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15歳、ただ会いたかっただけ。第六話 変わりゆく日常

それからは、ほとんど毎日のようにとしと会った。

平日はとしが仕事をしてるから、あまり会える時間が無い。
だから、会うと言ってもいつも家の近くを歩いたり、川沿いで話したり。

ただそれだけなのに楽しかった。
毎日会いたいとも思った。

昼間は友達と遊んで、夜になると、としと会う。
少し前までの生活とは全然違う。
今までの彼氏とは、毎日会うという事も無かった。

それなのに、不思議と疲れるどころか、
会えば会うほど、もっと一緒にいたいと思ってしまう。

気づけば、昼間に友達と過ごしている時でさえ、
ふとした瞬間に、としのことを考えていた。

「今なにしてるんだろう」
そんなことばかり、頭に浮かぶ。

会えない時間が、こんなにも長く感じるなんて、
知らなかった。

気づいてしまえば、もう簡単だった。

自分の気持ちに、理由なんていらない。
会いたいから会う。ただ、それだけでよかった。

もう、止める気すらなかった。

理由なんて、きっと後からいくらでもつけられる。

ただ、その時の私には、
としの全部が、どうしようもなく特別に見えていた。

何気ない言葉も、仕草も、
どうでもいいはずの時間さえも、
全部が、少しだけ輝いて見えた。

何気ない会話の途中だった。

ふと、としの声が近くなって、
気づけば、さっきまでよりも距離が縮まっていた。

どうしてか、その時は何も言えなくて、
ただ見上げることしかできなかった。

次の瞬間、
触れるだけの、短いキスだった。

ほんの一瞬で離れていく唇に、
何が起きたのか、うまく理解できないまま立ち尽くす。

ふと、としの視線が重なる。

どこか迷うように、確かめるように、
静かに私を見つめていた。

そのまま、もう一度、そっと距離が縮まる。

今度は、さっきよりも少しだけ長いキスだった。

拒む理由なんて、もうどこにもなかった。

胸の奥がじんわりと熱くなる。

――あぁ、もう戻れない。

そう思った。

それから少しの間、
お互いに何も言えなかった。

さっきまで普通に話していたのに、
同じ空気のはずなのに、
どこか違って感じる。

並んで歩く帰り道。

触れそうで触れない距離が、
さっきよりもずっと意識されてしまう。

何か言わなきゃと思うのに、
言葉にしようとすると、全部こぼれてしまいそうで、
結局、何も言えなかった。

ただ、隣にいるだけで、
胸の奥が、さっきのキスを何度も繰り返していた。


この日から、何かが決定的に変わってしまった気がした。

それでも、次の日も、その次の日も、
変わらないように、としと会った。

ただ一つ違っていたのは、
前よりも、少しだけ距離が近いこと。

並んで歩く時、
気づけば、触れそうなほど近くにいる。

ふとした瞬間に視線が合って、
そのまま逸らせなくなることも増えた。

としは何も言わないのに、
その仕草や間に、少しずつ引き寄せられていく。

前なら気にしなかったようなことまで、
全部、特別に感じてしまう。

気づかないふりをしても、
もう誤魔化せなかった。

としといる時間が、
気づけば、何よりも優先されるようになっていた。

付き合っているはずなのに、
触れられるたびに、まだ少しだけ緊張してしまう。

並んで歩けば、当たり前のように手を繋ぐ。

その距離が嬉しくて、
でも同時に、どこかくすぐったかった。

ふざけるように肩を組まれて、
そのまま笑い合う時間も増えていく。

自然に距離が近づいているはずなのに、
その一つひとつに、まだちゃんとドキドキしてしまう。

としの腕が、そっと腰に回る。

少しだけ驚いて、
でも、振り払おうとは思わなかった。

むしろ、そのまま身を委ねている自分に、
気づいてしまった。

ふと、としが小さく笑う。

「ほんと、可愛いよね」

不意に落ちてきたその言葉に、
一瞬、何も返せなくなる。

冗談みたいに軽い言い方なのに、
胸の奥に、まっすぐ届いてくる。

どうしていいか分からなくて、
視線を逸らしたまま黙っていると、

「そうやってすぐ逸らすとこも」

追いかけるように、もう一度言われた。

心臓がうるさい。

そのまま、としの腕が少しだけ強くなる。

逃げ場を塞ぐわけじゃないのに、
自然と、その中に収まってしまう。

顔を上げると、すぐ近くにとしがいて、
その距離に、また息が浅くなる。

「ね、こっち見て」

優しい声に促されて、
ゆっくりと視線を戻す。

次の瞬間、
さっきよりも迷いのないキスが落ちてきた。

触れるだけじゃ終わらない、
少しだけ深いキスだった。

離れたあとも、
しばらく言葉が見つからなかった。

ただ、お互いの距離だけが、
さっきよりも少し近くなっている。

としは何も言わずに、
そのまま私の髪に触れる。

指先で、確かめるみたいに、ゆっくりと。

それだけで、また胸の奥が熱くなる。

「帰りたくないな」

ぽつりと落ちた言葉に、
自分でも少し驚いた。

でも、としは困ったように笑って、

「俺も」

短く、そう返した。

それだけなのに、
ちゃんと同じ気持ちなんだって分かってしまう。

そのあとも、しばらく離れられなくて、
結局、いつもより少しだけ長い時間を一緒に過ごした。

帰り道、何度も振り返りたくなるくらい、
名残惜しかった。

それでも、少しずつ遠ざかっていく背中を見送りながら、

こんな日が、これからも続けばいいのにと、
心のどこかで願っていた。



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