押し入れから来た2人の新田。人事の役割とROIって?【時をかける戦略×人事】(1話)
時は2026年。千葉県の川沿いに建てられた一軒家。
書斎でセカンドモニターを見ながらプレゼン資料を作っている男がいる。新田利之、47歳。
事業会社で人事責任者、HRBP協会の理事、個人では友人ベンチャーの経営コンサル。手を広げすぎて、家族ですら何をしているか説明できない。


……疲れた。コーヒーでも飲もう

そう思った瞬間、押し入れから轟音と光。
新田「立ち眩みか……?」
観音扉が開き、男が飛び出してきた。顔が同じ。声も同じ。
新田「……君、30歳の時の新田利之?」


え……?

新田「落ち着いて」
男「ボク、やっぱりハゲるの?」
新田「地球温暖化よりはるかに短いスパンで毛根がなくなってしまったよ」
男「終わった……!」
男は頭を抱え、急に距離を詰めてくる。
男「将来のハゲ新田さん! 今どんな仕事してるの? もしかして人事? だったら教えて!人事ができるようになったらストレスが減って……」
新田「髪の話は……あとで」
その瞬間、押し入れが再び光った。今度は“自信”みたいなシルエット。


その悩みはオレが答えよう……人事とは組織変革エージェントだ!!

新田(やな予感しかしない)
男「オレは新田利之。株式会社アドウェイズ 人事推進室長だ」
30歳の新田「40歳にはもうハゲてるんだね。性格は尖ってるのに、ちょっと小太り」
40歳の新田「おい」
新田「やめなさい。……でもだいたい合ってるから困る」
混乱回避で呼称を決める
新田「呼び方を決めよう。同じ名前が三人いると話が進まない」
30歳「賛成!」
40歳「くだらない」


くだらないけど必要。Toshiyuki Nittaでうまく頭をとって“トニー”にしよう。30歳はワカトニー。40歳は尖ってるからソリットニー。今の私は……イマトニー



ワカトニー! かわいい!



……ソリットニーってなんだ。誰が尖ってるって?



悪口じゃないよ。たぶん、武器にもなるから。……扱い方の話だね



呼びやすいなら、それで……。

人事の仕事って、なに?


人事って、採用とか労務とか評価とか……そういう部署ですよね?



それは“人事オペレーション”だ。本質はそこじゃない



え……じゃあボク、人事じゃないの?



うーん。“それも人事”だよ。ただ、同じ言葉で別のものを指してるから噛み合いにくいんだと思う。



だったら説明してやる。ウルリッチの“人事の4つの役割”だ。



ウル……誰?



未来か現在か、人かプロセスか。2軸で人事の役割を4つに分ける。さらに3つの機能が求められている。




急に見通しが良くなった……!



ソリットニーは、ワカトニーくんが現状は②の管理のエキスパートに当てはまる『実務推進パートナー』だと言いたいんだね。でもなぜ、ソリットニーさんは戦略実現パートナーでなく、変革エージェントなの?



(よくぞ聞いてくれたという顔をして)コロナ下のアドウェイズは評価制度など変革が必要だった。企業変革を促すという意味で変革のエージェントが最適解なんだ。



でも日常業務も大事ですよね?変革だけだと片手落ちじゃない?

じゃあ、人事とはなに?


そうだね、変えるには、回す力もいる。人は企業活動のほぼ全てに影響するので、私は人事は投資部門であるべきだと思っている。



人事ってコストセンターって言われません?投資って言うと、説明が必要な気が……。



うん。そこなんだ。多くの企業で、人事施策は実行されてる。採用もしてる、制度も整えてる、育成にも投資してる。でも、それが“経営成果として説明できている”企業は多くない。
問題は“頑張ってない”でも“施策が足りない”でもなくて、経営と人事をつなぐ“構造”がないこと、だったりする。

人事ROIは「分数」で置く


構造?



施策が先に立って、採用・評価・育成がバラバラで、“何をもって活躍か”も曖昧になる。結果としてROIが語れない。
そうなると、経営からは“費用”にしか見えないんだ。



確かに……“で、効いたの?”って聞かれると返す言葉が詰まっちゃう……。たとえば投資対効果、人事のROIって、どう出すんですか?



うーん……“売上の式を作る”に寄せると、たぶん揉めるんだよね。だから私は、まず“分数”で置くね。具体的には、人事KPIは、ざっくり Return / Invest で整理できるよ。



Returnは何だ? 売上か?



売上に繋がることもあるけど、まずは成果として“期待役割を果たせる人が増えたか”に置くことが多いね。なので、たとえば分子にあたるReturnには、このようなものがあるよ。
活躍人材数(期待役割を果たしている人の数)
次世代幹部候補数(将来重要役割を担える人の数)



“研修やった”じゃなくて、“研修によって、できる人が増えた”を見る感じですね。



そうそう。で、分母にあたるInvestの例は……



……ちょっと待て。Returnを活躍人材数にするなら、“活躍の定義”で揉めるんじゃないか?



揉めるね。たぶん、必ず。……でも、それは悪いことじゃない。暗黙の前提が表に出たってことだから。そこを言葉として定義しないまま投資すると、あとで必ず苦しくなる。



……人事って、“言葉にする仕事”なんですかね。



まさに、そういう面が強いね。言葉にすることで、採用も評価も育成も、同じ思想で揃えられるんだ。話を戻すと、Investの例として、
採用投資(採用チャネル費用・選考工数 等)
育成投資(育成・研修・オンボード 等)
などがあって、必要なら、人件費投資も含めると良いね。



人件費まで入れるんですか?



会社と目的による、かな。全部を入れてしまうと荒れることもあるし、入れないと現実離れすることもある。だから“どこまでを投資として扱うか”を先に決めると良いよ。



分数がわかりやすいこと自体はアグリーだ。で、経営戦略とどうつなぐ?



そこは次回話したほうが良さそうだね。なぜなら“地図”としての全体像が必要になるから。今日は……人事のROIを話せただけでも十分だと思うよ。



ところで、髪の毛のReturnは増やせますか?



それは……投資配分の問題、かもしれないね……。

今回のメモ
①ウルリッチの人事の4つの役割と3つの機能
②構造がないとROIが語れず、経営から“費用”に見える
③人事ROIは Return/Invest で置く
(Return=活躍人材数/次世代幹部候補数、Invest=採用投資/育成投資/必要なら人件費投資)
