日常の疲れを癒す「夜の灯」
『キッチン常夜灯』
キッチン常夜灯(角川文庫、長月天音著)を読んで、夜の街角にそっと灯る小さなビストロの扉を開くような気分になった。素直に言えば、みもざ店長のように日々忙しさに追われる私も、時には「戦闘モード」をオフにして、心が緩む場所で肩の荷を下ろしたいと思ってしまう。
キッチン常夜灯
長月天音 (著)
住宅街の片隅に佇む小さなビストロ、今宵もオープン。
街の路地裏で夜から朝にかけてオープンする“キッチン常夜灯”。チェーン系レストラン店長のみもざにとって、昼間の戦闘モードをオフにし、素の自分に戻れる大切な場所だ。店の常連になってから不眠症も怖くない。農夫風ポタージュ、赤ワインと楽しむシャルキトリー、ご褒美の仔羊料理、アップルパイなど心から食べたい物だけ味わう至福の時間。寡黙なシェフが作る一皿は、疲れた心をほぐして、明日への元気をくれる――共感と美味しさ溢れる温かな物語。
長月天音 (著)
Amazonより
物語に登場するキッチン常夜灯は、静かでいて温かい空間。
不眠気味のみもざさんは、ここで農夫風ポタージュを味わいながら、次第に心がほぐれていく。
私もページをめくりながら「今夜は、あの優しいポタージュをひとさじ啜りたい」と思った。
素材の味がぎゅっと詰まったスープは、読者の私にも「お疲れさま」と囁いてくれるようだった。
またシャルキトリーの盛り合わせは、赤ワインと一緒に堪能したい一品。
物語の中で静かに、丁寧に供される料理が、料理人(寡黙なシェフ)の姿と重なり、ひと皿ごとに物語と人生の奥行きを感じる。
ご褒美の仔羊料理、焼きたてのアップルパイ――どれも私の心に「これが食べたい!」と呼びかけてくる。
疲れた体に優しく染み渡る料理の数々、食の描写ひとつひとつにうっとりする。
登場人物たちも、まるで本物の常連客のような親しみやすさ。
みもざさんは私の分身のように思え、悩みや小さな幸せをひと皿ごとに噛み締める気持ちに共感する。
寡黙なシェフの優しさ、食べ物の向こうに流れる穏やかな時間も魅力的だ。
この本は、日常の疲れを癒す「夜の灯」そのもの。
料理を主役に据えながらも、ビストロという場所に込められた温もり、人と人との距離感、そして明日へのちょっとした背中押しがとても心地よい。
小洒落たキッチンで味わう一皿の幸福、私も自分のためにそっと用意してみたい――そんな読後感が残った。
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自己紹介
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