芒種になると思い出すこと
暑い。
でも、気持ちいい季節。
毎日の気温が25度を超える日が続いている。
夏が、突然はじまった。
小満の後、数日雨が続き、その後はいきなりの夏日へ。
日中の気温が高い時間帯は、エアコンのお世話になるけれど、
夜は、まだそこまでではない。
窓を少しだけ開ける。
静かに入ってくる風が心地よい。
カラッと晴れた空と澄んだ空気。
今、北海道の一番過ごしやすい季節を迎えている。
朝の散歩は、いつもより少しだけ遠回りをする。
桜の季節を終え、緑が生い茂った木。
今は、実をほんのりと紅く染めはじめている。

芒種の意味を調べてみると。
昔は、本格的な田植えをする目安で、
梅雨入りに重なる。恵みの雨に感謝しながら作業にあたる。
北海道は梅雨がないと言われているが、気候が変化し、本州で梅雨入りしたのち、北海道も少し遅れてジメジメとした日が続くことが多い。
今年はどうだろう。
芒種といえば、私には忘れられない思い出がある。
29年前の6月5日 空は薄曇り。
臨月を迎えた私は、夫と産婦人科へ。
いつ生まれるのかと、心待ちにしながら、受診を終えた。
その日は、神社のお祭りで、子どもから大人まで、音楽を奏でながら街の中心部では、パレードが行われていた。
初孫を撮影するためにと、義父母が買ってくれたビデオカメラの試運転のために、知人の子供たちの撮影を買ってでた。
いつ生まれてもおかしくないお腹を抱えて、知人の子供が踊りながら歩く横をカメラを抱えて走りながら撮影をする。
夫も練習した方がいいだろうと、カメラマンを交代し、私は子供達のそばで見学する。
無事に知人の子供達の撮影を終え、残り僅かな妊婦生活を満喫する私。
いつも集まるバイク屋で、ビデオ上映会を開催した。
仕事帰りの知人達が次々集まり、みんなで子供達の踊る姿を見ていると、黄色のウインドブレーカーに黒いパンツを履いた見たことのある人影が子供達の横をすぎていく。
お腹を抱えて、小走りしながら。
そう、妊婦のわたしだ。
パレードの行列に置いていかれないように、走る走る。
ビデオ上映に参加していた知人たちから「妊婦、走ってるね~」と言われるくらい、とにかく走っていた。
そこにいる誰もが、翌日、私が母になることなど知らずに、大笑いしていた。
そして、翌朝。
周期的なお腹のはりで、目が覚め。
「おや、これは」と思い、ハリが遠のかないことを確認。
ひとまず、これからの戦いにむけてシャワーを浴びて、お清め。
腹が減っては戦はできないので、トーストの朝ごはんを食べる。
しなければならないことを済ませたので、ここでようやく病院へ連絡。
「今から来てください」という言葉をいただけたので、待ちにまった出産だとニヤニヤしながら、実家や妹、友人達に電話をする。
「陣痛きたから、病院に行ってくる。生まれたら、電話する」って、各方面に報告。
いざ、病院へ。
パレードで走り回った24時間後に、無事に出産を終えた。
走って刺激になったのか。
今日は娘の誕生日。
今回、芒種について調べていると、習い事を始めるのにも良い日とされているそう。
「この芸において、おほかた、七歳を持って初めとす」
能を体制した世阿弥の著の冒頭文。
歌舞伎のセリフでも取り入れられるようになり、語呂の良さから
「6歳の6月6日」が定着したと言われていると知った。
お稽古ではないが、私にとって『お母さん業』が始まった日だ。
29年前の芒種。
お祭りのパレードを追いかけて走っていた私が、翌日には母になった。
あれから随分と月日が流れたけれど、前日の慌ただしさも、初めて娘を抱いた日のことも、今でも鮮明に覚えている。
芒種が巡るたび、夏の始まりと、母になった日のことを思い出す。
(6月6日は、映画『オーメン』のダミアンの誕生日を思い出してしまう世代である)


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