人の記憶や感情を映すモノ
『祝福のペリドット』
イギリスから帰国した正義とリチャード。舞台が再び銀座の「エトランジェ」に戻ってきて、シリーズ第5弾を読めることがまず嬉しかった。
宝石商リチャード氏の謎鑑定
祝福のペリドット【ミニ小説つき】
辻村七子 (著)
【ミニ小説つき】イギリスから帰国した正義とリチャード。正義は大学3年生となり、周囲ではそろそろ就職活動が本格化し始めていた。そんなある日、銀座の「エトランジェ」を常連客の乙村が訪れた。乙村は、片想いしていた女性からもらったという桜色のカメオをリチャードと正義に見せる。そして、そのカメオの謎を解いてみないか、と言い出して……? ジュエル・ミステリー第5弾!
祝福のペリドット【ミニ小説つき】
辻村七子 (著)
Amazonより
✻あらすじ✻
あの日、エトランジェの扉を開けると、いつもと変わらない空気が広がっていた。ガラス越しに差し込む光に、リチャードさんの金髪がほんのりと透けて見える。その姿を見ると、僕はいつだって少し背筋が伸びる。
イギリスから帰国して、もうしばらく経つ。大学三年生になった僕の周りでは、就職活動の話題が飛び交い始めている。正直、不安がないわけじゃない。でも、ここに来ると、不思議と落ち着く。
その日、常連の乙村さんがやって来た。手にしていたのは、淡い桜色のカメオ。
「これ、君たちに見てもらいたいんだ」
乙村さんは、片想いの相手から贈られたというそのカメオを差し出した。
リチャードさんが白手袋をはめ、慎重にそれを手に取る。その横顔を見ていると、宝石というのはただ美しいだけの存在じゃないんだと、いつも思い知らされる。持ち主の想い、歴史、そして時に隠された真実が、そこには眠っているのだから。
「桜色のカメオ――珍しいですね」
低く柔らかな声でそう呟くリチャードさんに、僕の胸は少し高鳴った。
宝石に秘められた謎を解き明かす時間が、また始まる。
ジュエリーはただの装飾品じゃない。持ち主の心を映す鏡であり、時には人生を左右するほどの存在になる。そう実感できるのは、リチャードさんと一緒に、この場所で向き合っているからだ。
◆感想◆
正義も大学3年生。周囲が就活に向けて動き出す中、自分の未来にまだ明確な答えを出せずにいる彼の心境が、すごくリアルに伝わってくる。リチャードという存在がいることで、正義はただの“普通の大学生”以上の経験をしているのだけど、その分、迷いや葛藤も濃く描かれているように思えた。
今回の依頼人は常連の乙村さん。彼が持ち込んだ「桜色のカメオ」が物語の中心になる。単なる美しい宝飾品ではなく、そこに込められた人の想い、過去の出来事、そして隠された意味……リチャードが宝石を通じて語る物語は、毎回ながら本当に胸に響く。
ジュエリーがこんなにも“ミステリー”になるのか、と改めて驚かされた。
読み終えたときには、ペリドットが「祝福の石」と呼ばれる理由に納得してしまった。
人と人との縁や想いをつなぐものとして、宝石がここまで鮮やかに描かれるのは、このシリーズならではだと思う。
そしてリチャードと正義の関係性も少しずつ深まっていて、二人のやり取りに温かさと切なさが同居しているのがたまらない。
📖✨
ジュエル・ミステリーシリーズ、やっぱり続けて読んで正解。
「宝石=美しいモノ」という以上に、「宝石=人の記憶や感情を映すモノ」だと実感させてくれる一冊だった。
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