「連結部の木の箱」
1000字の夢日記
路面電車の連結部には妙に木目の、はっきりした木箱が置かれていた。
中には古着や骨の折れた傘などが所狭しと並んでいて、その中にオレの足にピッタリ合いそうなブーツ風の靴がある。それを引っ張り出し、自分の足に合わせてみた。
するとブーツ風靴は時計回りに、バナナの皮を剥くように順序よく剥けてきて、さらに腐りかけたバナナ特有の芳醇な香りを放ちながらサンダルになってしまった。
おやっと思いながらも、そのサンダルに履き替え、他の品々をまさぐっていると、まだ使えそうなデジタルカメラの脇に正方形の白黒ポラロイド写真が添えられていた。女学生が使う髪止めのような、赤い輪ゴムで留められており、全部で十数枚くらいはあるだろうか。
束の一番上の写真には若くて色白の、ふくよかな女がワンピースを着てソファーに座っていた。白黒だが、付けまつ毛の太さや背景の艶かしい薔薇のカーテンがオレの潜在的イメージをかきたて、この中に、エロい写真があると直感した。
期待に胸膨らませ、ワクワクドキドキしながら輪ゴムを外し、汗ばむ手の平に写真の束を乗せてみる。荒い鼻息を抑え、順番に一枚一枚めくっていき、食い入るように、あるいは舐めるようにして凝視した。
けれど、めくれど、めくれど、お目当てのものはない。そんなはずはないと、もう一度、今度は給料前の、なけなしの金(かね)で買った宝くじの当選番号を再確認するときの集中力で、めくってみた。
でも、それでもなかった。やはり、ないものはないのか。残念だけれど、こんなことは世間では、よくある話。すぐに気を取り直し、この木箱の正体について考えてみた。
多種多様な品々から推測するに、どうやら乗客の忘れ物を集めている箱のようだ。というか、それ以外に考えられない。ということは他にも面白い物や高価な物、意外な物、さらには掘り出し物までもがあるに違いない。
オレは自分のものではないという事実を無視して、気合を入れて物色しはじめた。が、そのうちに前後の車両の乗客たちが集まりはじめた。
「見世物じゃないんだよ、あっち行け!」
とは、もちろん言えないので、せめてもの手段として両手を広げ、威圧的に自分のスペースをアピールすることくらいしかできない。
しかし予想通り、主婦を中心とした、おばさんパワーは、もの凄く、バーゲンセール売り場での修羅場をくぐりぬけてきた、その手腕には太刀打ちできず、次第に隅のほうに追いやられてしまった…

