地方観光に必要なのは、インバウンドより“サウダージ”
「インバウンドを狙いたい」の違和感
最近、
地方の観光関係の方と話していて、
少し気になることがあります。
「首都圏から人を呼びたい」
「インバウンドを増やしたい」
という言葉はよく聞くのですが、
「具体的に、どこの国の、どんな人に来てほしいのか」
を聞くと、
意外と曖昧なことが多いのです。
もちろん、
インバウンド自体を否定したいわけではありません。
ただ、
全国には魅力的な観光地が数多くあり、
その中で“選ばれる地域”になるのは簡単ではありません。
さらに海外を狙うとなれば、
言語だけではなく、
・文化
・宗教
・食習慣
・価値観
まで理解し、
相手に合わせていく必要があります。
そこまで徹底して、
初めて「海外から選ばれる地域」になる。
片手間では難しい時代になっている気がします。
地方が本当に狙うべきもの
だから最近、
改めて感じています。
地方が最初に狙うべきなのは、
“新規顧客”ではなく、
「関係人口」なのではないか、と。
そこで思い浮かぶのが、
「サウダージ」という言葉です。
ポルノグラフィティの楽曲でも有名ですが、
もともとはポルトガル語で、
“郷愁”や“失ったものへの想い”を意味する言葉だそうです。
例えば山梨県。
人口は80万人にも満たないですが、
県外に暮らしていても、
山梨にルーツを持つ人は相当数いるはずです。
そういう人たちにとって、
本当に刺さるのは、
派手な観光地ではなく、
「あの頃の空気」
なのではないでしょうか。
思い出せる風景がある
例えば、
・甲州弁
・古民家
・正月の豆餅
・秋の一升瓶ワイン
・無尽帰りのお土産だった甘だれマグロの寿司折り
・川沿いのサイクリングロード
そんな風景や文化です。
今では失われつつある、
祖父母の家の空気。
法事の帰り道。
石和サティの名前を、
今でもつい口にしてしまう感覚。
あの頃の、
人の営み。
それを“体験”できるなら、
人は何度でも訪れると思うのです。
理解があるだけではなく、
リピートにもつながる。
これこそ、
地方観光の大きな可能性ではないでしょうか。

サウダージを掻き立てるのが、ドラマ
そして、
その「サウダージ」を掻き立てるのが、
ドラマだと思っています。
ドラマは、
人の心の動きを描くものです。
ただ観光地を紹介するのではなく、
そこに生きる人の温度を伝える。
懐かしい暮らしや、
忘れていた感情を思い出させる。
それによって、
「また行きたい」
「帰りたい」
という感情が生まれる。
今公開している
「笛吹さんの笛吹旅」は、
まさにそれを形にした作品でした。
絶景や派手なイベントではなく、
冬の温泉街や古民家、
人の空気感を描いています。
地方には、まだ“記憶”という観光資源がある
地方観光は、
“新しいもの”を作る競争だけでは、
疲弊してしまう気がします。
だからこそ、
その土地にしかない
「記憶」
「郷愁」
「サウダージ」
を、
もっと大切にしてもいいのではないでしょうか。
地方には、
まだ数字になっていない魅力がある。
それは、
「懐かしい」
と感じる人がいることなのかもしれません。
