🎹 【小5予選編第4話】楽譜はキャンバス? モネとピエロと娘の迷走
「音に色彩をつけてください。」
先生から投げられたこの一言に、
娘の頭の中は完全に真っ白になっていました。
そんな私たちを見かねて、
先生はレッスンの最後に一冊の本を差し出しました。
「これ、ヒントになるかもしれません。」
それは、ドビュッシーと同じフランスの印象派、
クロード・モネの画集でした。
「ドビュッシーの音楽は、
輪郭をはっきり描かない “光と影” の芸術なのよ。」
その言葉を頼りに、
娘の 「脳内カラーパレット作戦」 が始動しました。

まずは曲の出だしと、
最後に戻ってくる再現部。
「ここは、可愛い子どもたちが広場でダンスしてるところ!」
そう決めた娘は、
楽譜の余白にオレンジや黄色のペンで
サンサンと降り注ぐ太陽の絵を書き込みました。
「明るい色!
ここはひたすらハッピーなパステルカラー!」
そう言いながら弾く指は、
確かにどこかスキップするような軽やかさです。
(……音楽って、絵から作っていいんだっけ?)
母の常識は静かに崩壊していきました。
ところが、問題は中間の 展開部。
曲調がガラリと変わり、
少し怪しげで不思議な響きが続くこのパート。
娘はモネの画集をじっと見つめ、
突然ひらめいたように言いました。
「ここは……ピエロの手品だわ!」
イマジネーションが爆発します。
「怪しい手品だから、色はモワモワっとした紫色。
煙の中からハトが出てくる感じ!」
楽譜には、
いつの間にか不気味な笑みを浮かべるピエロと、
紫色の謎の煙が描き足されていきました。
「お母さん、見て!
今、モワモワした音が出た気がする!」
「……え、それ、単に打鍵が弱くて
音がかすれただけじゃない?」
「違うの!
これがドビュッシーの “色彩” なの!」
部屋では、
音楽レッスンなのか魔法の修行なのか
もはや判別不能な会話が繰り広げられます。
一小節ごとに
「ここは水色」
「ここは深い緑」
「ここは金色の光」
楽譜はどんどん
カラフルというより、カオス に。
客観的に見れば、
鍵盤の前で「モワモワ〜」と呟きながら
ピエロの動きを指で再現しようとする小5女子。
なかなかにシュールで、
でもどこか微笑ましい光景でした。
しかし、不思議なものです。
ただの記号だった音符に
「物語」 を乗せた瞬間、
あんなに無機質だったピアノの音が、
まるで生き物のように表情を変え始めました。
「自由なテンポ」に振り回されるのではなく、
娘が自分の作った世界の中で
自由に遊び始めた のです。
こうして、
バッハの「規律」
ドビュッシーの「色彩」
この二つをなんとかカバンに詰め込んだ私たちの前に、
刻一刻と本番の日は近づいていました。
ピアノ歴2年。
「無謀」と思われるC級の舞台で、
娘は一体、
どんな色を奏でるのでしょうか?

★親子で迷いながら進む
ピティナC級への道。
次回も、どうぞ見守ってください🎹
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