先生のための患者
これを思いついたのはある実話がもとになってます。親を連れて通ってた開業医さんから言われた、嫌なら来なくていいんですよ!という言葉。
私も言葉がわるかったのかもしれない。
けど、その言葉は医者として言ったらダメだろうと感じた。
そして、もしかして医者は患者をほんとは選びたいのだろうか?って。
「私なら医師のよき患者になれると思います」
「多くの先生とよい関係を築いてきました」
オフィスビルのとある一室で面接が行われていた。
「わかりました。ではあなたはどのような疾患を持ってますか?」
「私は今現在、血圧高め、コレステロール過多で治療薬を頂いております」
「腰痛です」
…
「採用です」
医師保護法案が可決され、医師にむけた様々なサービスが登場し始めた。
今この面接は、医者のための患者を派遣している
医師保護協会の面接の様子である。
様々な患者を相手にするうちにそれを恐怖に感じストレスで医師を辞めるものもいる。
そのような医師のメンタルヘルスを考えた患者派遣業。
あらかじめ医師の要望を聞き取りその要望に叶うよう接する患者を派遣するのだ。
もちろんハラスメントまがいの要望はなしである。派遣会社のほうでも医師と面談する。
少し高級な患者派遣会社だとサービス利用医師からの紹介がなければ申し込みを受付けしない会社もある。
患者はサードオピニオン的なものとして利用してもらい、処方してもらった薬は派遣会社が買い取る場合もある。
医師保護法によってこれまではあり得なかったことが可能になった。
もう少し話そう。
待ち時間は2時間から手当てがついたりする。
そう。大事なことだが、窓口で支払う医療費は返却される。そのへんの保護法の手続きは派遣会社のほうで行う。患者は一時立て替えておく形となる。
派遣される患者の数は時間ブロック型にした場合、ほぼ完全に派遣患者のみとなるため「午前の受付は本日終了しました」など早めに受付を終了することが多い。分散型の場合は事前に決められた人員が決められた頃合いの時間に受付することになっている。
大概がこれである。
もちろん医師も派遣患者であることは事前資料でわかるようになっている。
「〇〇社派遣の〇〇と申します。本日は診察のほうよろしくお願いします」といった感じで患者は医師の診察を受ける。
待合室などでほかの患者には知られないよう努力することを求められる。
大概の医師が利用するようになってからはそれを知ったところで他の患者はなんとも思わなくなったが。
とある診察室。
「きみ、派遣の患者だよね?」
「あ、言い忘れてました!はい、〇〇会社から派遣されてきた小杉と申します」
「そうなんだよね。んー、今撮ったCTの検査結果なんだけど腎結石大きくなってるね」
「えっ?あーやはりそうですか…かかりつけ医にも指摘されてました」
…
「わかってるならいいんだけど、これは早めに手術したほうがいいと思うよ」
「ご指摘ありがとうございます」
…
不思議に思った。
なぜこんな普通に見える医師が派遣患者を利用しているのか?
大概がひとくせふたくせある医師の利用が多い。
「言っただろ?!」
「口ごたえするな!私の診断に文句でもあるのか?!え?!」
やはり情緒不安定な医師が目立つのだ。
こんな世の中では無理もないだろう、こちらも仕事だからと割り切って叱られる。
事前にそのような傾向があることは知らされている。
しかしこの医師はこれまで見てきた他の医師とは明らかに違う印象を受けた。
事前情報としては声の大きい患者は困るとだけあった。それだけのコメントにどれほどの意味が詰まっているのか想像するのは難しい。
診察が終わり帰ろうとする私に医者から声がかかった。
「また、来て下さいね」
「えっ?あ、はい」
一部日当契約をのぞき、契約としては打ち切りにならない限り続くのだがあえて、また来て欲しいとつげられた。
…
数日が経ち、腎臓結石を取り除く手術に向けて総合病院でさまざまな前準備の検査が行われた。
その合間に私は派遣患者としてれいの医師のところへ出向いた。
…
病院は閉院してた。
お知らせ
拝啓 患者の皆様へ
平素より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。このたび、私(院長名)は一身上の都合により、令和6年6月10日をもちまして当院を閉院する運びとなりました。
これまでご愛顧いただいた皆様には、心から感謝申し上げます。突然のお知らせとなり、皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。
…
すぐ派遣会社へ連絡をいれた。
病院が閉院になってることを告げると、派遣会社は、たまにそういうことがあることを伝えてきた。
…
遅かったらしい。
しかし…
帰ろうとしたところ医師が私服で立っていた。
「会えてよかった」
「先生!?病院やめたんですね?!驚きましたよ」
「いつかやめようと思ってたんです(笑)けれども医師は続けますよ。現代版フリーランスになりました。私はこうして一日一人二人の患者さんと世間話でもするように診察します。今はそれが出来る世の中になりました。診察する患者は少ないし、必要な医療機器は協力病院に出入りすることで使えます。なので私だけの病院はなくても構わないんですよ」
…
そんなことでやっていけるのだろうかと思った。
「また派遣会社さんを使わせてもらってます。私にあった患者さんを何名か派遣してもらい、そのへんのベンチなんかに座って診察させてもらってます」
