ひきこもりは「若者の問題」ではない時代へ―40代・50代が今考えておきたい、家族と暮らしの備え
「ひきこもり」と聞くと、若い世代の問題という印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし、いま公的機関や支援団体の調査から見えてきているのは、ひきこもりの長期化と高齢化です。
NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の調査では、ひきこもり当事者の平均年齢は上昇傾向にあり、家族調査では40歳以上が4割を超えたとされています。
また、内閣府の調査をもとにした推計では、15歳から64歳までのひきこもり状態にある人は全国で約146万人、約50人に1人とされています。
これは、決して一部の家庭だけの問題ではありません。
「8050問題」から、さらに先の課題へ
これまで、80代の親が50代の子を支える「8050問題」という言葉が使われてきました。
けれども、現実にはさらに年齢が上がり、90代の親が60代の子を支えるようなケースも見られるようになっています。
親が元気なうちは、何とか生活が成り立つこともあります。
しかし、親の介護、入院、認知症、相続、死亡といった出来事をきっかけに、家族全体の生活が一気に不安定になることがあります。
ここに、40代・50代の私たちが目を向ける必要があります。
40代・50代にとって他人事ではない理由
40代・50代は、親の老後や介護を考え始める世代です。
同時に、子どもの将来、きょうだいとの関係、自分自身の老後についても、少しずつ現実味を帯びてくる時期です。
たとえば、
親が亡くなったあと、ひきこもり状態のきょうだいの生活を誰が支えるのか。
自分に万が一のことがあったとき、家族の生活費や住まいはどうなるのか。
子どもが社会との接点を失ったとき、家族だけで抱え込まずに相談できる先はあるのか。
こうした問いは、決して不安をあおるためのものではありません。
むしろ、早めに考えておくことで、将来の選択肢を増やすためのものです。
大切なのは「無理に動かすこと」ではなく「孤立させないこと」
ひきこもりの問題は、単純に「働けばいい」「外に出ればいい」と言えるものではありません。
背景には、心身の不調、人間関係のつまずき、仕事での挫折、家族関係、社会との距離感など、さまざまな事情があります。
厚生労働省の関連サイトでも、ひきこもりは特定の人だけに起きるものではなく、誰にでも起こり得る状態として紹介されています。
大切なのは、本人や家族を責めることではありません。
そして、急いで結論を出すことでもありません。
まずは、孤立させないこと。
家族だけで抱え込まないこと。
本人と家族の思いを尊重しながら、少しずつ外部との接点をつくっていくことが大切です。
法務の視点からできる備え
私が司法書士・行政書士として特にお伝えしたいのは、「生活を支える仕組み」を早めに整えておくことです。
たとえば、
親が認知症になったときの財産管理
親亡き後の住まいや生活費
相続発生後の財産分け
きょうだい間での負担の偏り
本人が支援につながるための環境づくり
こうした問題は、感情面だけでなく、法律面・お金の面・手続きの面が複雑に絡みます。
任意後見契約、遺言書、家族信託、財産管理契約などは、万能な解決策ではありません。
けれども、家族の支えが途切れないようにするための、大切な選択肢になります。
「まだ大丈夫」と思える今こそ
こうした備えは、問題が深刻になってから始めると、選べる手段が限られてしまうことがあります。
親が元気なうちに。
家族で話し合えるうちに。
本人の思いを確認できるうちに。
少しずつ準備しておくことが、将来の安心につながります。
「ひきこもり」は、誰かを責めるための言葉ではありません。
家族が共倒れにならないために、社会とのつながりをどう残していくか。
本人の尊厳を守りながら、暮らしをどう支えていくか。
その視点が、これからますます大切になると感じています。
まとめ
ひきこもりは、もはや若者だけの問題ではありません。
40代・50代の私たちにとっては、親の老後、きょうだい、子ども、自分自身の将来にも関わる身近なテーマです。
不安を一人で抱える必要はありません。
福祉、医療、地域の相談窓口、家族会、そして法務の専門家。
さまざまな支えを組み合わせながら、家族だけで背負わない仕組みをつくること。
それが、これからの時代の「備え」なのだと思います。
共感し、共有し、共に歩む。
その姿勢を大切にしながら、私自身も、暮らしと法務の面からお手伝いしていきたいと思います。
