45歳でカラマーゾフの兄弟を読む。ボク、何もしないので。

宿屋にいたのはグル美と四人の男たち。

うち二人は道夫も知っている男。
一人は地主のマキシーモフ。
象島の庵で父フョードルらと地獄の家族会議をした際にいた男ですね。

そして嫌味ないとこ・三浦の親戚である狩我野。
狩我野もあの家族会議に参加していました。

残りの二人は道夫が知らない男たち。

壁際に立っている長身のポーランド人の男・売部。
ソファに座ってパイプをふかすでっぷり太ったヅラの男が、グル美の意中の人・ポーランド人の将校であります。

「あの、ボク何もしないので、ここにいてもいいすかね?」
と道夫。

おそらく室内の誰もが思ったことでしょう。
「何かをするだろうな」

「っていうか、最後の名残りにこの部屋にいたいんす。最後の時をこの部屋で過ごしたいんす。かつて、ボクの女王様を崇めたこの部屋で」


もしかして死のうとしてる?
それか、死ぬ死ぬアピールで気を引こうとしてる?
本当に死にたいなら「最後の日」とか「最後の時」とか人に言わなくない?
あと「女王様」とか「崇めた」とか受け取り方によっては性的な何かを連想させる言葉を初対面の人にいきなり言うのってよくなくない?
とにかく無駄に周囲をピリつかせるヤバい発言です。

いつもと違うテンションの道夫に安心したのか、
「何言ってっかわかんないけど脅さないなら、ここにいていいよ」
と、道夫を受け入れるグル美。

「脅す?俺が?そんなことするように見える?」
椅子の背を抱きかかえて突然泣き出す道夫。
情緒のふり幅がダイナミックで素敵です。

グル美が言うなら仕方ないと、二人のポーランド人も渋々道夫を認めます。

でも、全然場が盛り上がらなくてカードゲームを始める将校と道夫たち。
道夫が二百ルーブルを巻き上げられたところで、狩我野がストップをかけます。止めたカルガーノフに声を荒げて文句を言う将校と売部。
なんだか金に汚くて感じの悪い将校たち。グル美もこんな将校のどこに惚れたのでしょうか。

「怒鳴るのやめてもらえる?」
揉めている四人に割ってはいるグル美。
グル美は将校らの態度にイライラして入る様子です。

それを見て何かひらめいた道夫はポーランド人二人を別室に連れ出して交渉します。ここで「ボク何もしないので」という伏線が回収されるのです。

「あの、三千ルーブルやるからここから出て行ってくれない?永久に」
「マジでくれるの?」
突然の道夫の要求にまんざらでも無い様子の将校。

「それってすぐくれる?」
「あ、いや、まずは500、いや700でどうです?残りは明日の朝渡しますんで」

乗り気だった将校も「残りが明日」と聞いて我に返ります。
「ナメてるんか?」
怒り出す将校と売部。

「っていうか、そんなに怒るってことは、グル美からもっとたくさん金を巻き上げる気だからだよね?」
そう、道夫は将校らの企みを見抜いていたのです。

どうやら図星だったようでプリプリと起こりながらグル美のいる部屋に戻る将校たち。
「グル美さ、俺、お前を許すためにここに来たのに、お前の情夫は俺に金を渡して追い払おうとするんやけど」
「は?どういうこと?私、売り物じゃないんだけど」
「俺、この人の情夫じゃないです!」
「あたしの身持ちが綺麗だったんはね、将校さん、あんたの前で胸を張っていたかったからなんよ。あんたその金を受け取ってないよね?」
「もちろんやで」
「いや、受け取ろうとしたから!最初三千ルーブル一括で欲しがってたやん。でも前金で七百って言ったら渋ったんよ」
「将校さん、あんた、私の金目当てに近づいたんか?」

グル美にそう言われてカッとなる将校。
「お前を妻にするためにここに来たのに!昔のお前はそんなんや無かった。恥知らずなワガママ女になってからもう」
「だったら帰れや!バカだったわ、あたい。こんな男を五年も待ってたとか。アホくさ」

グル美が泣き崩れたタイミングで隣室に待機していた(道夫が頼んでいた)コーラス隊が部屋に入ってきて歌い始めます。ウキウキした踊りの歌を。
まさにカオス!

別のとこでは宿屋の主人と売部が揉めてます。
「なんだ?ケンカか?」
と宿屋の主人。
「なんだとはなんだ、この畜生」
「畜生ってなんだよ。俺、お前がイカサマでカードに勝ってたの見てたからな」
「え、マジで?最悪やん」
とグル美。
「うるせえ、淫売!」
そう叫んだ瞬間、飛び掛った道夫に持ち抱えられ別室の床にたたきつけられる売部。

「イカサマで巻き上げられた金はいらねえ。お前にあげるわ」
と道夫。
「カッコよか~」
とグル美。

居場所が無くなり部屋を出て行こうとして振り返る将校。
「グル美、最後に言うけど、もしついてくる気があるなら一緒に来てもいいんやで。じゃなかったら本当にサヨナラやから」

もったいぶって部屋から出て行く将校。
当然部屋に残ったグル美は、シャンパンをつかむと道夫らと酒盛りを始めるのでした。

今日はここまで(P380~421)

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