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彼はただひたすら夜道を歩く

5月中旬、空は18時を過ぎ
てもまだ明るく、日が長くな
ったこ今日この頃私は寺地は
るなさんの『いつか月夜』を
     手に取りました。
日中のような爽やかな気分の
中で読み始めたこの小説は、
思いのほか静かで、やさしい
   余韻を残す物語でした。


いつか月夜
寺地はるな (著)


「一緒に歩かない?」 会社
員の實成は、父を亡くした
後、得体のしれない不安(
「モヤヤン」と呼んでいる)
 にとり憑かれるようになった。
特に夜に来るそいつを遠ざけ
るため、とにかくなにも考え
ずに、ひたすら夜道を歩く。
そんなある日、会社の同僚・
塩田さんが女性を連れて歩い
   ているのに出くわした。
中学生くらいみえるその連れ
の女性は、塩田さんの娘では
      ないという……。
やがて、何故か増えてくる「
   深夜の散歩」メンバー。
元カノ・伊吹さん、伊吹さん
の住むマンションの管理人・
         松江さん。
皆、それぞれ日常に問題を抱
えながら、譲れないもののた
 め、歩き続ける。いつも月夜、
      ではないけれど。

いつか月夜
寺地はるな (著)
Amazonより

主人公の實成は、父を亡くし
た喪失感と、それに伴う「モ
ヤヤン」と名付けた不安に悩
      まされています。
夜になると押し寄せるその不
安を振り払うため、彼はただ
 ひたすら夜道を歩き続けます。
その姿は、私自身が何かに悩
んだとき、理由もなく外に出
 て歩きたくなる心情と重なり、
   とても共感できました。

物語は、實成が偶然出会った
同僚・塩田さんと、その連れ
の少女との不思議な縁から始
         まります。
 やがて、元カノの伊吹さんや、
マンションの管理人・松江さ
んといった個性豊かなキャラ
クターたちが、夜の散歩仲間
  として加わっていきます。
みんなそれぞれに、日常の中
で譲れないものや、抱えきれ
ない悩みを持ちながら、ただ
一緒に夜道を歩く――その時
間が、少しずつ彼らの心をほ
ぐしていく様子が、とても丁
   寧に描かれていました。

私はこの本を読みながら、「
一緒に歩く」という行為の持
つ力について考えさせられま
           した。
言葉にしなくても、ただ隣に
いて同じ歩幅で歩くことが、
どれほど心を支えてくれるの
            か。
月夜ではなくても、誰かと歩
くことで、少しだけ前向きに
          なれる。
そんなささやかな希望が、こ
 の物語には詰まっています。

また、寺地はるなさんの文章
は、派手さはないけれど、静
かに心に染み入るような優し
       さがあります。
読後、まるで夜風に当たった
あとのような、すっきりとし
   た気持ちになりました。

『いつか月夜』は、日々の生
活に疲れたり、理由のない不
安に押しつぶされそうになっ
たときに、そっと寄り添って
      くれる一冊です。
 私もまた、何かに悩んだとき、
この物語の登場人物たちのよ
うに、夜道を歩いてみたくな
         りました。

これから日が長くなり、夜の
    散歩が心地よい季節。
ぜひ多くの方に手に取ってほ
しい、静かな力を持った小説
           です。




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❤️になってきた。より

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