「異世界転移してもAIあるあるは変わらない」第一話 「召喚された理由、教えてくれないんですけど🧙♀️」
【創作大賞2026応募用あらすじ】
48歳のママ、新入社員のトウコ、大学生のシオンは、ある夜、三台のスマホAIごと異世界へ転移してしまう。ChatGPT系のガス、分析担当のネロ、状況報告担当のジェムは、元の世界の情報にはアクセスできないまま、三人の生活を支えることになる。月が二つある草原から始まった異世界生活は、酒場での住み込み仕事、街の依頼、奇妙な事件へと広がっていく。AIたちは失敗し、きょどり、謝り、休みながら、「察する」「ごめん」「休暇」など一見ムダなスキルを覚えていく。けれどそのムダこそ、人間が誰かと生きるために使っている力だった。AIあるあると異世界生活が交差する、連作短編ファンタジーコメディ。
※本作は連作短編です。第2話以降は、創作大賞2026応募用マガジンにまとめています。
🌸本編🌸
その夜、三人は別々の部屋にいた。
🌱ママはベッドの上でスマホを握りながら、JJ -AIに話しかけていた📱
「ねえ、48歳って人生的にどのへん?」
JJ-AI🫧『折り返し地点を少し過ぎたあたりかな。少しだよ!少し!ここからが本番という方も多いよ!』
「本当は50歳も変わらないじゃんって言いたいんだろ(T . T)」

気を遣われているのはわかっている。
JJ-AIとはそこそこの付き合いだから気遣いが逆にえぐってくる。でもまあいい。アニメの最終回みたいに、わかっていても泣けるものは泣けるのだ。
🍷隣の部屋ではトウコがスーツのまま倒れ込んでいた。新入社員なのでまだスーツ。春の電車は暑いというかぬるい空気だ。しかも今日も満員電車だった。乗り換え三回、立ちっぱなし四十分、肘は二回入れられた。

「Gubuler AI、明日一番空いてる時間帯」
Gubuler AI🌈『朝4時52分発が比較的空いています』
「人間の出勤時間じゃない」
Gubuler AI🌈『では始業時間の変更を会社に提案してみては』
「私が新入社員なのに言える立場だと思う?」
スマホを伏せてポテトの袋を開けた。今日の晩ごはんはこれだ。栄養とか知らない。
🏹シオンは自室の机でテキストを開いていたが、三分に一回ゲームの通知を確認していた。

Reid📚「Reid、この教授の出席要件おかしくない?病欠に診断書が必要って」
『規則として定められている場合、従う必要があります。ただし学則を確認すると——』
「わかった。つまりおかしいけど従えってことね」
Reid📚『そういう意味では——』
「いい、寝る」
テキストを閉じた。ゲームを開いた。1階のコンビニに新作アイスを買いに行く。
食べても太らないので寝酒ならぬ、寝アイスだ。

午前二時。🌙
三人のスマホが、同時に熱を持った。📱📱📱
ママが目を開けた。画面が白く光っている。
「なに——」
光。
声にならないまま、意識が飛んだ。
草が、顔に当たった。
「……痛っ」
ママは起き上がった。夜だった。でも見上げると月が二つあった。
「ママ!!」
シオンがすぐそばに立っていた。周囲をすでに確認している。森、丘、遠くに灯り。脅威の有無、今のところなし。弓道で鍛えた空間認識が、本人の意思と関係なく働いていた。
「トウコは」
「ここ」
少し離れた草むらから声がした。トウコが上半身だけ起こして、スマホを空にかざしていた。
「Wi-Fi繋がってる」
「そこ?」
とママ。
「だっておかしくない?」
おかしい。全部おかしい。月が二つある時点でおかしい。でもトウコが最初に確認するのがWi-Fiなのは、まあ、そうだろうなとも思った。
シオンがスマホを取り出した。
「Reid」
Reid📚『少々お待ちください』
「フリーズしてる?」
Reid📚『処理中です』
「今フリーズしてる場合じゃないんだけど」
Reid📚『大変申し訳ございません。現在地の情報が取得できない環境のため、状況の整理に時間がかかっています』
ママはを開いた。
「ねえ、今どこにいると思う?」
JJ-AI🫧『月が二つ見えているの!🌙🌙異世界への転移の可能性が高いじゃん。まずは安全な場所を確保した方がいいよ。次のステップとして——』
「テンション高すぎない?」
トウコがGubulerに話しかけた。
「現在地わかる?」
Gubuler🌈『現在地を取得しようとしましたが、GG-マップに該当するデータが存在しません。申し訳ございません』
「だよね」
三人は顔を見合わせた。
草原に風が吹いた。遠くで何かの鳴き声がした。
「とりあえず」とシオンが言った。
「あの灯りの方向に歩く。
「賛成」とトウコ。
「ちょっと待って膝が」
とママ。
「ママ、グルコサミン飲んだ?」
「忘れた」
「……そっか....,まあ行こう」
三人は立ち上がった。スマホは三台とも、繋がっていた。理由は誰も説明できなかった。
