧れの人になった。
夢を諦められない大人を、
その夜私はかっこいいと思った。
