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こどもガチャ③

ver.裕太★★

〝さぁ、実験の時間だよ〟

俺の名前は相楽 奏斗(さがら かなと)高校3年生だ。

幼い頃からの親父からのスパルタ教育で、医大を目指し猛勉強中だ。

そんな俺に、最近弟が出来た。

裕太(ゆうた)。8歳。
大人しく消極的だが、俺の後にいつもくっついて、することを真似してきてめちゃくちゃ可愛い。

と言っても、血は繋がっていない。
母親は、俺が幼い頃に事故死。
科学者の親父は研究馬鹿で、女っ気なんて全くない。

ではなぜ、弟ができたかというと。

ある日親父が養子に迎えてきたのだ。

どこの施設から来たかとか、聞いてもはぐらかされるし、裕太もよく分かっていないのか知らないの一点張り。

まあ、そんなことどうでも良いか!

ずっと弟が欲しかったんだからな!

裕太「お兄ちゃん、この御本読んでもいい?」

俺が受験勉強をしていると、裕太が俺の部屋の本棚から何冊かの本を手に取った。

それは俺の高校の教科書や、辞典、医学についての本等、5歳児が読むなんて到底思えない本だ。

奏斗「別に良いけど、難しすぎて裕太には読めないと思うぞ?漢字も多いし…」

裕太「大丈夫、お兄ちゃんが学校行ってる間にお勉強して大体のは読めるし、分からなかったら調べる」

奏斗「お、おう。それなら大丈夫…なのか?」

裕太「うん…」

裕太は凄く頭が良く、俺は勉強の合間によく裕太に簡単な漢字の書き取りや計算を教えていた。

それが楽しかったのか、そこからは独学で次々と難しい問題に挑戦しており、そのうち俺も追い越されるのではないかと思う程だ。

子どもらしくないんだよな…。

何かを悟っているというか、落ち着きすぎてるというか…。

裕太「お兄ちゃん…」

奏斗「!?な、なんだ?」

裕太は俺の勉強机の横にクッションを持ってきて、そこへ置き

裕太「お勉強の邪魔しないから、お兄ちゃんの隣で読んでも良い…?」

と、問いかけてきた。

その言葉に俺は嬉しくなり

奏斗「お、おう!勿論!」

と、返事をした。

ちょこんとクッションの上に座る裕太の頭を優しく撫でた。

奏斗「分からないとこあったら、いつでも聞いていいからな」

そう言うと、裕太はにっこりと微笑み

裕太「うん、ありがとう」

と返した。

まあ、裕太がどうしてこんなに勉強が好きなのか分からないけど、学ぶことは良いことだしな。

それに、可愛い弟には変わりないんだから。

そう思いながら、裕太を眺めていると、ある事に気がついた。

奏斗「裕太…?それ、なんだ?」

裕太の腕に無数の注射痕があったのだ。

あれ?

こんなもの最初からあったっけ?

裕太は、本を見つめる目を逸らさずに

裕太「…僕、昔から体が弱くてずっと治療してたから」

と、答えた。

奏斗「そんなこと初耳だぞ!大丈夫なのか?」

裕太「うん、お兄ちゃんが学校に行った後、お父さんが病院に連れて行って治療してくれてるんだ…もうすぐ治るから、大丈夫だよ」

奏斗「…そうだったのか」

裕太「ごめんね、お兄ちゃんのこと心配させたくなかったから」

奏斗「いや、兄ちゃんも怒鳴ってごめんな」

裕太が病気?

そんなこと全く気が付かなかった。

医者を目指しているくせに、本当に情けない。

奏斗「裕太!」

裕太「!?な、なに??」

俺は裕太の手を取り、目線を合わせた。

裕太はビックリして目をパチクリさせている。

奏斗「裕太のことは、兄ちゃんが絶対に守ってやるからな!何かあったら絶対に力になるから!」

一人っ子で、親父も家にほとんど居なかった俺にとってやっと出来た家族だから。

俺は絶対にこいつを守りたい。

大切にしたい…。

裕太「…絶対?」

奏斗「ああ」

裕太「指切りしてくれる?」

奏斗「ふっ、なんだそれ。」

裕太の子どもみたいな発言に、思わず笑みが浮かぶ。あ、子どもか。

俺は自分の小指を裕太の小指へと近づけ、絡めた。

奏斗「約束するよ」

裕太「うん」

その日から俺は、今まで以上に裕太と一緒に過ごす時間を増やした。

勉強、風呂、就寝も一緒にした。

休日には裕太を科学博物館へと連れて行ったりした。

俺たちは、〝本物の兄弟〟になっていったんだ…。



そして、時は流れ…

裕太「お兄ちゃん、合格発表一人で行ける?」

奏斗「大丈夫だって。それよりお祝いの準備しててな!」

裕太「分かった」

俺は大学の合格発表の日を迎えた。

裕太に手を振り、会場まで歩く。

正直自信はある。

まぁ、模擬試験の判定も良かったしな。

そんなことを考え、会場へとたどり着いた。

大きな掲示板の前で、喜んだり落ち込んだりしている人達がいた。

奏斗「…うっわ、緊張してきた」

ドクン…ドクン…と高鳴る心音を感じながら、自分の番号を探す。

奏斗「……」

1つ1つ、番号を見ていく。

奏斗「…あれ?」

俺の番号が、無い…。

何かの間違いだと思い、もう一度探す。

無い。

もう一度。

無い。

何時間がたっただろう、俺は頭が真っ白になりながら帰路へついていた。

玄関を開けると、裕太が俺に抱きついてきた。

奏斗「ゆ、裕太?」

まさか、裕太…俺が落ちたことに気がついて、励ましてくれようとしているのか?

奏斗「裕太…ありが」

裕太「おめでとう、お兄ちゃん…!」

え?

裕太「凄いね!医大生なんて!」

あ…そうだ、俺、出る時に

『お祝いの準備しててな!』

そう言ったんだった。

奏斗「…裕太、あのな…」

裕太「こっち!早く!」

裕太が俺の手を、リビングの方へと引いている。

奏斗「ちょ!裕太??」

いつになく強引な裕太の姿に、俺は困惑気味になった。

そして、リビングの扉を開いた瞬間、俺は持っていた鞄を床へと落とした。

〝合格おめでとう!〟
の文字の垂れ幕。
手作りの飾りで彩られた部屋。
そして、テーブルにはホールケーキが置かれていた。

奏斗「裕太…これは…」

裕太「座って座って!」

裕太が強引に俺を椅子へと座らせる。

裕太「わーーい!お兄ちゃんおめでとー!」

そして、俺にクラッカーをパーンと鳴らした瞬間。

ブチッ。

俺の中で、何かがキレた。

奏斗「ふっざけんじゃねー!!!!!」

気が付いたら俺は、裕太に平手打ちをくらわせていた。

裕太の軽い体は吹き飛び、床に叩きつけられた。

その瞬間、俺は正気に戻り

奏斗「ゆ、裕太、ごめん!大丈夫か!?」

と、駆け寄った。

気絶をしているようだ。

その時、

キィ…と、扉が開き、

「あーあ、弟にそんなことをして…」

と、滅多に顔を合わさない父親が入ってきた。

奏斗「お、親父…」

親父は無表情で俺へと近づき

父「お前は、不良品だ」

と、呟いた。

そしてその瞬間、何かを嗅がされ、俺は意識を失ってしまった。




奏斗「…ここ、は?」

目が覚めるとそこは、真っ白な無機質な部屋のベットの上だった。

手足が拘束されているのか、身動きが取れない。

父「お目覚めかな?」

奏斗「!?」

声のした方を振り向くと、そこには父親が居た。

奏斗「ここは…?」

父「ここは、私の研究所の一室だよ。山奥の施設でね。完全防音だから、どれだけ叫んでも誰も…来ない」

そう言った父の手には1本の注射器が握られていた。

その瞬間、今まで経験したことのないような恐怖心が俺の感情を支配した。

奏斗「な、なんだよ、それ!!」

父「ああ、これかい?これはある薬の試作品でね…」

奏斗「薬?」

父「ああ…。薬の実験に今までマウスを使っていたのだが、どうしても人体に試したくてね。」

その時、ハッとした。

奏斗「お前、まさか!!裕太のあの注射痕は!!!」

父「察しが良いね。あの子は私が実験様にとある経路で引き取ったんだ。この薬は危険でね、大人に投与すると死に至る可能性があるんだよ」

奏斗「お前、そんな危険な薬を裕太に…」

父「ああ、でもそれも終わりだ。新しい実験体が見つかったからね」

そう言いながら、父は俺の腕へと注射針を当てる。

奏斗「や、やめろ!!!やめてくれ!!!」

父「お前には失望したよ。父さんの実の息子なのに、大学には落ちるわ、弟には手を上げるわ」

奏斗「そ、それは…!」

父「あの出来損ないの女の血が入っているからかな」

父はそう言い、俺の腕に注射針を刺し、ゆっくりと薬を注入した。

父「母さんは、すぐに死んだけどお前はどうかな…?」

奏斗「お前、まさか…」

そして、薬が全て俺の体内へと入った。

父「さあ、実験の時間だよ…」



10年後、研究所。

ん…?

なんだ?

俺は、寝てたのか?

あ、周りがぼんやり見える…

誰だ…?

父「お、僅かだが薬に反応を示しているな」

あれは、親父?

でもおかしいな、あんなに老けてたか?

白髪もシワも増えてるじゃないか。

ん?

隣に居るのは…

俺は父の隣に居る男を見た。

なんだか、誰かに似ている…20歳くらいの青年。

父「裕太が研究に加わってくれたおかげで、だいぶ楽になったな」

裕太「お父さんの子として当然のことだよ」

裕太!?

裕太なのか!?

て、ことは俺何年寝てたんだ!?

…、あれ?

声が出ない。

体も動かない。

どういうことだ?

父「それにしても、昔お前をこどもガチャで引いた時は★★だったから実験体にしたのに…実の息子より優秀になるとはな」

裕太「それだけ努力をした結果だよ。兄さんは受験の途中から僕にかまってばかりで勉強の手を抜いていたからね」

裕太…?

何、言って…

こどもガチャ?★★?

どういうことだ?

父「全く、恐ろしいな。兄と立場を取って代わるとは。全ての行動は計算だったのか?」

裕太「想像に任せるよ。まあ、植物人間のような状態になってしまった兄さんには悪いけど」

父「あの薬は子どものお前だったから、影響が薄かったからな。中途半端な年齢だったこいつに投与した結果だ」

裕太「もう、動くことも喋ることも出来ないからね…」

その瞬間、俺は全てを理解した。

全ては、裕太の作戦だったんだ。

俺の可愛い弟を演じ、俺から勉強の時間を奪わせた。

そして、あの日わざと裕太は俺を怒らせ、父からの期待を完全に無くしたんだ。

絶望感が俺の心を支配する。

裕太「じゃあ、そろそろ戻ろうか」

父「ああ、そうだな」

扉の方へ行く2人。

ドアのぶに手をかけた時、裕太がこっちを見て呟いた。

裕太「約束、守ってくれてありがとう」








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