15歳、ただ会いたかっただけ。第十三話 何も変わらない、はずなのに
朝の教室。
久しぶりの空気に、少しだけざわつきが残ってる。
「ねむ…」
席に座った瞬間、みさきが机に突っ伏す。
「ね、」
カバンを置きながら笑う。
「夏休み明け無理すぎ」
「生活戻ってないもん」
そんな会話をしながら、窓の外を見る。
特に意味もないのに、ふと考えてしまう。
昨日までのこと。
「……なに考えてんの」
みさきの声で戻る。
「別に」
ニヤニヤしてる。
「もー」
軽くペンでつつく。
今度は私がみさきに聞く。
「で、どうなの」
「なにが」
「かずきと」
「実はさ…私もしちゃった」
キャーキャー2人で騒ぐ。
「さっきとしとの事考えてたんじゃないの?」
みさきはクスッと笑う。
「考えてないっ」
「じゃあなんでさっきからぼーっとしてんの」
言葉に詰まる。
図星すぎる。
「……別にぼーっとしてないし」
「してるって」
楽しそうに笑う。
「まぁでも」
少しだけトーンが落ちる。
「いいんじゃん」
「なにが」
「私だって考えるもん」
みさきは素直に答える。
一瞬、言葉に困る。
「まぁ…でもそうだよね…」
チャイムが鳴る。
なんとなく会話が途切れる。
でも頭の中は、さっきのまま。
授業中も、ふとした瞬間に思い出す。
距離とか、あの時の感じとか。
別に大したことじゃないはずなのに、
妙に残ってる。
放課後。
教室を出て、いつもの場所に向かう。
「今日も行くの?」
みさきが横で聞く。
「うん」
「ほんと好きだね」
「みさきもね」
そう返しながらも、否定はしない。
コンビニの前。
少しして、としとかずきが来る。
仕事終わりの空気。
「おつかれ」
「つかれたー」
いつものやり取り。
でも――
目が合う。
一瞬だけ。
それだけなのに、
少しだけ距離が近く感じる。
「なに飲む?」
かずきが言う。
「なんでもいい」
そう答えた瞬間、
「じゃあこれ」
としが勝手に取る。
「またそれ?」
「いいだろ」
「適当すぎ」
その流れも、もう普通。
「はい」
渡される。
「ありがと」
自然に受け取る。
みさきがすぐ突っ込む。
「決められてるじゃん」
「いいって言ってるし」
「いやでもさー」
笑ってる。
その横で、
としがいつの間にか隣にいる。
何も言わないまま、そのままの距離。
そのまま離れない。
少しだけとしの方を見る。
目が合う。
逸らさない。
としは小さく笑うだけ。
「ねぇ、それちょうだい」
としが手元を見る。
「やだ」
「いいじゃん」
何も言わずにそのまま取られる。
当たり前みたいに一口飲んで、そのまま返してくる。
少しだけ間があく。
「今のは意識したでしょ」
みさきがすぐ言う。
「してないし」
即答。
でもちょっとだけ遅れた。
「いや今のしてるって」
かずきも笑う。
「してないって」
その横で、
「してるだろ」
少しだけ顔が近づく。
そのまま離れない。
一瞬で言葉に詰まる。
「……してない」
慣れたはずなのに、
なんで今さら、って思う。
「ふーん」
軽く笑われる。
そのまま、距離が少しだけ詰まる。
肩が触れる。
そのまま、少しだけ寄せられる。
夕方の空気の中、
四人で並んで歩く。
学校が始まっても、
何かが変わったわけじゃない。
ただ、
少しだけ距離が近いままになっただけ。
それが、ちゃんと続いてる。
こんな毎日が、ずっと続けばいいと思った。
