「Undo(取り消し)」が奪ったもの。私が革のシステム手帳に完全敗北を喫した文具店での出来事
先日、「どれだけ便利でも、iPadは『年季の入った革の手帳』のカッコよさには永遠に勝てない」という記事を公開しました。
デジタル手帳の利便性を発信してきた身としては、少し勇気のいる「白状」でした。しかし蓋を開けてみると、驚くほど多くの方からこのジレンマについて共感の声をいただきました。
どうやら、私と同じように「頭(論理)ではデジタルを選んでいるのに、心(感情)がアナログに惹かれ続けている」という現代の手帳ユーザーは少なくないようです。
そんな折、ふと立ち寄った大型文具店で、私は自分の「アナログへの敗北感」をさらに決定的なものにする体験をしてしまいました。
1. 完璧なシステムが「味気なさ」に変わる瞬間
文具店の奥、システム手帳のコーナー。 そこには、上質な革で仕立てられた重厚なバインダーが美しく陳列されていました。私はその一つを手に取りました。
漂ってくる、革の深い匂い。 金属製のリングが「カチャリ」と立てる、重みのある冷たい音。 そして、かすかにざらつきのある真新しい紙のリフィル。
私は普段、プログラマーとしてシステムを構築し、iPadを最強の手帳にするためのデジタルリフィルを自ら開発しています。レイアウトを計算し、無限に複製できるシステム。それは、無駄を排除した「効率化の結晶」です。
しかし、その革の手帳を手にした瞬間、自分が構築してきたものが、ひどく味気なく、薄っぺらいものに感じられてしまったのです。
2. 「Undo(取り消し)」が奪ってしまった人生の重み
デジタル手帳の最大のメリットは、何度でもやり直せることです。 字を間違えれば、画面をタップするだけで「Undo(取り消し)」ができ、まっさらな状態に戻る。予定が変われば、投げ縄ツールで囲んで別の日に移動させるだけ。常に手帳を「美しく、完璧な状態」に保つことができます。
しかし、文具店で私は気づいてしまいました。 この「いつでも取り消せる」ということこそが、デジタル手帳から「重み」を奪っている張本人なのではないか、と。
紙の手帳に万年筆でインクを落とす時、そこには「もう後戻りできない」という静かな緊張感があります。間違えれば、二重線で消すか、修正テープで不格好に隠すしかない。 でも、その「消せない失敗の跡」や「予定変更でぐちゃぐちゃになったページ」こそが、その時自分がどれだけ悩み、もがいていたかという「証(味)」になります。
デジタルには、この「泥臭い軌跡」が残らないのです。
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3. 頭はデジタルを求め、心はアナログに嫉妬する
仕事のタスクも、過去の膨大な記録も、すべてはiPadという薄い板の中にシステム化されています。論理(頭)では、間違いなくデジタルが正解なのです。
しかし、完璧な効率を追求するシステムの裏側を知る人間だからこそ、そこに、ひどく無機質なものを感じてしまう。心は、文具店のレジに革の手帳を持っていき、一生の相棒として育て上げたい欲望に駆られている。
デジタルを極めようとすればするほど、アナログの不完全な美しさが眩しく見えてしまう。この「革への片思い」という呪縛から逃れられる日は、当分来そうにありません。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 「iPadの手帳」と「革の手帳」。どちらも本当に魅力的な、大人のロマンが詰まった道具ですよね。
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また、以前書いたこちらの記事でも「紙とデジタル」について別の角度から結論を出していますので、お時間のある時にぜひ読んでみてください。
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