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第157回【禁煙外来のリアル:国が病気を作り、世界から酷評される日本のタバコ事情】


当院の禁煙外来で、直近で6人の患者さんが治療に臨まれました。 一般的な禁煙外来の長期成功率は30〜40%程度と言われる中、成功率50%という数字は「良い方」ではありますが、医療従事者としては手放しでは喜べません。

なぜなら、失敗してしまった3人は、全員が30歳代の若手だったからです。 彼らは高いBI(ブリンクマン指数)を持つ深いニコチン依存症で、1人(
女性)は過去にも2回失敗した経験がありました。
強いニコチン依存がある上に、禁煙補助薬の初期に出やすい「吐き気」という副反応の辛さに直面した時、我々医師に相談する前に自己判断で治療を止めてしまいました。皆さん禁煙するつもりで禁煙治療をはじめました。
先日の喘息患者さん同様、一番苦しい初期段階、つまり「初回だけで来なくなる」のです。

しかし、私は彼ら個人だけを責める気にはなれません。いまの日本は、禁煙を100%成功させることは制度として無理があるからです。

一番悪いのは、「国がタバコを販売して、国が国民の病気を作っている」という構造そのものです。

国(財務省)が筆頭株主としてタバコを認め、税収のために販売し続ける。年間2兆円の税収です。
この甘すぎる姿勢は当然、世界からも見透かされています。日本の受動喫煙対策やタバコ価格の安さは、WHO(世界保健機関)から「世界最低レベル」
と酷評され、先進国の中で「最も評価が低い国」の一つとなっています。

海外に目を向ければ、イギリスでは1箱約2,500円、オーストラリアでは3,500円を超え、若者が手を出せない価格に設定するのが世界の常識です。日本も今すぐ「1箱3,000円」程度まで引き上げるべきです。価格が上がれば、30代の若い世代が「副反応が辛いから」と初回でドロップアウトする甘えも消え、本気で治療に向き合うはずです。

では、もしこの国から「喫煙」が完全に無くなったら、私たちの健康はどう変わるのでしょうか。国内外のデータから、以下のような劇的な変化が予測されています。

  • がん(悪性腫瘍): 日本人の全がん死亡の約20%(男性では約30%)が喫煙原因です。タバコが無くなれば、年間約6万人以上のがん死亡を防ぐことができると推計されます。

  • 呼吸器疾患: 喘息の重症化や急性増悪が激減するのはもちろん、タバコが原因の9割を占めるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)にいたっては、将来的な発症者をほぼゼロに近づけることが可能です。さらに経済的損失を防ぐことにもなります。

国がこれほど有害なものを安価で売り、病人を製造しているからこそ、若い世代に「タバコは大したリスクではない」という誤ったメッセージを与え、医療現場でのドロップアウトを生んでいます。

国が病気を作り、システムとして守ってくれない以上、私たちは自分自身で、正しい知識を持ち、自らの命を守る選択をしていくしかありません。

これから禁煙を希望する方は、初回で逃げず、主治医と共にニコチン依存症を克服する努力をしていきましょう。私は全力で応援します。

ニコチン依存症以外のかたも、この現状を十分に把握して、一人一人でこの国の現状を本気で考えてゆかねばなりません。

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