日ではなく日々

役所浩司主演の"パーフェクトデイズ"という映画を見ました。何の予備知識も持たずになんとなく選び、感情の動静を止めて、と言うかこのところは起伏が働いていないため、少し放心気味に見始めました。

 途中何の思考をすることなく眺めるに徹し、場面場面がただ流れるだけの時間は思いがけず心地よく、次第に主人公の傍らで生活をしていました。1日の小物を揃えるルーティンや流れている音楽、高速道路の速度感、公園のノイズ、木漏れ日の痛さ、、、、。

見終えてから調べると監督は大好きなヴィムベンダースやいうやないですか、思わず頷いてしまいました。

何気ないことの繰り返しを心がけていても、人と人とのつながりにおいては異変が生じます。主人公もそれに巻き込まれて心が騒がざるを得ないときにがありましたが、そのような中でも自分を崩さない姿に憧れます。
また自然は同じことは起こりません。だから主人公は同じ個所の写真を撮って確かめているのようですが、その変化には一喜一憂しているようです。

 劇中で主人公が就寝前の読書も同じ習慣、違うのは私は本は必ずきちんと閉じます。そこで彼が読む本を追体験しました。幸田文の"木"とパトリシア ハイスミスの"11の物語"です。

劇中に本を読む姿があるのはいいなあ、大河ドラマ「べらぼう」でも主人公が叶わぬ恋心を収めるために用いたのは愛する人の本を読む姿でしたね。

青楼美人合姿鏡

手に入れられないものに固執せず、手に入れられないことにどのように心を惑わされないように生きるか、まさに‘老いる‘美学を見た思いです。
役所広司の老いをかくさない目元にも説得されます。

 今日ふとしたことである人に、全く知らない人ですが、目元が澄んでいて綺麗、そのままでいいのでは、と言われて、、、ただそれだけで心が軽くなるものです。この映画のラストシーンのように思わず笑みがこぼれながら涙が流れました。朝日ではなかったけれど。


いいなと思ったら応援しよう!