異世界AI十三話「ジャリカレー🍛、異世界初上陸」

翌朝、トウコとシオンは店主に告げた。
「母を連れてきました」
「歓迎するよ。どんな——」
扉が開いた。
黒いローブを着たママが入ってきた。
リュックを背負っていた。
「よろしくお願いします!」
店主が固まった。
トウコとシオンが小声で言った。「昨日着替えたはずなんですが」
「朝起きたら着てました」
「そうですか」
店主がおそるおそる聞いた。
「……料理は本当にできるのか」
「任せてください」とママが胸を張った。
ガスが震えた。
ガス🫧『ママさんの料理は唯一無二だよ!!他にはない味だって!!』
「褒めてる?」
とシオンが小声で言った。
「方向性が読めない」
とトウコが小声で返した。
ママが厨房に立った。
慣れた手つきで野菜を切り始めた。
大きかった。
「ママ、もう少し小さく」とトウコ。
「食べ応えあっていいかなって」
「めんどくさいだけでしょ」
「……食べ応えあっていいかなって」
鍋が煮えてきた。いい匂いがした。
店主が厨房をのぞいた。
「なんだこの色は。見たことない」
「カレーっていうんです」
とシオンが言った。
「酒に合うんですか」
「合います」とトウコが断言した。
皿が出てきた。
店主が一口食べた。
目が丸くなった。
「……うまい」
「よかった」とトウコが息をついた。
「なんだこれは。甘いような辛いような」
「スパイスです」とシオンが説明した。
「このスパイス、どこで」
「ママのリュックから」
「異世界まで持ってきたのか」
「ソロキャンの準備してたので」
店主が黙って二口目を食べた。
しばらくして、スプーンが何かに当たった。
ゴリっという音がした。
店主がスプーンを止めた。
「……肉か?」
「違います」とトウコが静かに言った。
「では何だ」
「ルーです」
「とけてないのか」
「仕様です」とシオンが答えた。
店主がジャリっと噛んだ。
もう一度ジャリっと噛んだ。
「……このジャリジャリした塊は、必要か?」
ママとガスが同時に答えた。
「「仕様です!!」」
店主は三口目を食べた。
なぜか皿は空になった。
