15歳、ただ会いたかっただけ。最終話 あの日
放課後。
みさきと2人で歩きながら、また同じ話をしていた。
「会いたい」
もう、その言葉しか出てこなかった。
電話をしても苦しい。
声を聞けば聞くほど、触れたくなる。
何をしてても、としの事ばかり考えていた。
もう、自分でもどうしたら良いのか分からなかった。
「……ねぇ」
ずっと言いたかった事を、口にした。
「会いに行かない?」
みさきが足を止める。
「……え?」
「もう無理。会えないの」
その言葉は、冗談なんかじゃなかった。
「行っちゃおうか」
みさきは即答だった。
「本当に行く?」
「……うん」
そこからは、もう止まらなかった。
みさきのお姉ちゃんが、夜行バスの事を色々教えてくれた。
行き方。
待ち合わせ場所。
チケットの取り方。
「絶対迷子になるから、ちゃんと聞いときな」
そう言いながら、手配までしてくれた。
怖くないわけじゃなかった。
でも、それ以上に会いたかった。
もう、離れてる方が苦しかった。
学校のこととか、親のこととか。
本当は、ちゃんと考えなきゃいけないのに。
その時の私には、としに会いたいしかなかった。
その日の夜。
私は、としに電話をかけた。
「もしもし?」
聞き慣れた声だけで、また会いたくなる。
少しだけ黙ってから、私は言った。
「……ねぇ」
「ん?」
「としのとこ行く」
電話の向こうが、一瞬静かになる。
「……え?」
「みさきと、そっち行く」
言ったあと、自分でも心臓がうるさかった。
「……マジで言ってる?」
「うん」
少しだけ沈黙が落ちる。
「みさきと、夜行バスで行く」
そのあと、としが小さく笑った。
「やば……めちゃくちゃ嬉しい」
その声を聞いた瞬間、胸が熱くなった。
「でも、お金とか大丈夫?」
「みさきのお姉ちゃんが色々やってくれた」
「あー……そっか」
少し安心したみたいに、としが息を吐く。
「こっち来たら、生活は心配すんな」
「え?」
「俺、仕事してるし」
「……うん、わかった。ありがとう」
その言葉が、妙に安心出来た。
としが言うと、本当に大丈夫な気がした。
電話を切ったあとも、しばらく眠れなかった。
本当に会える。
そう思うだけで、胸が苦しくなる。
不安がなかったわけじゃない。
学校のこと。
親のこと。
この先どうなるのか。
考えなきゃいけない事は、たくさんあった。
だけど、その時の私には、としに会いたいしかなかった。
数日後。
私とみさきは、大きなバッグを抱えて、夜の駅にいた。
夜風が少し冷たかった。
夜なのに、人がたくさんいた。
眩しい駅の光を、ぼんやり眺めていた。
胸の奥が、ずっと落ち着かなかった。
やっと会える。
その事ばかり考えていた。
この先どうなるかなんて、何も分からなかった。
それでも、会いたかった。
「行くよ」
みさきの声。
あの日ーー
私とみさきは、夜行バスに乗った。
あの時の私達には、それしか見えてなかった。
何も怖くなかった。
15歳、ただ会いたかっただけーー
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