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中国の会社で出会った“困った人”たち――労働契約のカラクリとトラブル体験記

私が中国で働いていた会社の従業員は、概ね真面目でおとなしい人が多かった。しかし、問題を起こすのは決まってごく一部の人間。

しかも、中国では労働者が手厚く保護されているため、一度雇うと簡単には辞めさせられない。

例えば、会社が合理的な理由で従業員との契約を解除する場合、基本は勤続年数 × 月給与(終了前12か月間の平均給与、上限12カ月分)の経済補償金を支払う必要がある。

但し違法解雇(本人不同意)となると、その2倍の賠償金を支払わなければならない。

一方で、従業員が自ら辞める場合、会社は補償金を支払う義務はない。しかし、従業員たちはこの仕組みをよく理解しており、簡単には自ら「辞める」と言わない。むしろ、どうにかして会社に辞めさせてもらい、補償金を手に入れようとする者もいるのだ。

中国では、特に若手の転職は活発だが、中高年になると転職先を見つけるのが難しくなるため、会社にしがみつくケースもある。

「辞めない男」

そんな中、今回の“困った人”の代表格が「Z」。彼は長年営業職を務めていたが、会社がその事業から撤退したため、関連業務はほぼ消滅。

会社としてはZに別の部署への異動を提案したが、これを完全拒否。中国では職場変更には本人の同意が必要であり、会社が強制的に異動させると、労働仲裁に持ち込まれる可能性が高い。

下手をすると、Zのように勤続年数が長い社員の場合、高額な補償金を払って退職してもらうしかなくなる。

そこで会社としては仕方なく、定年まで数年間、Zを職場に「放置」するという選択をした。

しかし、当然ながら彼は何もしない。朝会社に来て、ただ座って時間をつぶす。簡単な仕事を振っても、スルーし、一向に手をつける気配がない。

突然の直訴事件

そんなZがある日、日本の本社役員が訪問した際に暴走した。

役員が社員向けに挨拶を終えた瞬間、Zが突如立ち上がり、紙を握りしめて大声で叫びながら役員に詰め寄ったのだ!

慌てて、みんなで止めて、総務部長がZを引き離し、別室へ連れて行った。後で聞くと、「長年会社に貢献してきたのに、評価が低すぎる!何とかしてくれ!」と訴えていたらしい。

いやいや、そもそも何も仕事してないじゃん!!

私は役員に事情を説明し、平謝りするしかなかった。

評価をめぐる攻防


実は私が来るまで、前任者はZの直属の上司に対し、彼に「問題を起こさせないため」、そこそこの評価をつけさせていたらしい。

しかし、私は「彼は何もしていないのだから、適正な評価をすべき」と指示。結果、Zの成績は大幅に下がった。

すると案の定、「なんでこんな低評価なんだ!」と私の方へ文句を言いに来るZ。

「仕事しないんだから当然だろ」と突っぱねると、「俺に適した仕事を与えない会社の責任だ!」と、わけの分からない理屈で反論してくる。

さらに、仕事をさせようとした直属の上司を軽く突き飛ばすという行動まで見せたこともある。

しかし、不思議なことに、他の中国人従業員たちからZの悪口を聞くことはなかった。年長者への敬意なのか、仲間意識なのか、皆どこか庇うような雰囲気すらあった。

普段の彼は昼休みに外で会うと「吃饭了吗?」(ご飯食べた?)と気さくに話しかけてくるような人物だったため、余計に厄介だったのかもしれない。

結局、Zは定年まで、このような状態のままであった。査定時期になると騒ぎ出す…を繰り返していた。

労働仲裁で痛い目を見る


Zのケースは極端な例だが、中国で働いていると、
労働契約解除を実施するケースが割りと多く発生する。

裁判所イメージ

さらに、労働仲裁裁判にも巻き込まれることは珍しくない。私自身、何度か経験したが、中でも忘れられないのが次の2件だ。

ケース①:証拠不足で裁判敗訴


ある社員に人事措置を行った際、口頭では本人が了承していた。しかし、その際に通知書に署名を取らなかった。すると後になって、彼女は「この処遇のせいで不眠症になり、メンタルを病んだ」と主張し、医者の診断書を携えて、労働仲裁に駆け込んだ(もちろん嘘)。

さらに、その先の裁判では、彼女が過去に不正を働いていた証拠を提出したが、中国の労働法では「会社側に立証責任がある」というルールもあり、証拠不十分として敗訴。最初にしっかり書面を残していれば……と、痛感した出来事だった。

ケース②:会社側が勝訴した事例


ある事業を撤退する際、その部門の社員に異動を提案したが、1人だけ納得せず拒否。仕方なく契約解除を進めた。この時は、弁護士と綿密に相談し、労働仲裁所長には、事前に説明に行き、話をつけていたため、「事業撤退に伴う異動は合理的」と判断され、仲裁・裁判ともに勝訴できた。

この経験から学んだのは、中国では「証拠の確保」と「事前の根回し」が何よりも重要ということ。

まとめ:中国での労務管理は、想像以上に手強い!


中国の労働法は、日本と比べて圧倒的に「労働者寄り」だ。そのため、日本の感覚で人事を動かすと、トラブルに巻き込まれやすい。

今回紹介したZのようなケースは極端だが、「辞めさせるのに補償金がかかる」ことを逆手に取る人間もいるのは確かだ。

皆さんも、中国で仕事をする機会があれば、「証拠の確保」と「労働法の理解」を忘れずに!


中国で仕事をしていた時には、日本で、ほとんど経験出来ないようなことを経験することが多々あった。今から思うと、感慨深い思い出である。

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