15歳、ただ会いたかっただけ。十八話 聞けないまま
「……昨日さ」
言いかけてやめる。
「どうした?」
「ううん、何でもない」
言いたいのに言えない。
聞きたいのに聞けない。
だけど、ずっと思ってる。
〝帰ったらどうするの?″
〝私達はどうなるの?″
でも、1番聞きたいのは、
〝私のこと、どう思ってるの?″
「何でもない」と笑ったあと、
としは特に気にした様子もなく話を続ける。
その自然さに、少しだけ安心してしまう。
でも同時に、
“本当に気づいてないの?”
そんな気持ちも消えない。
大丈夫って思いたいのに、
不安と同時に、嫌な気持ちもどんどん膨らむ。
みさきと話して少し落ち着いたはずだった。
なのに、としを前にすると全部ぐちゃぐちゃになる。
そんな状態が嫌で、
「ねぇ、みさきとかずき呼ぼうよ」
2人が居たら、変わる気がした。
「何で?2人じゃ嫌なの?」
嫌じゃない。2人きりで居たい。
だけど、怖い。
この気持ちが耐えられない。
自分でもどうしていいのかわからない。
「嫌じゃないよ…」
適当に誤魔化して笑う。
でも、自分でも声が少し硬いのが分かった。
としは少しだけ不思議そうな顔をしたあと、
「ゆうちゃん、どうしたの?」
そう言って笑った。
その優しさに、また胸が苦しくなる。
こういう時、としはわざと
〝ちゃん″
って付ける。いつもは言わないのに。
「……わかんない」
小さく漏れた声に、自分でも驚いた。
「何それ」
困ったように笑う。
その空気が、逆に優しすぎて苦しくなる。
としは何か言いかけて、少しだけ黙る。
何を言われるのか分からなくて、胸の奥がざわつく。
その沈黙が怖くて、私は先に目を逸らした。
「ゆうちゃん、好きだよ」
ずるい。
こんな時に好きって。
答える間もなく、としに引き寄せられて、
軽くキスをされる。
私は泣きそうになった。
「……わかってない」
「何が?」
としは意味が分からないみたいに笑う。
その無邪気さが、今は苦しかった。
この人は、本当に分かってないのかもしれない。
としの肩に額を押しつけたまま、私は何も言えなかった。
このまま、何も聞けなくなってしまいそうで怖い。
好きって言葉が嬉しいのに、
それだけじゃ足りない自分が苦しかった。
#恋愛小説部門 #創作大賞2026
#小説 #連載小説 #短編小説 #恋愛小説#日常
#長編小説
