「墓石の納骨棺」
1000字の夢日記
悪友の男に誘われ、近所の墓場を探検した。
気まぐれな彼は、すぐに飽きてしまい、あろうことかオレの靴をどこかに隠し、帰ってしまった。まあ、軽い悪戯気分なのだろうから仕方ない。ここは自力で探すしかないか。
彼の行動パターンからして、目の前にある墓石が、どうにも怪しい。しかも一番下の納骨棺が、ことさら怪しい。いかにも秘密の隠し場所の雰囲気ではあるが、骨があるというだけで触るのも気が引ける。
その戸口には長方形の、石の扉があり勝手に開けられないようにと太い鍵が施してある。唐草模様に浮き彫りされた艶光りする南京錠で、見るからに頑丈そう。なのだが、どういうわけか鍵が外されている。オレは戸口の端を両手で持ち、ゆっくりと開いてみた。そのとき、石臼を引くゴロゴロッという重厚な音がした。
内部の空間を覗いてみると暗くて、ほとんど様子がわからない。やむをえず四つん這いになり覗き込んでみたものの、それでもよく見えない。オレは覚悟を決め、自分の頭を亀のようにグイッと突き出し、恐る恐る、中に入れてみた。
当然のことながら内部は静まりかえっていて漆黒の闇。キーンという耳鳴りだけが増幅する真空世界。
したたる汗を拭きながら、罪悪感と好奇心と暑さとで気持ちが高ぶり、息も荒くなってきた。滝のような汗が頬から首筋へと垂れ、べっとりしている。興奮する感情を落ち着かせようとしているうちに、いつのまにか暗さに慣れてきた。すると僅かに内部の様子が見えはじめてきた。いわゆる暗順応だ。
奥の方に黄色く、ぼんやりした物があったけれど形からして骨壷だろう。周囲を探してみようと手を伸ばし、あちこち、まさぐっていると指先に、じめっとしたものが触れた。
全身にサーッと鳥肌が立った。それは腐った魚が糸を引いているような、なんとも嫌な感触で、もちろんすぐに手を引っ込めた。そのうちに頭が朦朧としてきた。まさか毒に触れたわけでもないだろうに、徐々に意識が遠のいていった…
「オレは熱帯のジャングルにいる。一面、南国の植物で覆われ、葉は幾重にも重なり、甘い匂いを放つ極彩色の花は競うように咲き乱れている。茂みに目をやれば、黄色と黒の何者かが、ちらちら動いていて、よく見ると、それは虎だった。向こうの池には、あたり前のように象やフラミンゴ、そして、なんと恐竜までいる。オレの体は、ふわふわ漂っていて、遠い昔、母の子宮に浮かんでいた感覚をたっぷり楽しんでいる・・」

