振られたタスクが意味不明 — WBS標準化の罠 #PM奮闘記8
1. 冒頭:リアルな現場の会話
「標準作業のこれをお願いします」
「この作業の意味がわからないのですが、何をすればいいですか?」
「PMOが作ったんだけど、よく見ると何するかわからない。。」
「……(沈黙)」
こんにちは。HASエンジニアです。
こんな会話、経験したことありませんか?
これは私が実際に関わったプロジェクトで交わされたリアルなやりとりです。
PMだけでなく、作業(タスク)を振られた担当者もうなずいてしまう「現場あるある」ではないでしょうか。
今回はタスクの内容が分からないWBS(Work Breakdown Structure)の話をします。
2. WBSとは
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトに必要な作業を洗い出し、階層構造で整理したものです。
WBSの役割は大きく3つあります:
タスクの抜け・漏れ・ダブりを防ぐ
担当者への明確な指示になる
進捗管理の基盤となる
言い換えれば、「何をやるか」「誰がやるか」「いつ終わるか」をチーム全員で共有するための地図です。これをもとにプロジェクトの完了が定義されます。

3. 標準化とその落とし穴
大規模プロジェクトでは、WBSを一から作るのは負担が大きいため、多くの企業では「標準WBS」を整備しています。
この標準WBSは、過去の経験をもとにPMO(Project Management Office)という役割の方々が作成・更新を担い、SDCA(Standardize → Do → Check → Act)サイクルで改善されるはずです。
しかし、実態はそう簡単ではありませんでした。

4. 意味不明なWBS、その理由は?
私が関わったプロジェクトの標準WBSには200以上のタスクがありましたが、多くが「テンプレートがない」「何をやるのかよくわからない」ものでした。
その原因は主に2つ。すでに最初の標準化の段階でしくじっていました。
1つ目は、既存プロセスの刷新。
20年以上使われてきた古いプロセスを一気に見直し、曖昧だったタスクを形式知化した結果、逆に分かりにくくなってしまったのです。
2つ目は、PMOチームの構成。
多国籍・外部採用中心で、PMに関する知識はあっても我々の業界経験が浅いメンバーも多く、暗黙の了解や実務的な知見を十分に吸収できていませんでした。
5. PMの葛藤と判断
今回のプロジェクトは、ちょうどこの新しいプロセスのパイロットプロジェクトとなってしまい、WBSの曖昧さや不具合を炙り出す結果となりました。SDCAサイクルでいう最初の”Do”に我々が相当します。

時差のある海外チームに英語で確認し、翌日レスをもらう――それ自体が負荷になっていきます。
全体的な見直しをPMOに依頼しても、PMO側も人的リソースがひっ迫していて、返ってきたのは「6か月はかかります」との返答。もちろん、今のプロジェクトには間に合いません。
そこでPMが選ぶのが「テーラリング(tailoring)」。
つまり、標準WBSをプロジェクトの実態に合わせてカスタマイズする方法です。

ただし、やりすぎると「標準」ではなく「我流プロジェクト」となり、再利用やナレッジ共有が難しくなります。どこまで手を入れるか、PMは常に悩みます。
6. 判断基準は“ビジネス目標に貢献するか”
WBSの調整で最も重要なのは、「この作業はビジネス目標に貢献するか?」という視点です。
ビジネス目標は、プロジェクト憲章やスコープ・ベースラインといった文書に明記されています。
PMはそれらと照らし合わせながら、WBSを“成果につながる設計図”に仕立てていく必要があります。
とはいえ勝手に標準作業から外れたテーラリングをやるわけにもいきません。各WBSごとにこのプロジェクトで必要な理由/必要でない理由、優先度、重要度を明確にし、ステークホルダー(関係者)の承認を取り付けるよう奔走しました。
7. 振り返りと未来への改善
プロジェクト完了後の振り返りでは、標準WBSへのフィードバックが不可欠です。現場の声を集めて、次のプロジェクトのために改善提案を行います。
PMO側の知見や教育も課題ですが、「誰かが最初にやらなければ変わらない」のが新プロセスの宿命です。今回は私のプロジェクトがその役目を担った形になりました。
「このタスクの意味がわからない」と感じたとき、あなたはきちんと考えている証拠です。腹落ちするまで理解を進め、プロジェクトを目的に基づいた設計図へと進化させる――それこそがPMの腕の見せ所だと思っています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。他のPM奮闘記も掲載しているのでぜひ読んでみてください!
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