社内ビジコン事務局の日本一を決める戦い、6社が最終へ

大企業の社内ビジネスコンテストで、実は「裏方」こそが勝負を決めている。その事務局に初めて光を当てるアワードが、いよいよ最終局面を迎えた。

> ビジコンの成否は、アイデアではなく事務局の設計力で決まる。

この記事のポイント

・社内ビジコンの「事務局力」を競う異色のAWARDSが最終審査へ

・24社から6社に絞られ、カシオ・本田・ロート薬など大手が激突

・事務局という職種の「見えない知」が可視化されつつある

何が起きたか

大企業向け新規事業支援を手がける株式会社フィラメントが主催する「ビジコンAWARDS 2026」が、2025年3月〜4月にエントリーを受け付け、

24社

の中から最終ノミネート企業

6社

を発表した。選ばれたのはカシオ計算機「IBP」、JTB「JUMP」、大東建託「HIRAKU」、千代田化工建設「F1 PROJECT」、本田技研工業「IGNITION」、ロート製薬「明日ニハ」の6制度。最終審査会は2026年6月10日、東京・港区の港区立産業振興センター ホール大で開催される。

なぜ今、企業が「事務局」の腕前を競い始めたのか

社内ビジネスコンテストそのものは、もう何十年も大企業に存在してきた。だが多くは「応募者のアイデアを集めて表彰する」で終わり、翌年になると担当者が異動して制度が形骸化する。この繰り返しが続いてきた。フィラメントが問題視したのは、そこだ。制度の成否を左右するのは応募者ではなく、制度設計・運営・伴走支援を担うビジネスコンテスト事務局の実践知であると断言し、それを「見える形」にしようとした。

実際にノミネートされた企業を見ると、業種がバラバラなのに気づく。製造業の本田技研工業、旅行業のJTB、化学エンジニアリングの千代田化工建設、不動産の大東建託、医薬品のロート製薬、電子機器のカシオ。業界横断でこれだけの大手が同じ土俵に上がるのは、「社内ビジコンをどう運営するか」という課題が業種を超えた普遍的な悩みになっていることを示していると考えられる。

法的・規制的な観点から見ると、新規事業提案制度は企業の内部統治や人材戦略と直結するため、今後のコーポレートガバナンス強化の流れの中で制度の質が問われる場面が増えてくる。早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏が審査員に名を連ねているのも、この取り組みに学術的な正当性を持たせようとする意図が透けて見える。

業界全体のトレンドで言うと、スタートアップへの外部投資が冷え込む中で、大企業が「内部でイノベーションを起こす」方向に舵を切り始めた。社内ビジコンは人材育成と新規事業創出を同時に狙えるコスパの高い仕組みとして、再評価されている。FINDERSやASSCII STARTUP、Biz/Zineといったメディアがパートナーに連なったのも、この文脈でのメディア的な関心を反映したものだ。

私が「事務局設計」の本質だと思う理由

私がコンサル時代に感じたのは、「制度を作る人」と「制度を回す人」がほぼ別人だという構造上の問題だった。戦略チームが格好いいビジコンの枠組みを作り、実際に運営するのは現場の担当者。その担当者には設計の意図が伝わっておらず、応募者の質問に答えられないまま審査まで進んでしまうケースを何度も見た。

ビジコンAWARDSが評価する項目が「制度設計」「応募者支援」「事業化推進」「持続可能性」に分かれているのを見たとき、これは単なるアワードではないと感じた。ビジネスコンテスト事務局という職種の「業務定義書」を作ろうとしている、とも読める。今まで「なんとなく総務か人事が兼務でやっていた仕事」に、初めて評価軸が与えられようとしているのだ。

もう一つ気になるのは、6社の制度名のセンスだ。「IGNITION(点火)」「HIRAKU(開く)」「明日ニハ」。これを見ただけで、その企業がビジコンに込めたメッセージの温度差がわかる。制度名のネーミングにどれだけ経営の意志が入っているかは、事務局の裁量と覚悟を測る指標になり得ると私は見ている。


事務局という「縁の下」に初めてスポットライトが当たる日が、2026年6月10日に来る。

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