15歳、ただ会いたかっただけ。第二十話 束の間の安心
次の日。
昨日あんなに泣いたのが嘘みたいに、私は少しだけ気持ちが軽くなっていた。
「別れるわけないだろ」
昨日のその言葉が、まだ頭から離れなかった。
早くみさきに話したい。
みさきとかずきはどうだったんだろう。
そんな事を考えながら、みさきとの待ち合わせ場所へ向かう。
「おはよう」
「おはよう。ゆう、昨日話せた?」
みさきも気にしていてくれてた。
「うん、別れないって。みさきも話出来た?」
「良かった。うん、うちらも別れないよ」
その言葉を聞いて安心した。
私達だけじゃなかった。
でも、昨日の会話はそれだけじゃない。
「……あとさ、本当に来たいなら来ればいいって言われた」
「え……」
みさきが少し驚いた顔をする。
「もちろん、冗談っぽく言ってたけど……仕事してるし生活は出来るって」
自分で言いながら、昨日の事を思い出す。
あの時の言葉が、まだ胸の奥に残っていた。
「でも、実際どうするんだろうね」
みさきが小さく笑う。
「分かんない。そこまで考えられてない」
「だよね、私も」
別れないとは言われた。
でも、離れる事に変わりはない。
会えなくなる寂しさも、不安も、全部消えたわけじゃなかった。
それでも。
昨日までより、少しだけ前を向ける気がしていた。
放課後、いつもの待ち合わせ場所。
「おつかれー」
「おつかれ」
としとかずきが来る。
「今日どーする?」
「カラオケ行きたい」
自分でも驚くくらい、すぐに言葉が出た。
「めずらし」
かずきが笑う。
「いいじゃん。行こーぜ」
4人で駅の方へ向かう。
今日は、いつもより少しだけ足取りが軽かった。
カラオケに入ってからも、私はずっと浮かれていた。
気づけば、としの隣に座っている。
肩が触れる距離も、軽く笑いながら話す時間も、全部嬉しかった。
「ゆう、今日わかりやすい」
みさきがニヤニヤしながら言う。
「え?」
「機嫌いい」
「そんな事ないし」
否定しながらも、自分でも分かっていた。
昨日、としに言われた言葉が、まだ胸の奥に残っている。
別れない。
その言葉だけで、こんなに安心するなんて思わなかった。
カラオケも終わって、みさき達と別れた。
「ゆうちゃん、今日機嫌良かったね」
肩を引き寄せられ、顔を覗き込まれながら言われた。
「そうかなー」
なんて誤魔化してみたけど、お見通しらしく、
「本当、わかりやすいなー」
笑いながら、頭をくしゃくしゃと撫でられた。
そのまま軽くキスをされる。
としは周りを気にしない。
外にいても、みんなといても、こういう事を平気でしてくる。
最初は恥ずかしかったはずなのに、気づけばそれにも慣れてしまっていた。
「帰る?」
「うん」
としと並んで歩く帰り道。
他愛もない話をしながら笑っているだけなのに、それだけで幸せだった。
こんな時間が、ずっと続く気がしていた。
あの日から、少しだけ安心して笑える時間も増えた。
でも、
それとは逆に、
離れなければならない日は、確実に近づいていた。
「あと少しだね」
そんな言葉を交わすようになっていた。
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