【税理士試験】合否を分けるのは本番のちょっとした差 本試験は戦略的に
間もなく税理士試験ですね。
私の職場にも、今年は法人税法を受験する予定の方がいます。ぜひ、全力を出し切って頑張ってほしいです!
今日はそんなタイムリーな時期に合わせて、税理士試験に関するコラムを記載します。
本試験における合否を分ける要素は、実は「ちょっとしたミス」であり、それは「本番での意識次第」かもしれません。
税理士試験は相対試験であり、毎年各科目で必ず上位10〜15%が受かるように、傾斜配点が行われます。だからこそ、自分のポジションを冷静に把握し、年に1度の本試験は戦略的に受験すべきです。
といっても、「いつも前から解くけど本番は後ろから解く」といった解法テクニックの話ではなく、もっと根本的な、本質的な「意識」の話です。
1.合格者の3つの層
私の7年間の受験歴から振り返ると、各科目の合格者は大きく次の「3つの層」に分類できると感じます。
A層:上位5%の層(絶対合格圏)
この層は、どんな試験問題が出ても必ず合格できる層です。専門学校の模試でも常に上位10%付近に固定されています。
会計科目: 本支店会計、特殊商品売買、連結決算など、一般的に敬遠される論点のどれが出ても対応可能。本試験でもCランクを含め、圧倒的なスピードでほとんどの問題を時間内に解ききれる実力があります。完全無欠です。
税法科目: Cランク理論までおさえています(ある程度書けるレベル)。
メンタル: ケアレスミスもほぼなし。ミスが生じやすい項目を自分で把握できており、常に冷静です。
B層:上位5〜10%の層(実力十分・順当圏)
実力は十分、順当に行けば合格できる層です。専門学校でコンスタントに上位30%に入っています(会計科目では上位50%までが目安)。
会計科目: Cランクを除きおおよそ対応可能。量をこなしているので初見の問題も少なく、本試験で「解く・解かない」の判断が確実にできます。
税法科目: A・Bランクの理論はきっちり書け、今年出題が予想される重点理論は確実に暗記ができている準備万端の層です。
メンタル: 普段からケアレスミスを意識できており、最小限に抑制できる実力があります。
C層:上位10〜15%の層(当落線上・大混戦圏)
毎年大混戦となり、常に番狂わせのドラマがある層です。専門学校で上位50%くらいまでがスコープとなる、入れ替わりの激しい幅広い層がここにあります。
会計科目: 基本項目はすべて解けますが、時間内にすべてを精度高く解くことはできません。「解かない(手をつけない)」と判断する捨て問が、上記B層よりも多くなります。
税法科目: Aランクは暗記完了、Bランク理論もある程度書け、今年出題が予想されるヤマ理論は暗記ができています。
メンタル: 常にケアレスミスと隣り合わせですが、受験科目においてB層に比較して定着度、練習量が不足していることから、ケアレスミスを効率的に抑える方法が自分なりにまだ確立できていません。
2. C層の「1点差の団子状態」が試験を難しくしている
経験上、どの科目もだいたいこのようなイメージです。
会計科目や、法人税法・消費税法など受験者数が多い科目ほど上記の傾向が強く、逆に国税徴収法などミニ税法ほどB層のレベルに位置する受験者数が多くなり、本試験突破が難しくなる印象です。
A層は、確実に1年で突破します。B層も1〜2年で突破します。しかしC層は、本番での運の要素(その年の出題内容、自身・回りのメンタル)も入ってきます。
ちなみに「B層だった人が本試験で落ちて、翌年はA層にランクアップするか?」と問われると、私の印象ではランクアップせずその人は翌年もB層のままです。
A層の人は初学でも最初からA層です。9月に入れ替わりがあっても毎年新たな初学のA層が入ってきます。逆にいえばA層に入れる人は、どんな資格試験を受けてもA層にいきます。いわゆる世間一般でいう「お勉強ができる」という分類の人です(目標に向かって、淡々とやるべきことに集中して努力できる人です。落ちるということが、金銭的な側面以外に、時間・労力ともにどれだけコストかを才能で分かっています。。)。
例えるならA層は、みんなが車に乗って目的地に向かっているなか、一人だけ電車に乗っているような人たちです。競争試験において、そもそも世界やレベルが違う層と思ってもいいかもしれません。
さて、巷で言われる「税理士試験は難しい」という印象を形作っているのは、まさにこのC層付近に位置する受験者です。
C層付近で実際合格を勝ち取るのは上位10〜15%ですが、本試験におけるC層のライバルは、本試験の上位30%くらいまで裾野が広がるイメージです。それだけ実力差が拮抗しており、椅子取りゲームの様相。端的に言えば、ここの層がいつの時代も団子状態であり、結果的に1点の差が勝負の分かれ目と言われます。
自己採点の得点分布表を見ても、それは一目瞭然です。
下の図は私が過去に受験した消費税法の模試の分布ですが、まさに合格ラインにあたる中央付近で、綺麗な台形(ボリュームゾーン)を形成しています。

3.参考)私自身の体感
私自身の受験を振り返ると以下のような印象です(いずれも当時の感想)。
財務諸表論 ⇒ 【C】(ギリギリ滑り込み合格)
試験終了の合図とともに、自分の得点状況やポジションが不明。自己採点してみても記述の配点次第でギリギリなライン。完全に当落線上な印象でした。
簿記論
1年目:【不合格】
財務諸表論と同時受験でしたが、試験終了時に「あ、ちょっと足りないかも。」と感じました。
2年目:【A】(合格、ボーダーライン+15点)
試験終了の合図と同時に合格を確信。自己採点すら不要の域でした。
法人税法
1年目:【不合格、3点足らず】
試験終了時に「うーん、微妙…どうだろうか」という印象でした。
「あの1問が」「あの1点が取れていれば1年を無駄にせずに済んだのに」と反省しました。
2年目:【B】(合格)
試験後の帰り道、SNSでコメントや速報等を確認しながら帰宅し、「おおよそ大丈夫だろう」との所感でした。
消費税法 ⇒ 【C】(ギリギリ滑り込み合格)
手応えとしては微妙でしたが、戦略もうまくはまり、また受験者レベルが法人税法ほど高くないのを知っていたので、「なんとか滑り込めるかも?」と期待を抱きました。
国税徴収法
1年目・2年目:【不合格、明らかな勉強不足】
3年目:【B】(合格)
試験終了時に「やりきった、今年で(税理士試験が)終わった」と実感できた手ごたえ。
以上、思い起こせば、A層として圧倒的な突破ができたのは2年目の簿記論だけです。2年目の法人税法や3年目の国税徴収法は、一定の余裕があったものの、それ以外は基本的に「Cの当落選ライン」における苦しい闘いでした。
4.終わりに 本試験に臨む受験生への戦略的アドバイス
これから本試験を迎える受験生のみなさんへのアドバイスとしては、まずは「自分の位置がどこなのか?」を客観的に分析把握することです。これが、模試の分布や結果で分かってると思うのですが、実は意外に分析しきれておらず、分かっていなかったりします。
A層に位置している人は、体調管理を実施して、試験当日に無事自分の受験番号が記載された席に着席できれば合格です。
B層に位置している人は、本試験で実力を発揮できることに注力すれば合格です。本試験は受験者の8~9割を落としてくる試験です。受験生を混乱させるための奇をてらった問題などをあえて混ぜ込んできます。これら答練で遭遇しない状況になっても、焦らず・冷静に対応です。B層が解けない問題は、C層以下も解けません。
そして、もし自分がC層又はC層より少し下ら辺に位置していると感じる場合は、ワンチャンスをモノにするため、自分が思っている以上に本番は慎重に解くべきです。具体的には、以下のような意識を持ってみてもいいかもしれません。
・解答用紙はしっかりと、最初に全体をよく見る(書き損じをしない)
・理論問題はベタなのか、あてはめなのか、設問をよく読む(書き始めてから修正しなくて済むように)
・理論問題は各予備校のヤマなのか、基本項目なのか、Cランクなのか、解く前に把握する(優先順位)
・簡単な理論問題であっても、飛びつかず柱上げは必ず行う
・理論問題で、途中過程がイマイチ分からないけれど、なんとなく結論として書くべき理論が分かる場合は、プロセスは適当に作り、その結論のベタ書きを泥臭く答案用紙に残しておく(白紙を避け、部分点を積み上げる)
・計算問題は素読みの際に、見落としそうな項目は印を付けておく
・計算問題は、可能であれば1つ解答した際に、電卓を2度叩く(検算)
・最後の5~10分は、あえて問題を解かず、答案用紙の計算過程に計算ミスがないか、電卓を叩き検算する時間に充てる
・みんなが迷いそうな難問が来て自信がない場合は、あえて「みんなが行きそうな方向(無難な解答)」に自分の解答も合わせる(自分だけ点を落とすリスクを抑える)
・今回の試験が例年に比して簡単なのか、難しいのか、を考えたうえで解き始める(簡単なら量をなるべく解かないといけない、難しいなら1問あたりの重み(正答率)がポイントに)
以上、ひとことで言えば「全力で丁寧に解く」という話です。
相対試験だからこそ、基本問題を落とさないこと。ケアレスミスを抑え、団子状態から頭一つ抜け出すための1点を積み重ねることが大事になります。
1年に1度しかない試験です。1問・1点を大切にして、合格を勝ち取ってほしいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
