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「ガード下の世界」

1000字の夢日記


 さっきからトイレに行きたくて、ずっと我慢をしている。

今いる商店街中を探し回ったがどこにもなく、さらに範囲を広げ、街の周辺にまで足を延ばしてみた。

そうこうしているうちに灰色のペンキが、べっとり塗られ、垂れ跡がそのまま固まっている鉄道ガードに出た。

ふと、脇にあるコンクリートの階段を見てオレはハッとした。幾筋もの夕陽が、まるで仏様の後光のように射し込んでいるではないか。こんな、どこにでもある階段でも、もの凄い神々しさを感じる。

しかし、そのうちに光も薄くなり、ただの殺風景な風景に変わってしまった。なんだか寂しくなってきたけれど、考えてみると、こういう場所に、よく公衆トイレがあるのを思い出した。取りあえずガード下に降りてみよう。

オレは期待を胸に階段を下った。だが、そこにはトイレらしきものはなく、しょんぼりしながら周囲を見渡しているとガードを潜った向こうに小さな繁華街があった。

店が密集していてイメージ的には地方都市にある盛り場みたいな雰囲気。バーや赤ちょうちんの飲み屋、豚を吊るしている中華料理屋、さらには擦りガラスに紅白球の絵柄が描かれている玉突き場なんかもある。時代をタイムスリップした気分になり懐メロや軍歌が聴こえてきそうだ。

とはいえ、酒を飲むには、まだ早い時間なのか人影はない。それにしてもトイレはどこにあるのだろう。あちこち探しているうちに、どの街にも必ず一軒はありそうな〈忍〉という名のスナックの先に【女子トイレ】と書かれた木の扉を見つけた.。やったぞ。オレは、足早に駆け寄った。

普通なら隣にあるはずの男子トイレがない。これは、おかしいなと思っていると少し先に猫の通り道のような狭い通路、というより隙間があったので、もしやと思い、入ってみた。

あまりに狭く、自分の腹が引っかかって邪魔なのでクッと凹ませながら、蟹の横歩き体勢のまま、ゆっくり進んだ。湿った壁の上部からは茶色い残り汁のようなものが絶えず滴(したた)り落ちていて、むっとするアンモニア臭が漂う。足元も、ぬるぬるしていて気持ち悪い。

突き当りは、ほとんど明かりも入らずに背の高い雑草が生い茂り、地面には捨てられた弁当が散乱していて腐敗臭を放っている。吐き気がしてきた。でも、ここで吐くと、お気に入りの服が汚れてしまうので、それすらできない。

結局、こんなに大変な思いをしたにもかかわらず男子トイレは、なく、泣きたい気持ちで引き返した…

Photo by SeñorA

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