自分の中の“正義”や“やさしさ”
『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 吉凶通り3』
冒頭から衝撃的でした。銭天堂の紅子さんが、何者かの呪詛にかけられて眠りから覚めないまま物語が始まります。いつもは紅子さんの落ち着いた姿に安心していたのに、その不在が世界全体の“軸”を失ったような不安を感じました。
ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 吉凶通り3
廣嶋玲子 (著)
何者かの呪詛により眠りから覚めない紅子。善福書店の店主、二ツ頭善二が紅子のかわりに銭天堂を切り盛りすることになるのだが……。
廣嶋玲子 (著)
Amazonより
✻あらすじ✻
紅子さんの代わりに店を切り盛りすることになったのは、なんと善福書店の二ツ頭善二さんです。
彼が駄菓子屋をどう運営するのか、そもそも「善意の人」らしい彼が銭天堂の謎にどう向き合うのか。。。
物語の中では、銭天堂独特の不思議な駄菓子たちが次々登場しますが、いつもと違う「運営者」の手によって、これまでとは違う“運命”が訪れるような空気です。
◆感想◆
読んでいるうちに、銭天堂の世界が優しさや善意だけではうまく回らないこと、そして「絶対的な正義」と思われた善二さんにも迷いや葛藤がちゃんとあることが、じわじわ伝わってきました。
“紅子”という個性が消えることで、初めて見えてくる銭天堂の「不安定さ」や「不思議さ」が、とてもリアルに描かれていたと思います。
眠り続ける紅子さんが象徴する“失われた安心”と、善二さんが試される“新しい価値観”。
読後は、今まで何気なく信じていた「正しいこと」も、本当はそれだけじゃ上手くいかないんだな――と気づかされました。
それぞれの駄菓子の使われ方も、善二さんの手に渡ることで“いつもと違う空気”が流れます。
私は物語の展開にハラハラしながらも、「銭天堂はやっぱり不思議で奥深い場所だ」と、改めて思い知らされました。
この一冊は、ただのファンタジーでも、不思議なお菓子屋さんの物語でもなく、「人の迷い」や「優しさの難しさ」にまで踏み込んでいる作品でした。
私自身も、自分の中の“正義”や“やさしさ”を見つめ直さざるを得なくなり、本を読み終えたあとも心はまだ不思議な世界をさまよっています。
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