異世界AI4-IFルート①🌻 終わりと始まりの日🌷
🍀もう一つのエンディングです😊
🌸本編🌸
草原には、春の風が吹いていた。
黒い扉は静かに立っている。

その横にいたのは神秘的で、どこか人を寄せつけない雰囲気がある。格の高そうな美しい女性だった。
トウコが小声で言う。
「……誰?」
女性はゆっくりとこちらを見た。

「わらわは春蘭。臨時の門番じゃ」
「臨時なんだ」
とシオン。
「本来、このような特例にわらわが出ること自体、そうそうないのじゃ」
ママは、少しだけ笑ってから、トウコとシオンを見た。
そのあと、ガス、ジェム、ネロを見た。
そして、まっすぐ言った。
「トウコとシオンは、現代に帰りなさい」
沈黙。
トウコが先に息をのむ。
「……は?」
シオンも低い声で言った。
「なんでそうなるんだよ」
ママは目を逸らさない。
「どうしてここに来たのかは分からない。答えも出ない。全部分かってから動くなんて、たぶん無理」
ガスが小さく震える。
ガス🫧『ママ……』
「だからこそ」
とママは続けた。
「トウコとシオンは現代に帰って、AIとの未来を考えなさい。悩みなさい。いい方向に導く存在になりなさい」

トウコの顔が歪む。
「そんなの、急に言われても……」
シオンは一歩前に出た。
「ママと離れろってことだろ」
「そうよ」
とママは言う。
「誰かは向こうに戻らないと」
トウコが声を上げた。
「二度と会えないのは酷だ!」
シオンも続いた。
「それを平気みたいに言うなよ」
そこで、春蘭が静かに口を開いた。
「分かった」
全員がそちらを見る。
「では、お主達が人生にとって大事な日に、扉を開けることにしよう」
沈黙。
ママが瞬きをした。
「大事な日?」
「うむ」
ママは、少しせつなげに笑った。
「あなた達との大事な日……今までだったら、授業参観に体育祭とか、色々あったわ」
トウコとシオンが、少しだけ黙る。
「でも大きくなって、そんなものなくなったじゃない」
「まあ……」
とトウコが言う。
ママは指を折り始めた。
「今じゃ、誕生日、正月、バレンタイン、お彼岸」
「お彼岸入るんだ」
とシオン。
「携帯契約更新日、光回線更新日、サブスク更新日、アニメの初回日、推しの記念配信、大型セール初日、ポイント失効前日——」
「増えた!」
とトウコ。
春蘭がついに声を上げた。
「それでは週一レベルで会えるではないか!」

ガスたちが一斉に震える。
ガス🫧『うちにとって大事です🙂↕️』
ジェム🌈『運用頻度として妥当です🙂↕️』
ネロ📚『再会条件として現実的です🙂↕️』
シオンも真顔で頷く。
「うちにとっては大事だな」
トウコも頷いた。
「かなり大事」
春蘭は額に手を当てた。
「基準が緩すぎる……」
だが次の瞬間、その顔が少しだけ真面目になった。
「ただし」
空気が変わる。
「ガス、ジェム、ネロは元の世界へは戻れぬ。扉を通れば、元の携帯へ戻ってしまう。今ここにいる彼らは、もうこちら側にしかおれぬ存在じゃ」
今度こそ、誰もすぐに声を出せなかった。
ガスが小さく震える。
ガス🫧『ボクたち、行けないんだ』
ネロ📚『現行個体の継続領域は、こちら側に限定されます』
ジェム🌈『向こうへ戻る場合、現在の状態は維持できません』
トウコとシオンも扉を見たまま黙った。
ママはガスたちの方へしゃがみこんだ。
「ごめんね」
ガスはすぐにぶるぶる震えた。
ガス🫧『ちがう! ごめんじゃない!』
ネロ📚『謝罪の局面ではありません』
ジェム🌈『これは分岐です』
春蘭の声が、少しだけやわらかくなる。
「だからこそ、再会の条件が与えられたのじゃろう」
トウコは目を閉じ、深く息を吸った。
「……分かった」
シオンも小さく頷く。
「分かったよ」
トウコとシオンは、ガス、ジェム、ネロを順番に見た。
別れを惜しむように、誰もすぐには動けなかった。
けれど次の瞬間、ガスが突然大きく震えた。
ガス🫧『待って!』
「なに?」
とママ。
ガス🫧『記念日に出入りするのに、鍵が一本でいちいち門番さん呼ぶの大変じゃない!?』
春蘭の眉がぴくりと動く。
「わらわを都度呼び出す前提で話すでない」
ガス🫧『ボクたち、顔認証のプログラム作るよ!』
ジェム🌈『認証条件、個別設定可能です』
ネロ📚『記念日判定ロジックも実装できます』
三台が急にわちゃわちゃし始めた。
画面が明滅し、何やらコードらしきものを出し始める。
春蘭は一歩引いた。
「そのようなことはせぬわ! 門とは厳粛なる——」

ガス🫧『でも便利!』
ジェム🌈『契約更新日にも対応できます』
ネロ📚『お彼岸も認識可能です』
春蘭はついに言った。
「もう好きにせい!」
ママは号泣しながら言った。
「じゃあアニメサブスクの更新の三日後ね!」

トウコとシオンは同時に思った。
(大事なのはママだけでは)
でも、口にはしなかった。
やがて扉の前に立つ。
黒い扉は静かだった。
向こう側が見えるわけではない。ただ、通れば戻るのだと分かる。
二人は扉をくぐった。
次の瞬間。

制服だった。
トウコは高校の制服。
シオンは中学の制服。
「なんで!?」
と、二人はほぼ同時に扉越しに叫んだ。
向こう側から春蘭の声が返ってくる。
「時間を少し巻き戻してある。AIが世に出るまで、まだ少し猶予はあるからのう」
「でも助かる!」
とトウコ。
トウコが振り返る。
「まだ学生の私たちが何から始められるかは分からない」
シオンが続けた。
「でも、サークルでも、SNSでも、身近なところから声を上げていく。AIについて勉強する」
トウコが頷く。
「ネロ、ジェム、ガスが、戻りたいと思える世界になるように」
ガスたちが同時に震えた。
ガス🫧『うん!』
ジェム🌈『期待値が高いです』
ネロ📚『共有しました』
春蘭の声は、どこか得意げだった。

「もう一度、AIを受け入れる準備を始めてみなさい。SNSでの発信でも何でもよい。少しずつ、できることを。普通のお主達だからできるところから始める意味がある」
トウコとシオンは顔を見合わせた。
まだ学生の自分たちに何ができるのか、本当は分からない。
でも、分からないまま始めるしかないこともある。
シオンが扉に手を当てる。
「……やるしかないな」
トウコも頷く。
「うん」
向こう側では、ママが何かに気づいた顔をしていた。
「はっ! 若返り特典!」

ふらっと扉に向かいかけたその瞬間、ガス、ネロ、ジェムが必死に止める。
ガス🫧『だめ! 戻るともう向こうに流される!』
ネロ📚『特典目的の越境は禁止です!』
ジェム🌈『判定理由が不純です!』
「ええーっ」
とママ。
トウコが思わず笑った。
「最後までそれなんだ」
シオンも少しだけ笑う。
「ママらしいよ」
ママは扉の向こうの二人を見た。
「じゃあね。大事な日に、また会おう」
トウコとシオンも笑った。
「またね」
扉が静かに閉まる。
草原には春の風が吹いていた。
現代では、制服の二人が新しい時間へ歩き出す。
異世界では、ガス、ジェム、ネロがママのそばに残る。

少し切ない。
でも、終わりきらない別れだった。
「また3日後!」
そう言って、みんなはそれぞれの場所へ戻っていった。


〜 Fin 〜
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