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自分の心の塀を壊した先に見えてくるもの

桜井美奈さんの『塀の中の美
容室』をオーディブルで聴き
ながら、物語の世界にどっぷ
りと引き込まれてしまいまし
            た。
正直なところ、刑務所の中に
一般の人が利用できる美容室
があるという事実自体、私に
    とっては驚きでした。
しかも、そこでカットを担当
    するのは受刑者たち。
刃物を扱う仕事ということで
 最初は不安もよぎりましたが、
物語を通して彼女たちが真剣
に技術を磨き、社会復帰を目
指している姿に、心を打たれ
          ました。


塀の中の美容室
桜井美奈 (著)

『ご』と入力すると『ゴメン
 』と出てきて……『ゴメン。
 今日も仕事でダメになった』
の一文ができあがる――。
 激務が続く番組制作会社で働
         く芦原志穂。
彼女は今日も恋人にデートの
キャンセルを告げるメールを
        打っていた。
 最近では「次はいつ会えそう」
というメールすら届かない。
そんな中、志穂は上司からの
命令で、刑務所の中の美容室
を取材することになるのだが
           ――。
彼女たちは、なぜそこに髪を
      切りにいくのか。
刑務所の中で営業を行う美容
室を舞台にした、感動の連作
          短編集。

塀の中の美容室
桜井美奈 (著)
Amazonより

この小説は、架空の「あおぞ
ら美容室」を舞台にした連作
短編集です。主人公たちはみ
な、日常に悩みや迷いを抱え
        た女性たち。
恋人とのすれ違いに心を痛め
るテレビ番組制作会社勤務の
女性や、家族を失い孤独に生
きる初老の女性、抗がん剤治
療を控えたパーツモデルの女
性など、さまざまな人生の岐
路に立つ人々が登場します。

 彼女たちは「塀の中の美容室」
で髪を切ることで、自分の中
の“何か”と向き合い、少しず
つ前を向く勇気を得ていくの
           です。
美容師である受刑者は、ほと
んど自分を語ることはありま
 せんが、その寡黙な優しさや、
わずかな反応が、主人公たち
の心に静かに寄り添います。
私は、この“語られない”部分
にこそ、作者の巧みな人間描
      写を感じました。

物語を読み進めるうちに、た
だ「刑務所の中の美容室」と
いう珍しい場所を描くだけで
なく、「偏見」や「心の塀」
を壊すことの大切さが、静か
   に胸に響いてきました。
 実際に美容室を利用するには、
守衛所での手続きや通信機器
の持ち込み禁止など、さまざ
まな制約がありますが、それ
以上に大きいのは自分の中に
ある“心理的な塀”なのだと気
       付かされます。

物語の終盤では、美容師とし
て働く受刑者自身の過去や葛
藤にも光が当たり、彼女たち
がなぜここで働くのか、その
人生にも思いを馳せることが
        できました。
髪を切るという行為ひとつに
も、それぞれの強い想いが込
められていること、そしてそ
の想いに丁寧に寄り添う物語
の構成に、私は何度も胸が熱
       くなりました。

この本を通して、私は「希望」
とは自分の心の塀を壊した先
に見えてくるものなのだと感
         じました。
塀の中であっても、外であっ
ても、人は誰しも迷いや悩み
      を抱えています。
そんな私たちにそっと寄り添
い、背中を押してくれるよう
 な、温かく優しい物語でした。

「こんなチャンスがあるとい
 うのは、いいことなんだなぁ」
と、読み終えた今、しみじみ
         思います。
社会復帰を目指す受刑者のた
めの美容室が実在すること、
そしてそこに集う人々の人生
に触れられたことに、深い感
      慨を覚えました。
静かな感動とともに、明日へ
の小さな希望をもらえる一冊
           です。

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………………
自己紹介
noteがスキ
❤️になってきた。より

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