バケモノ
あれは中学の頃だったろうか。
同級生の間で占いが流行った。
学校帰り、占い記事が特集されてる雑誌を街に一軒しかない本屋で買った。
ネットがない時代だった。
落とさぬよう雑誌を小脇に抱え雪深い道を家に急いだ。
占い。。
そう、この本の占い記事を読めば私の人生が分かる…
自分が何者なのか分かるのだ。
どこから来てどこへ向かっていく者なのか・・・
本屋からの山道、降り積もった雪道に足をとられながらやっとの思いで家に戻った。
家は、まだ誰も帰ってないらしく室内は相当寒かった。
薪に火を🔥つけるより先、買ってきた雑誌をめくる。
これから私は自分の人生に踏み入ることになる
…
部屋は寒かったけど、体も何もかもが燃えるように熱く、胸の高鳴りを抑えられなかった。
ページをめくる手が震える。
手相占いの絵面が目にはいってきた。
これが手相占いか・・
一旦目を閉じ、気持ちを落ち着かせてから文章を読み始めた。
自分の手を眺める。
文章を読む。
絵面を見る。
自分の手を凝視する。
…
ほどなくして私のそんな一連の動作が止まった。
雑誌を冷えた床に置く。
…
鼓動の高まりはさらに激しいものとなっていた。
自分の手のひらを隠すように胸にあて、なにもない部屋の空間を見ながら震えた。
私は知ってしまったのだ。
生命線というものを。
そして自分の生命線に終わりがないことに気づいた。
ばけもの…
私は化け物だったのだ。
西洋で言うところのドラキュラが脳裏に浮かび、異国の血が我が家にはいっていないか仏間から先祖代々の系譜が綴られている巻物を出してきて床に広げた。
ない。
鎌倉時代まで遡ってみたが、その類の記述はなかった。
家門の転機は平安前か?
ともかく家のものが知ってはまずいと思い雑誌を天井裏に隠した。
ひょっとしたら手をよく洗えばほんとの手相が現れるのかもしれないと洗剤で手を洗ってもみた。
無駄だった。
相変わらず私の生命線はくっきりとしたものだった。
その日は手相占いのことで頭がいっぱいになり家人の話も上の空、言葉少なに眠りについた。
翌日も学校では同級生たちが相変わらず占いで盛り上がっている。
私はそんな同級生たちから距離を置くようになった。
間違って手相を見られてしまわぬようポケットに手をいれることが増えた。
私は化け物。
事実を知ってから、なんとなしに日差しが怖くなり、陽の光にあたることを避け、日陰で過ごすことが増えた。
やがて大人になり、なんとなく家族もできた。
家族にも手相占いのことを話すことなく歳月だけが過ぎた。いつか話さなくては…
そんなことを思いつつ、やがて孫ができ、私も年老いたことに気づいた。
…化け物もそれなりに歳をとるものなのか。
太陽の日差しのなか庭で遊ぶ孫たちをふすま奥の日陰から見守る。
家門の転機はこれからなのか。。
落花流水の変…
そのとき、この子たちにはなんと説明すべきか…
自分の手相を眺める。
この先何が起こるのか私には分からない。
