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技術で勝って、評価で負ける|倒産寸前だったフィリップスに学ぶ、40代技術者の『翻訳力』

はじめに

結論から言います。

あなたの技術が評価されないのは、技術力が足りないからではありません。
翻訳していないだけです。

これは、社内で「技術はできるんだけどね」と言われ続けている40代の技術者のための話です。

営業の話ではありません。

誤解しないでください。
あなたが翻訳をサボってきたわけではないのです。

日本の製造業の評価シートは「作る力」しか測りません。

仕様を満たしたか、納期を守ったか、不良を出さなかったか。
翻訳力を書く欄など、どこにもない。

評価されない能力を鍛えないのは、怠慢ではなく最適化です。
あなたは正しく最適化してきました。ルールが変わっただけです。

100年以上前に、まったく同じ壁にぶつかった会社があります。

今回はオランダの大企業、「フィリップス」を例に技術の翻訳について紹介していきます。



1.兄の技術を、弟が翻訳した

フィリップスは1891年、電球メーカーとして創業しました。
創業者ジェラルドは根っからの技術者で、当時最高水準の電球を作ります。
それでも売れず、数年で倒産寸前まで追い込まれました。

会社を救ったのは、16歳下の弟アントンです。
彼は技術者ではなく、営業でした。

彼はロシアへ渡り、電球の寿命やフィラメントの構造を語りませんでした。
代わりに見せたのは、宮殿が明るく照らされた光景そのものです。

結果、宮殿向けの大量受注を勝ち取り、
フィリップスは世界企業への階段を駆け上がっていきます。

アントンが売ったのは電球ではありません。
「明るい部屋」です。

ドリルを買う人が欲しいのはドリルではなく穴である——
レビットのあの指摘を、彼は70年早く実演していました。


2.「ふーん、すごいね」と言われた日

私も、同じ失敗をしました。

マーケティング部門へ異動した直後、客先で熱弁しました。
「従来比で処理速度が20%向上していて、耐久性も……」

返ってきたのは、「ふーん、すごいね」でした。

括弧の中身は、はっきり聞こえていました。
(でもウチには要らないかな)

悔しさで顔が熱くなったのを、今でも覚えています。

次の商談で、私は資料の1枚目からスペック表を外しました。
代わりにこう聞きました。

「御社の検査工程、今どこで一番時間を取られていますか」

商談の時間は3倍になりました。
相手が話し始めたからです。

受注できたかどうかより、あの日「説明する側」から「聞く側」に変わった感覚のほうを、今でも覚えています。


3.アメリカで見た、当たり前の順番

私はアメリカの顧客訪問の際、製品説明に何度も同席しました。

彼らはスライドの1枚目にスペックを置きません。
1枚目に書くのは、お客様の作業が何時間減るか、です。

技術の話は3枚目以降に来る。
しかも、聞かれたら答えるという順番でした。

日本から持ち込んだ資料は、まったく逆でした。

1枚目が構成図、2枚目が仕様一覧。
ベネフィットは最後の「まとめ」に一行だけ。

現地法人のエンジニアはこう言いました。

「スペックは、相手が知りたくなってから出すものだ」

技術を軽んじているのではありません。
正しく評価してもらうための順番だったのです。


4.翻訳を、3行だけやってみる

翻訳は根性ではなく作業です。

処理速度20%向上
→ 1ロットの検査が40分短縮。夜勤シフトを1枚減らせます

MTBF改善
→ 年2回のライン停止が消える。機会損失で数千万円の差になります

測定精度±0.1μm
→ 歩留まりが1.5ポイント上がります

左が今のあなた、右がアントンです。

手順は3つしかありません。
スペックを1つ選ぶ。

それがお客様の時間・人員・金額のどれを動かすか、単位をつけて言い換える。

単位が出せなければ、自社の営業に聞く。

そして、この翻訳力は陳腐化しません。

技術は5年で古くなります。

ですが翻訳の型は、対象が増えるほど精度が上がっていく。

20年分の技術知識は、放っておけば社内でしか通じないフローで終わります。

翻訳できた瞬間、社外でも値段のつくストックに変わります。

3年後、あなたが会議で最初に話すのは仕様ではなく「これでお客様の何が減るか」になっているはずです。

肩書きは変わっていないかもしれません。
ですが、重要な案件で最初に呼ばれるのがあなたになる。

そしてこの型は、若手にそのまま渡せます。
渡した瞬間、あなたは「技術ができる人」から「育てられる人」に変わります。

それが市場価値の正体です。


最後に

本当は、少し怖いのだと思います。

翻訳を学ぶということは、20年やってきた順番が最適ではなかったと認めることだからです。

ですが、捨てるものは何もありません。
順番を変えるだけです。

上の3行を、自分の担当製品に置き換えて書いてみてください。
埋まらない行があれば、それが今のあなたとお客様の距離です。

埋まらなかった行を、コメントで教えてください。
一緒に翻訳します。


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