「大変な夜になるわよ」
1000字の夢日記
今日は出張で東京の下町にいる。
ここで生まれたわけではないのに、ひどく懐かしい気がする。角を曲がったところの居酒屋で、ちょっと一杯ひっかけてから帰ろうか。
店に入って注文をすると程なくして湯気の立ち上る、牛すじ煮込みが出てきた。これを冷えたビールで喉に流し込む。ああ幸せ、生きていて良かったと、つくづく思う。
満足したあとは、ほろ酔い気分で今宵のホテルへの帰路につく。暗い通りを歩いていくうちに蜃気楼のように、ぼんやりとホテルが見えてきた。オレの部屋は五階だ。
近づくにつれ、なぜか部屋に灯りがついていてテラスに人がいるのが見えた。遠目とはいえ、洗濯物を干している姿がわかる。あれは、もしかしてケイ子?
急ぎ足でホテルに帰り、フロントで聞いてみた。すると「普段から身の回りの世話をしていて今日も頼まれたので来た」と言うので鍵を渡したとのこと。
えっ、頼んだ覚えもないし、そもそも身の回りの世話などしてもらった記憶もない。まあ、とにかく部屋に戻ろう。
エレベーターホールに行って【⬆️】ボタンを押したものの、こういう時に限って、なかなか来ない。待てど暮らせど来ない。オレはエレベーターの前で、トイレに行きたくて我慢している小学生のように、もじもじしていた。
すると、どこからともなく女性がやって来た。顔を見ると、なんとケイ子ではないか。彼女は、
「あらあら、慌てなくていいのよ。あなたの、お部屋でゆっくりしましょ」と笑う。
不思議にも、このタイミングでエレベーターのドアが開いた。わけもわからず二人で乗りこむ。
オレは、あまりの急な展開に何をどうすればよいのかわからず、黙ったりニヤけたりを繰りかえした。五階で降りて、客室の並ぶ廊下でも、早く事情を聞かなければ、いや、ここは黙って歩くべきか、などなどを考えているうちに自分の部屋に着いた。
さて、このあと、どうなるのか。
頭が混乱して、よくは覚えてないけれど気がつくとケイ子は、透け透けの白っぽい服を着ていた。その背中には折りたたんだ羽根のようなものが薄っすらと見えるが、おそらく幻影だろう。
まあ、いい。そんな中でも純情なオレは目のやり場に困り、あたふたしていた。とはいえ多少は欲情し、彼女の体をちらっと覗くと、やけに細い。さらに肝心の胸のふくらみが、ほとんどない。
困惑しているオレの様子を上目遣いで伺うケイ子は悪戯っぽく微笑みながら、こう言った。
「今夜は大変な夜になるわよ…」

