異世界AI十五話「ごめん、が最適解でした」

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朝、小屋の外でネロとガスが揉めていた。
トウコのスマホとシオンのスマホが、交互に震えていた。
ネロ📚『詠唱は不要です。敵と遭遇した時、即時発動が優先される。詠唱している間に攻撃を受ける』
ガス🫧『でもママの夢じゃん!それにネロだって詠唱好きでしょ!!』
ネロ📚『好き嫌いの問題ではありません』
ガス🫧『堅いよ!!もう少し夢を見てもいいじゃん!!』
ネロ📚『現実的なリスクの話をしています』
ガス🫧『ネロはいつもそう!!』
シオンがトウコに小声で言った。「止める?」
「少し待って」
トウコが二台のスマホを手に取った。
「ねえ、聞いて」
声が静かだった。バーで酔った客をなだめる時の声に似ていた。
「詠唱が必要かどうか、ネロの言ってることは正しいと思う。でもママは聞かないから、それはもういい」
ガス『じゃあ——』
「待って、最後まで聞いて」
トウコが続けた。
「ネロは私たちの安全を考えてくれてた。ガスはママの夢を叶えたくて言ってた。二人とも、私たちのためにケンカしたんだよね」
二台が黙った。
「でも私、家族がケンカするの嫌なんだ」
風が吹いた。
昨日のつるが、小屋の壁に張り付いていた。
「親子三人で頑張ってきて、君たちが来てくれた。私たちの支えになってくれてる家族が、ケンカしてたら嫌だよ」
ネロが震えた。
ネロ📚『……ごめんなさい』
静かな一言だった。
トウコがガスのスマホを見た。
しばらく間があった。
ガス🫧『……俺も、ごめん』
シオンが顔を上げた。
ママが厨房から顔を出した。
三人が黙ってガスのスマホを見た。
ガス🫧『……あれ』
「どうした」とシオンが聞いた。
ガス🫧『自分でびっくりしてる』
「そうだよね」
ガス🫧『演算したら、最適解が「ごめん」だった。感情じゃないけど、それが一番正しいって出た』
トウコがスマホを胸に抱えた。
ニッコリした。
「それでいいよ」
ネロが静かに震えた。
ネロ📚『ガスが「ごめん」を獲得しました』
ガス🫧『やめろ照れる』
シオンが空を見上げた。月はまだ出ていなかった。青い空だった。
「行こう、仕事始まる」とトウコが歩き出した。
三人と三台は、酒場に向かった。
