サッセールワ大仏~スリランカの山中にひっそりと佇む傑作仏像を訪ねて
【スリランカ旅行記】(3)サッセールワ大仏~スリランカの山中にひっそりと佇む傑作仏像を訪ねて

高速道路をひた走った私はある地点からこの便利な道路を降りて一般道へと進路を変更した。
これから私が向かうのはサッセールワ大仏とアウカナ大仏という、知る人ぞ知るスリランカの傑作仏像である。
ただ、これらの大仏はミヒンタレーやアヌラーダプラなどの主要聖地から離れたジャングルの中にある。言うまでもなく、普通の観光客はそんな辺鄙な場所にはまず立ち寄らない。
だが、私はスリランカの仏教芸術をぜひ自分の目で見てみたかったのである。楠本香代子著『スリランカ巨大仏の不思議』でも絶賛されていたこれらの大仏を見ずして帰るわけにはいかない。こういうわけでかなりの強行スケジュールになってしまったが、ミヒンタレーに行く前に両大仏を見に行くことになったのである。

高速道路を降りた後は現地民しか使わないであろう辺鄙な道を走る。あまりに僻地だからかカーナビも困惑し始め、車を降りて現地民に道を聞きながらの道中となった。
いきなり想像以上にマニアックな場所に来てしまったなと一同苦笑いである。

そして忘れもしない。
この看板である。
なんと、「象に注意」の看板である。初めて見た時はそれこそ驚いた。スリランカではこうしたジャングルの至る所で野生の象が出没するのである。
「おぉ、象に会えるなんていいじゃないか。かわいいじゃないか」なんて悠長なことを言ってはいけない。野生の象は危険だ。スリランカでは毎年死者が出ている。しかも農作物を食い荒らし、家まで破壊するそうだ。だから現地の人は近隣同士交代制で寝ずの番をして象対策をしているとのこと。
これはおっかない・・・。
だが、ふとこうも思った。これは北海道の熊と似たようなものなのかもしれないと・・・。最近は大都市札幌ですら熊が出没するのである。北海道民は熊の恐怖を痛いほど知っている。スリランカもこの感覚なのではないかと妙な連帯感を感じたものであった。

それにしても美しい。
前回の記事「スリランカはどんな気候?食料豊かな熱帯地域と仏教との意外な関係性について」でもお話ししたが、ここはスリランカのウエットゾーンに位置しているため水が豊かだ。ここも水田に利用されている。

さあいよいよ山の中に入ってきた。サッセールワ大仏は近い。


いよいよ到着だ。ネゴンボからここまで4時間弱・・・。インドの疲労も蓄積していた私はすでにグロッキーである。

しかも雨が降ってきた。さすがウエットゾーン。冷たい風が吹いてきたと思ったら空が暗くなり強い雨が降ってくるのである。

境内には巨大な菩提樹も。

そして急な階段を上った先に、例の仏像がいきなり姿を現した。これがサッセールワ大仏である。
バーミヤンの大仏と同じように巨大な一枚岩をくり抜いて作られたのがこの大仏である。大きさは12メートルほどだ。

これが私がスリランカで初めて見た仏像である。たしかに大きな仏像だ。よくぞこんな山奥にこれだけのものを作り上げたものである。
ここで楠本香代子著『スリランカ巨大仏の不思議』よりこの仏像の解説を見ていきたい。
まいった。これが最初の印象だった。上手い。実にいい。仏陀が生きている。
なぜこんなにいいのだろう。十ニメートルの巨像であるにもかかわらず、威圧感がまったくない。むしろ温かい雰囲気を持つ、不思議な大仏である。(中略)
しばらく目を凝らしていると、石工の仕事が少しずつ見えてきた。
まず、この像の顔は左右対称でない。特に目は人間に近く、今まで見たどの仏像にも似ていない。次に、顔の位置が全体的に、向かって右側に寄っている。それはまるで故意にそうしたかのように自然で、計算されたもののように思えた。少しズレた頭部によって動きが生じ、仏陀は息をしはじめ、左右少し違う目によって、優しく語りはじめたような気がした。
衣の表現は、アウカナ仏に比べると大雑把に見えるが、揺らぎがあって、それがかえって自然である。足は体の重みをしっかり受け止めて、逞しく立っている。仕上がっていないという見方をする人もあるが、違和感はない。
右手は横向きでなく正面を向いている典型的な施無畏印だが、スリランカでは横向きがポピュラーなのでこういう印は珍しい。いつごろの造像か不明だが、紀元後の早い時期、三世紀か四世紀あたりに造られた、マハーヴィハーラ派(大寺派)に属する仏陀ではないかという説もある。しかしそれではあまりにも早い。
この像は、アフガニスタンのバーミヤンの巨大仏のように岩山に巌を掘って、その中心に仏陀像を彫り出したものである。右手の指先が傷んでいる他は大きな損傷もなく、実に優しい表情をした仏陀像である。
この大仏がいつ頃作られたのか未だに謎というのもスリランカらしい。なぜ「スリランカらしい」という言葉が出てくるのかはおいおい皆さんもその意味がわかることだろう。
続く
※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。
〇「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
〇「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
〇「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」
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