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15歳、ただ会いたかっただけ。第十二話 夜のつづき

少しひんやりした夜の空気。

四人で並んで歩きながら、いつも通りの会話が続いている。


「ねぇ、ちょっとコンビニ寄ろー」


みさきが軽く言う。


「いいね、なんか飲みたい」


かずきがすぐに乗る。


「じゃあ寄るか」


としもそのまま歩き出す。


自然な流れで、店に入った。

店内の明るさに、一瞬だけ目が慣れない。


なんとなく外の空気に戻りたくて、先に出る。

少し遅れて、みさきも出てきた。


店の前、いつもの場所に並んで座る。

ガラス越しに、とし、かずきが中で何か見ながら笑っているのが見えた。


「……で?」


隣から、小さな声。

みさきがこっちを見て、にやっと笑う。


「どうだったの?」


一瞬だけ間があいて、


「……まぁ、普通に」


さらっと答える。


「普通にってなに」


すぐ突っ込まれる。


「普通は普通でしょ」


「いや絶対違うじゃん」


「うるさいな、今言わないでよ」


軽く肩を押す。

みさきが楽しそうに笑う。


「でもまぁ、そっか」


少しだけトーンが落ちる。


「よかったじゃん」


「うん、まぁね」


今度は普通に返せた。


「先入ってるね」


みさきが立ち上がって、店の中に戻っていく。


一人、外に残る。


少しして、ドアが開く音。


振り返ると、としが出てきた。


「なにしてんの」


いつもと変わらない声。


「……別に」


さっきと同じ言葉なのに、さっきとは違う意味になる。


としが少しだけ近づく。

距離が、前より近く感じる。

目を合わせられない。


「なに」


すぐ近くで声が落ちる。


「……なんでもない」


そう言った瞬間、


「なに、意識しすぎ?」


軽く笑った声。


一気に顔が熱くなる。


「してないし」


反射で返すけど、全然説得力がない。


としは少しだけ笑って、そのまま隣に座る。


頭をポンポン、と軽くされた。


何も変わってないはずなのに、

全部が少しずつ違ってた。


店のドアが開く音。


「おまたせー」


かずきとみさきが出てくる。


「何してんの、こんなとこで」


かずきが笑う。


「別に」


としが答える。


「なんか静かじゃね?」


「疲れたんじゃない?」


みさきがさらっと言う。


その横で、一瞬だけこっちを見て、また視線を外した。


絶対わかってる顔だった。


「帰る?」


としが立ち上がる。


四人で並んで歩き出す。


夜道。


さっきまでと同じはずなのに、
なんとなく会話の入り方がぎこちない。


「ねぇ、明日さー」


かずきが話し始めて、みさきが普通に返す。


私はうまく入れないまま、隣を歩くとしを意識してしまう。


少し距離を取る。


でも、歩幅が合うたびに、また近くなる。


このままだと、ずっと変な感じのままな気がした。


一瞬だけ迷って、


そのまま、としの腕に軽く腕を絡める。


自分からやったくせに、一気に心臓がうるさくなる。


としが私に視線を向ける。


恥ずかしくなって、そのまま離そうとしたけど、


「離れんの?」


としが小さく言う。


少しだけ、引き止めるみたいに。


「……離さないし」


なぜか意地みたいにそう返す。

自分でも意味がわからない。

……意識しすぎ


としは一瞬だけ黙って、


軽く笑った。


そのまま、腕を外されることもなく歩き続ける。


前を歩く二人は、まだ気づいてない。


でもこの距離、どう考えても普通じゃない。


さっきまで意識してたのに、


今はもう、別の意味で意識しすぎている。


思わず、小さく笑ってしまう。


「なに笑ってんの」


すぐに聞かれる。


「なんでもない」


そう言いながらも、ちょっとだけ笑いが止まらない。


「絶対なんかあるだろ」


「ないって」


そう返すけど、


腕を絡めてること自体がもう“ある”だった。


「ねぇ、ちょっと待って」


前を歩いていたみさきが振り返る。


「私、あっち寄ってく」


コンビニの反対側の道を指さす。


「あ、俺も」


かずきもついていく。


「じゃあまた明日なー」


軽く手を振って、そのまま二人は別の道へ行った。


一瞬で、静かになる。


残されたのは、としと二人だけ。


「……来る?」


としがぽつりと言う。


「……うん」


そのまま歩き出す。


腕は、まだ絡んだまま。


「本当、わかりやすいな。」


としが不意に言う。


「なにが?」


聞かなくてもとしが言ってる意味がわかる。


「態度が」


少しだけ笑う声。


なんでも見透かされてるような気がする。


自分だけが意識してるみたいでむかつく。


そのまま、腕をほどかれる。

一瞬だけ、距離が空く。


「あ……」


思わず、小さく声が出る。


でも次の瞬間、


今度は逆に、手を取られた。


指と指が、ちゃんと重なる。


「こっちのがいい」


何気ない声。


でも、その一言で一気に心臓が、またうるさくなる。

何も返せないまま、ただ繋がれた手を見る。

逃げる理由も、ほどく理由も見つからない。


「……なに」


また少しだけ笑ってる声。


「顔、やばい」


「うるさい」


反射で返す。


でも全然隠せてないのは分かってる。


としは何も言わず、そのまま歩く。


繋いだ手も、離さないまま。


さっきまでより、少しだけゆっくりな歩幅。


それに合わせるみたいに、自然と隣を歩く。


夜の空気が、やけにやわらかい。


繋いだ手は、そのままだった。


何も変わってないはずなのに、


少しだけ、違う。







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