家族の愛と京都狸ファンタジーの愉快な大騒動
『有頂天家族』
矢二郎の井戸蛙に共感しつつも、矢三郎の「面白きことは良きことなり」に前を向く力をもらいました。森見登美彦さんの江戸訛り調が心地よく、読むほど楽しくなる一冊。
有頂天家族
森見登美彦 (著)
登美彦氏史上、これまでになく毛深く、波乱万丈。(登美彦氏談)
「面白きことは良きことなり!」が口癖の矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男。宿敵・夷川家が幅を利かせる京都の街を、一族の誇りをかけて、兄弟たちと駆け廻る。が、家族はみんなへなちょこで、ライバル狸は底意地悪く、矢三郎が慕う天狗は落ちぶれて人間の美女にうつつをぬかす。世紀の大騒動を、ふわふわの愛で包む、傑作・毛玉ファンタジー。
森見登美彦 (著)
Amazonより
著者:森見登美彦
出版社:幻冬舎
発行年:2010年(文庫版:幻冬舎文庫 2012年)
ジャンル:ファンタジー小説/京都舞台/家族物語
表紙:狸のユーモラスな雰囲気が漂うイラスト。
概要
舞台は現代の京都。狸・天狗・人間が入り乱れて暮らす世界で、狸の名門・下鴨家の三男 矢三郎 が主人公。
父を失い(しかも狸鍋にされてしまうという衝撃的事件)、残された家族は少し頼りないながらも支え合って生きている。
主要人物
矢三郎:好奇心旺盛で「面白きことは良きことなり」が口癖の三男狸。変化の術も得意。
矢一郎:長男。真面目すぎて不器用。
矢二郎:二男。失恋のショックで蛙に変化したまま井戸暮らし。
矢四郎:末っ子。無邪気で素直。
弁天:かつて天狗に見込まれた美しい人間の女性。妖艶で自由奔放。
下鴨総一郎:亡き父。狸界の名士だったが、狸鍋にされてしまう。
夷川家:ライバル狸一族。陰湿で策略好き。
✻あらすじ✻
父を失った下鴨家は、狸社会での地位を巡って夷川家と対立。矢三郎は落ちぶれた天狗・赤玉先生に仕えつつ、兄弟や母と共に京都の街を駆け巡る。狸鍋、天狗の恋、狸同士の権力争いなど、喜劇と悲劇が交錯しながら物語は大団円へ向かっていく。
印象に残った言葉
「面白きことは良きことなり」
矢三郎のこの言葉は、ただの口癖以上に生き方そのものを示している。人生に不条理や悲しみがあっても、笑って受け止め、そこに楽しさを見出そうとする姿勢は心に残った。
また、父が狸鍋になってしまう悲劇を、ユーモラスに、でもしっかりと「家族の物語」として描いている点が森見作品らしい。
◆感想◆
狸たちのドタバタ劇は軽妙で、京都の風景描写も味わい深い。けれどもその底には「家族をどう支えるか」「失われたものをどう受け止めるか」という重いテーマが流れているように思いました。
私は矢二郎の「井戸にこもった蛙」という姿に、妙に共感してしまいました。
失敗や挫折から抜け出せず、つい心地よい殻に閉じこもってしまう気持ちが分かるからです。
それでも矢三郎の「面白きことは良きことなり」という言葉に背中を押されるようで、前向きに一歩踏み出す力をもらえました。
そして何より、森見登美彦さんの江戸訛り調の口調が、読み進めるほどに心地よく、楽しくなってしまうユーモラスな文体に包まれると、物語の愛おしさもいっそう深まる気がします。
まとめ・おすすめ
「有頂天家族」は、ユーモアに包まれた家族の愛の物語。
京都を舞台にした摩訶不思議な狸ファンタジーを楽しみつつ、家族や自分自身の生き方を考えさせられる。
おすすめ読者:
森見作品が好きな人(特に『四畳半神話大系』)
京都が好きで、街の空気を小説で味わいたい人
家族をテーマにした物語をユーモラスに楽しみたい人
次に読むなら:
続編の『有頂天家族 二代目の帰朝』、あるいは同じ京都を舞台にした『夜は短し歩けよ乙女』。
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自己紹介
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