15歳、ただ会いたかっただけ。第七話 はじまりの気配
「俺の友達もこっちに仕事に来たんだ。明日連れて行っても良い?」
としからの電話だった。
せっかくだし、ということで、
私はすぐにみさきに電話をかけた。
「明日さ、ちょっと人数増えるんだけど来れる?」
そのまま、かおりにも連絡して、
みんなで集まることになった。
当日、としと、その友達のかずき。
それに、まさも加わって、
6人で遊ぶことになった。
最初は、いつも通りのカラオケだった。
適当に曲を入れて、
順番も気にせずに歌って、
誰かが外せば笑って、また次の曲が流れる。
そんな、よくある時間。
かずきがマイクを持つまでは。
イントロが流れて、
何気なく始まったはずなのに、
一声目で、空気が変わった。
思わず、みんなの動きが止まる。
「え、うま…」
誰かが小さく呟いた声に、
全員が同じことを思っていた気がした。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、
自然と聴き入ってしまう。
歌い終わったあと、
一瞬だけ静かになって、
「やば」
その一言で、一気に空気が変わる。
みさきが
「え、ちょっと待ってうますぎない?」
って食いつく。
かずきが
「いや普通だって」
って、笑いながら軽く流す。
「え、もう一曲いこ」
「歌って歌って」
さっきまでの流れのまま、
自然と次の曲が入れられていた。
曲が終わるたびに、
「やばい」「ほんとに上手い」って声が上がって、
その中心には、いつもかずきがいた。
その隣で、みさきが楽しそうに笑っているのが、
なんだか印象に残った。
曲の合間、
誰かが次の曲を探している間に、
としがそっと近くに寄ってきた。
「何歌う?」
耳元で小さく聞かれて、
少しだけ肩が跳ねる。
「まだ決めてない」
そう答えると、
画面を覗き込むふりをして、
自然と距離が近くなる。
周りは変わらず騒がしいのに、
その一瞬だけ、少し静かに感じた。
気づけば、としはずっと隣にいて、
当たり前みたいに肩を寄せてくる。
誰かが歌っている最中でも、
その距離が離れることはなかった。
「近くない?」
みさきに笑いながら言われて、
「いいじゃん別に」
としは気にした様子もなく、そう返す。
そのまま、私の方を見て少しだけ笑った。
恥ずかしいはずなのに、
嫌だとは思わなかった。
曲が流れている間、
ふとした瞬間に、としの手が腰に回る。
何も言わずに、そのままにしていると、
「ほんと仲良いね」
みさきが笑いながらそう言った。
「いや、仲良いっていうか…」
かおりも続けて何か言いかけて、
でも結局、面白そうにこっちを見ている。
当のとしは、気にした様子もなく、
そのままの距離で普通に話していて。
恥ずかしいはずなのに、
なぜか離れようとは思わなかった。
その空気の中で、
かずきとみさきが自然と隣同士に座っていたのが、
少しだけ目に入った。
気づけば、あっという間に時間が過ぎていた。
まだ話し足りないまま、
名残惜しさだけが残る。
外に出ると、さっきまでの賑やかさが嘘みたいに静かで、
少しだけ現実に戻された気がした。
それでも、
今日の空気が、どこか心地よくて。
またすぐにでも、
みんなで集まりたいと思った。
帰り際、
気づけば、かずきとみさきが並んで歩いていた。
特別なことは何もないはずなのに、
その距離が、妙に自然に見えた。
あの二人も、
きっとまた会うんだろうなと思った。
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