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「ホテルCCW」第3話

本日もホテルCCWオープンです。果たして今日はどんなお客様がいらっしゃるのか。えっ、私に聞きたいことがある。どうしてホテルで働いているのか。それは勿論私の…
あら、もうすぐいらっしゃるようですので小言はここまで。


佐々木千花 32歳 医者

漸く休暇が取れたからショッピングに来た。両手には紙袋。

千花「久しぶりにゆっくり買い物が出来て良かった」

ポタ

千花「雨が降ってきた。傘持って来てないよ。どこかで雨宿りしないと」

紙袋を抱えながら雨宿りの場所を探す。

千花「今日降らないって言ってたのに、最悪〜」

横をチラッと見ると建物の扉があったのでとりあえず避難することに

凛音「いらっしゃいませ」

千花「すいません勝手に入ってしまって、こちらは一体」

凛音「こちらホテルCCWでございます」

千花 ”ホテル…新しく出来たのかなぁ”

凛音「お客様、雨でお濡れに、良かったらこちらのタオルお使いください」

千花「ありがとうございます」

凛音「本日ご予約で?」

千花「いえ、違います。突然雨が降って来たので慌てて入ってしまっただけなんです。小雨になったらすぐに出て行きますので、クシュン」

凛音「大丈夫でございますか。よろしければ今日はこちらで休んでいかれては、どうやらこれからが本番らしいので」

テレビの画面から都内全域に大雨注意の文字と今夜から明け方まで雨足はドンドン強くなるとアナウンスされている。

千花「じゃあそうさせて貰います。クシュン」

凛音「体が冷えてますね。先にシャワーをご利用ください。お部屋の案内は落ち着いてから」

シャワー室に案内されて、用意されていた服に着替えてフロントに戻る

千花「服まで用意して頂いて、この服何だか懐かしいような」

凛音「当ホテルのコンセプトが懐かしい記憶なので、お体大丈夫ですか」

千花「大丈夫ですよ、一応私医療関係者なんで」

凛音「それは失礼致しました」

たわいも無い話をしながらフロントに戻ってきた。

凛音「改めまして、当ホテルの私支配人の天生凛音と申します。当ホテルは過去に思い出のある部屋に宿泊することできます」

千花「過去?過去に戻るのですね」

凛音「その通りでございます。なので普段はお客様に宿泊したい部屋を選んで頂くのですが、一部屋しか空いてなくてそちらでも宜しいですか」

千花「突然ですから、全然気にしないで下さい」

凛音「ご理解頂きありがとうございます。今回は特別にチェックアウトなさるさいお土産をお渡しさせて頂きます。チェックアウト時間は午前7時30分となっております。チェックアウトなさる際、鍵を閉めた後その鍵を上に投げてください。それがチェックアウトのサインでございます。遅れますと過去に取り残されますのでご注意をではあちらのエレベーターをご利用ください。部屋番号は113、こちらが鍵でございます」

鍵を受け取るとエレベーターに乗り、部屋まで来た。

千花「113ここだ。でも過去に戻るってどういうことだろう」

ガチャ

部屋に入ると勉強机と参考書がたくさん入っている本棚、ベットがあった。

千花「あれ、この部屋どこかで…わ、私の部屋だ。実家の。ウソ、本当に」

勉強机の上にあった鏡を見る

千花「若い、若い頃の私。でもいつの頃だろ」

トントンと部屋を叩く音

千花母「千花ちゃん、明日のセンター試験頑張ってね。一応お夜食部屋の前に置いておくから。でも早く寝るのよ」

千花 “ママの声だ。今センター試験って…という事は私は高校3年生の時、センター試験前に戻ってる”

母「千花ちゃん、大丈夫?何かあった」

千花「う、うんうん。大丈夫だから、後で食べるね」

母「ママはもう寝るからおやすみ」

千花「おやすみ」

一旦勉強机に座って思い出す

千花「こんな感じだっけ〜懐かしいなぁ。うわぁこんな問題解いてる。あれそういえばこの服私が高校の時にパジャマにしてた服だ。あの時懐かしいと思ってたのてそういうことか」

懐かしくなって机の引き出しを開ける

千花「あっ、このパンフレット…」

本当は行きたかった大学のパンフレット

千花「そういえば、結局言えなかってけ」

昔の記憶が蘇る

私の家族全員医者で私も将来は医者になることが決まっていた。そんなある時友達の家で少女漫画を読ませて貰った時に感銘を受けて夢が漫画家になることに変わっていた。そして親に隠れながら漫画を描いて中学2年生の時に新人グランプリに黙って応募したんだ。

中学2年生

千花「ただいま」

母「ちょっと千花リビングに」

いつもお淑やかな母が今日だけは違った。

母「あなた漫画描いてたのね」

千花「何でママがそんなこと知ってるの?」

母「さっき出版社から電話があって」

千花「うそ!本当にじゃあ私のさくひ」

母「断っておいたから」

千花「えっ、何で」

母「あなたはお医者さんになるの。それを勉強もしないで漫画を」

千花「勉強をサボってたわけじゃない。ちゃんと両方」

母「両方じゃないの、毎日勉強しないとお医者さんにはなれないの」

千花「私は漫画家になりたいの本当はだから」

母「だからじゃない。いいから部屋に戻って勉強をしなさい」

千花「ママのバカ!!!」

部屋に戻って悔しくて悲しくて苦い思い出がこのパンフレットを通して蘇る。

千花「そこからもう諦めてたけど、本当は漫画が学べる大学に行きたくて…」

椅子をクルクルさせながら部屋を見ていると

千花「あぁこれ、高校入学の時にお願いして買って貰った…そうだこの時間あのラジオだ」

部屋の外に置いてあった夜食を食べながらヘッドホンをしてラジオを聞くことに

ポチィ

佐藤「さぁ始まりました。ここからは私佐藤と」

山本「山本がお送りいたします、いや〜大変でしたね」

千花「懐かしいなぁ、私に唯一許された娯楽」

佐藤「それでは参りましょう。悩み相談解決のコーナー」

山本「では早速ラジオネーム、SUNさんからの悩み」

佐藤「明るいねぇ」

千花「あっこれ私のラジオネーム。明日試験だからこの時だけ聞き逃してたっけ。のちにプレゼントが届いてショック受けたんだよね」

山本「佐藤さん、山本さん、私は高校3年生です。明日センター試験を受けに行きます」

佐藤「試験頑張って」

山本「私は漫画家になるのが夢なのですが、私の家系は全員医者で親は私に医者になってくれと言うのです。そこで相談です。このまま夢を追いかける方がいいのかそれとも親の言う医者になった方がいいと思いますか?と言うことで」

佐藤「うわぁ〜わかるなぁ。俺もさぁ高校卒業したら芸人になりたくて親に言ったのね。その時親はてっきり家の料理屋を継いでくれるって思ってたから、俺の突然の告白に母親はワァンワァン泣いちゃって、親父はブチギレて最悪だったの。
そんな姿見たらさぁ諦めるしかなくて、結局料理が学べる専門学校に入って卒業してから5年ぐらい実家の料理屋を手伝ってたわけ。でもその時テレビみたW-1グランプリ見てやっぱり芸人になりたいと思ってもう一回言ったのね。そしたら認めてくれて、養成所入った時はすでに自分29だったからいけるかなぁと思ったけど今こうやって芸人やってる。勿論自分とこの方は多分全然違うし、だって家族全員医者でしょ。それは物凄い親御さんは期待をしてるんでしょう。漫画家は安定してないし我々と同じ難しい職種だから心配しちゃうかも」

山本「そうですなぁ」

佐藤「かと言って漫画家になる夢を諦めるなって言ってるわけじゃなくて、俺いつも思うんだけど夢を追いかけるってマラソンだと思うのね」

山本「それはなぜ」

佐藤「夢がゴールとしてそれを目指してみんな横並びでスタートする。沿道では応援はしてくれるけどゴールまで引っ張ってくれる人はいないし、同じ道を走っている人も背中を叩いてくれるし、声は掛けるけど同じスピードでは絶対に走ってくれない孤高のレースなわけ。
その途中で必ず障害があってどうしてもリタイアしないといけない時があるかもしれない。でもそのレースにはいつでも帰ってこれて、今は無理かもしれないけどいずれかは再挑戦出来るの。もちろんスタート地点からやり直しにはなるけど。でも諦めたりしない限り夢というレースは消えることなくあなたの参加を楽しみに待ってるから。SUNさんもどっちになるか分かりませんがもし医者になったとしてもあなたが漫画家になりたいと思う気持ちがあり続けるのであれば何歳になろうと権利は持ってますからどうせなら両方なっちまいな」

山本「俺はずっとその夢のレースを最初からブレることなく走ってるぞ」

佐藤「お前はずっとゆっくり手を振りながら歩いてるだけだろ。抜かされっぱなしじゃないか」

千花「ハハハ・・・グスゥ、あれ涙が、漫画家にワタシ…」

そのラジオを聴きながらいつの間にか机で眠っていた。

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ホテルCCW
モニターに映る千花
パソコンの画面
通販サイト KAKOZON
検索:佐々木千花
凛音「これねぇ」
ポチ
発送中
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部屋の中に朝食の香りがしてきた。

千花「うわぁ〜もう朝だ。いつの間にか眠ってたよ」

時間を見ると午前7時20分

千花「あぁそうだ私高校生じゃない、早く戻らないと」

机の上の鍵を取って部屋を出て言われて通り鍵を空中に投げた。

振り返るとホテルに戻っており、服装も着た時と同じものに。

凛音「おはようございます」

千花「おはようございます」

凛音「満足頂けましたでしょうか」

千花「懐かしいことも思い出せましたし、忘れかけてた大切なことも」

凛音「それは何よりです。こちらお客様宛でどうぞ」

千花「箱?」

凛音「当ホテルをご利用いただきありがとうございます。またのお越しをお待ち申し上げております。気をつけてお帰りください」

扉が閉まる。

空を見ると雨は上がり虹が出ていた。

家に帰り、箱を確認する。

千花「トロフィー…」

新人漫画大賞 新人賞 佐々木千花

千花「夢はいつ初めてもか…」 


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