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あなたの知らない印刷の世界 #010ヌリタシって、わかりますか?

「ヌリタシ、取れてる?」

印刷会社に入って最初の頃、先輩にそう聞かれた。

ヌリタシ。

「ワタシ。ヌリタシ。ワカラナイ。」

漢字で書くと「塗り足し」だと気づくまで、少し時間がかかった。

印刷物は、仕上がりのサイズに合わせて紙を裁断する。

このとき、裁断の位置が0.何ミリかズレることがある。

機械だが、完璧ではない。

そのズレに対応するために、デザインの端に少し余分に色や画像を伸ばしておく。

これがヌリタシだ。

一般的に3ミリ伸ばすことが多い。

ヌリタシがないと何が起きるか。

裁断がほんの少しズレたとき、端に白い細い線が出る。

紙の白地がのぞく。

仕上がりが一気に安っぽく見える。

たった数ミリの話が、印刷物の印象を変える。

デザイナーさんから届いたデータにヌリタシがないとき、現場はそっと対応する。

「ヌリタシないですね」と伝えると、「あ、すみません」となる。

悪気はない。知らないだけだ。

ヌリタシ、という言葉。

意味がわかれば単純な話だ。

でも知らないと、印刷事故につながる。

別に知らなくてもいい話でした。

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