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駐在生活を乗り切るための中国ビジネス完全ガイド

中国駐在のリアルな一年:経営者としての現地体験と実務ノウハウ



中国での駐在生活と聞いて、どんなイメージが浮かぶだろう?
工場の現場? 厳しい労務管理? それとも白酒片手の宴会文化?

私の駐在生活は、それらの典型とは少し違っていた。舞台はソフトウェア開発会社、立場は経営。異文化の荒波に揉まれながら、現場と本社、制度と実務の狭間を行き来する日々が始まった。

本記事は二部構成になっている。前半では、私が中国駐在中に過ごした「一年の業務スケジュール」を通じて、リアルな現場と日常を描く。後半では、有料パートとして「労働法」「会計準則」「董事会運営」「原価計算」「移転価格税制」など、現場でぶつかったリアルなテーマを、実体験ベースで詳しく解説していく。

中国でビジネスを始める方、すでに駐在中の方、そして制度の“実際の運用”を理解したい方にとって、きっと役立つ「現場の視点」を届けたいと思っている。

中国ビジネスで、なかなか纏まった資料がなく苦労した経験もあり、より専門的な知識を必要としている方々の参考として読んでいたけると幸いだ。

中国駐在・年間スケジュール(概要)

・1月|帰国と予算づくり/忘年会ラッシュ
・2月|春節の嵐と一時帰国
・3月|監査対応と決算業務
・4月|新年度キックオフ/清明節
・5月|労働節と法人税申告
・6月|人事評価と董事会
・7月|新卒研修と昇給発表
・8月|中期計画と夏季休暇
・9月|採用準備と中秋節
・10月|国慶節/社員旅行と出張者対応
・11月|予算交渉とダブルイレブン
・12月|賞与と春節準備/年末帰国

1月|帰国と予算づくり/忘年会ラッシュ

年始。日本では正月三が日が静かに流れるが、中国は1月1日しか休みがない。2日から通常運転なので、日本に帰る駐在員は3日か4日には中国へとんぼ返り。私もそんな一人だった。

この時期、会社では次年度(4月〜翌3月)の予算作成が始まる。売上計画から始まり、人員計画、設備投資計画、費用計画へと進めて行く。開発、営業、技術、人事、すべての部門の数字を詰めに詰めて、2月初旬には本社報告用のプレゼン資料を完成させる。

さらに、中国会計年度(1月〜12月)の年度決算処理の確認監査法人の監査対応にも追われる。

駐在員対応では、中国に居住している駐在員たちの給与総額(中国支給+日本支給)と内訳情報をもとに、個人所得税を計算、中国政府に納付する。1月から12月までがワンサイクルで、毎月決まった時期に累積ベースで計算し差額を納付する必要がある。

年末が近づくと、春節に合わせた忘年会ラッシュが始まる。自社主催のものだけでなく、取引先のパーティーにも呼ばれることが多くて、ステージに引っ張り出されることもあった。その度に白酒(強い酒)をしこたま飲まされ、酔いながら帰宅する日々だった。

春節前の忘年会

2月|春節前の嵐と一時帰国ミッション

春節(旧正月)は年によって時期が若干ずれるが、この時期、多くの店が閉まり、街がゴーストタウンのようになるので、駐在員は冷凍餃子やレトルト食品の「買いだめモード」に突入。自分で食事を作るためだ。

春節の状況については別途作成して投稿予定

中国の春節飾り

会社もこの期間は完全休業。だが、やむを得ず休日出勤が必要な場合、中国の労働法では「三倍賃金」を支払うルールがある。実際、日本本社からの要請で出勤してもらったことがあったが、「三倍ならやる!」と笑顔で出てくれた社員の多かったこと。

私はこの頃、次年度の事業計画をまとめ上げ、日本に一時帰国して本社役員に直接説明を行う。コロナ禍以降はリモート会議に移行しているが、やはり対面には特有の緊張感がある。 

3月|決算の山場と年度末報告

監査法人から最終の監査報告書が届き、中国会計年度の決算がようやく確定。ここからは日本会計年度(3月末締)の総まとめだ。ほぼ数字は確定しているものの、資料提出が煩雑だ。

各部門のKPI、達成度、次年度への改善点を資料にまとめ、4Q董事会(取締役会)でプレゼンへ。中国語と日本語を行き来しながらのこの作業、慣れるまでは地味に大変だった。

4月|年度始まりのキックオフと清明節

新年度初日には全社員を一堂に集め、前年度の総括と今年度の目標を説明会が行われる。いわば“会社の始業式”。年初の引き締まるイベントだった。

その直後には清明節。お彼岸に似た墓参りの休暇で、中国全土が数日間やや静かになる。

この隙を狙って私は中国国内旅行へ。敦煌、桂林、西安……この辺の話はまた別の投稿を参照方。

5月|労働節と渋滞と中国版GW

5月初旬は「五一労働節」。たいてい5日間ほどの連休になり、中国国内の観光地は大混雑。高速道路は一部無料になるので、どこもかしこも渋滞だらけ。日本のゴールデンウィークにそっくりだが、ちょっと短い。私は、その日にふと思いたって上海などに日帰り旅行に出かけることが多かった。

労働節の駅風景

中国企業所得税(日本の法人税に相当)の確定申告期限は毎年5月末。基本的には経理部門で対応してくれる。

6月|評価と予算と端午節の粽(ちまき)

この時期は中国での人事評価の季節。昇給、昇格、全部ここで決まる。予算内に収めながら、人材のモチベーションをどう上げるか、毎年悩ましかった。内容についてはと6月末の1Q董事会で報告を行う。

6月には「端午節」という祝日がある。屈原という政治家かつ詩人の故事にちなんだ行事で、三日間の休み。中国版ちまきを食べる習慣があり、日本とは違って三角形で、具材も甘くないものが主流。塩漬けのアヒルの卵黄とか入っていて、初めて食べた時はちょっと驚いた。

中国の端午節の粽

7月|新人研修と昇給発表

中国では大学卒業が6月で、7月から新社会人になる。うちの会社では7月1日に入社式を行い、会社の方針や成立ち、コンプライアンスの指針などを説明。その後は総務部主導で数日かけた研修が続く。

この後に新人の日本語教育が徹底して行われるのだが、常に気になるのが社員の日本語スキルアップの状況。日本との仕事では必須であるからだ。

この時期に、6月までに決まった昇給・昇格内容を社員に通知。従業員と上司とのフィードバック面談も実施させる。またそのフィードバックの結果を纏めた報告を受けて必要なら対策を検討することも…

この月は、ある種の「節目の月」だった。

8月|日本風の夏休みを導入


8月は3年に一度であるが中期計画の作成を開始する時期でもあった。この作成プロセスでは、売上目標や成長戦略をどう実現するかを全社で確認し、特に重点を置くべき施策を明確にしていく。

中国では夏休みを制度として設けていない企業も多いが、我が社はあえてこの時期に1週間の夏季休暇を設けていた。真夏は江蘇省でもエアコンが効いていても、キツいし、心も身体も一度リセットが必要だ。休みの時期は日本本社とも合わせていた。

この頃、年間の業績見込みが思わしくない場合は、対策の検討を始める。メインは受注確保に向けての顧客アクセスだが、最悪のケースを想定して、コストカットの計画も用意しておく。中国では人員整理が難しいため、他の方法を検討する必要がある。

中国にある外資系企業では赤字が続くと、移転価格税制に抵触する可能性も否定できないため、可能な限り利益を確保することが重要。

9月|採用の仕込みと中秋節の月餅文化

10月から始まる新卒採用に備えて、9月は採用人数のシミュレーションとコスト影響の試算を行う。併せて、4月から半年間の実績報告と今後の計画を整理し、2Q董事会(9月末)にかける資料作成の準備も始まる。下半期から組織変更を行う場合もこの董事会にかける。

そして、中秋節。月餅を取引先に贈るのが定番だが、日本人が想像するような甘い餡子入りばかりじゃない。塩辛い肉入りのものや、ナッツだらけのタイプもあって、私は実はちょっと苦手だった(笑)。

中国の中秋節の月餅

10月|国慶節と社員旅行、採用本番

10月初旬は国慶節。中国建国記念日の大型連休で、街中が華やかになる。

国慶節の国旗掲揚を待つ人だかり(出典:人民中国)

うちの会社では、この10月に社員旅行を実施するケースが多かった。日頃の頑張りに報いる大切なイベントだ。

同時に、新卒採用も本格化。総務担当は大学を回って説明会を開き、学生との面談を繰り返す。採用状況の成否が気になる日々が続く。

私のいたころは、中国での採用がなかなか捗らず、どうすれば来てもらえるかで、頭を悩ませていた。

この時期(10月〜12月頃)は日本からの出張者が増え始める頃。毎日のように入れ替わり立ち替わり出張者が来るので、朝の車の手配、昼食、夕食などのアテンドで、ほぼ毎日酔っ払って家に帰っていたのが、今思えば懐かしい。

出張者対応としては、基本、通常の夕飯は近くの日本料理店街で、最後の日は中国料理店で中華料理(この頃は上海蟹の旬な時期)と白酒を飲む宴会としていた。

11月|そろそろ予算づくりと「ダブルイレブン」

11月は、日本と同様に“年末感”がじわじわ迫る月。翌年度の本社との単価交渉が本格化し、議論が毎日のように続く。

中国では11月11日は「独身の日」、別名“ダブルイレブン”という巨大なネット通販のセール日。この日、物流会社の社員はほぼ泊まり込みになる。一般社員もアプリにかじりつき、昼休みに「何買った?」の会話が盛り上がる。

12月|評価と賞与と、年末へ向けた助走


日本では12月といえば「師走」だが、中国では年末ムードは控えめ。

年の瀬が近づくと、社員の業績評価が本格化賞与の評価と支給金額もこの頃に確定する。決算関連では中国会計年度のプレ監査も入り、慌ただしくなる。いつも節税にも気を使い、利益が目標を超える場合は、どうすれば従業員に還元するかを気にしていた。

12月中旬には春節の忘年会の準備。総務が中心となって内容や予算を詰めて、社員みんなで盛り上がる一夜に仕上げる。

クリスマスの頃には、中国政府主催の外国企業関係者向けのクリスマスパーティーがホテルの会場で催されるので、毎年参加していた。料理、酒、出し物が準備されているが、私的には一回出れば十分であった。要はつまらない。まぁ、政府の知り合いの顔を立てる必要もあるので仕方なく、参加していた。

クリスマスパーティー

私はこの頃は(コロナ禍以前)年末の一時帰国をしていたが、「今年も駆け抜けたなあ」と羽田空港に降り立つたびに思ったものだ。(実はコロナ禍では3年間帰れなった。

以上が、私の駐在時代に経験した「一年の流れ」。
この他にも、ここに書ききれない、いくつかの事業もあったが、どの月にもイベントが詰まり、あっという間に時間が過ぎていく。

それでも一つひとつの出来事が、いま振り返ると確かな記憶として残っている。中国で働くということは、単なる異国生活ではなく、常に文化と制度の違いを乗りこなす旅なのだと言える。

   ここから先は、有料記事になります

後半は「現場対応」に役立つ法律・制度の運用ノウハウを5テーマに分けて解説する。

・中国労働法
・中国会計準則(CAS)
・董事会運営とその落とし穴
・原価計算の基礎と構築方法
・移転価格税制の実務対応

以上を自分の経験も交えながら整理しておきたい。どれも、中国でビジネスを続けるうえで避けては通れない基本テーマだ。

今回取り上げたテーマは、法律の条文や制度の構造だけでなく、実際に自分がどう理解し、どう対応してきたか――という視点でまとめてある。たとえば、労働契約の進め方や、社会保険の実務運用、財務諸表を読み解くうえでの中国独特の論理、董事会での立ち回り、原価の見える化に取り組んだときの基本設計、利益率と税率をめぐる当局との向き合い方など。

本記事を読んでくれるのはきっと、

・中国進出を検討している企業の経営者や担当者
・現地で法務や経理、企画部門に携わっている
 駐在員
・中国ビジネスの制度的背景を、机上の理屈
 じゃなく実務目線で捉えたい人たち

そんな人たちだと思って書いている。

制度やルールの全体像をつかむことは、現地で足を取られずに前に進むための基本装備。読み進める中で、必要な知識とヒントを拾ってもらえたら嬉しい。

私が現地で使っていたものの最新版。使い易い

原価計算に自信がない方は下記など導入本としては如何でしょう。

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