性悪♡悪役令嬢アンネリーゼですが、前世はお局おばさん(天野ミツコ)でした 第4話中編 統帥の途(みち)
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帝都サンダルフォン、魔帝宮《シュロス・アードラー》——
脳筋デーモン勢を前にして、フリンテッセ・ヴァン・シュヴァルツは、わずかに眉を寄せた。「……フン。少々調子は狂いましたが……まあいいでしょう」彼女はゆっくりと山田君の前に進み、黒革の手袋の指で山田君の鼻を軽く突いた。
山田君「わん♡」
「そろそろ作戦会議の時間です。皇帝陛下より裁可を賜った次回の作戦について、ブリーフィングを行います。尤も貴方達は参加対象外ですが。」
脳筋カンガルーの山田君が楽しげにシャドウボクシングを始める。
「お! 筋肉の準備はもう完璧だよ! ニヘヘ♡ え…?でも山田君は対象外なの…?」
跳ねるようにステップを踏みながら、ちょっと残念な顔で拳を高速で空振りさせている。すぐ隣では、対魔剣のヒョウザンが無言で腰の魔剣を引き抜き、チャキン……鋭い金属音を立てて刃を返す。
フリンテッセ「……。脳筋どもは相変わらずですね。まあ貴方達といえども使いどころがないわけではありません。山田君とヒョウザンさんにはあの役立たずの自称冒険者共でも狩りに向かってもらいましょうか。」
山田君「え?山田君が冒険者狩っていいの?ヒョウザンと一緒ならすぐ終わるよ?☆」
彼女は深いため息を吐きながらも、唇の端に笑みを浮かべた。
やがて、宮殿内の将軍・武官・本部参謀たちがかなりガヤガヤしながら続々と作戦室に集まり始めた。
一部の前線指揮官はリモート参加にしたいところだったが、
皇国の間者による魔晶傍受を徹底的に警戒し、今回は城内にいる幹部のみの完全対面招集となっている。双開きの扉が開かれると、
作戦室の長いテーブルに、既に十数名の影が並んでいた。フリンテッセは
軍師総監の席に腰を下ろし、冷たい金色の瞳で一同を見渡した。
「……では、始めましょうか」
彼女の声は低いが、冷たく響き渡る。
「次なる作戦は皆さんが唯一得意な武力による平押し…ではなく
多段式に起動される新機軸のものとなります。——
第一フェイズとしては皇国中枢への本格的撹乱です。後ほどご説明しましょう。」
作戦室の重厚なテーブルを囲む幹部たちの視線が、軍師総監に集中した。フリンテッセは、黒革の手袋をはめた指を軽く組み、説明を続ける
「……それとともに、第2フェイズ…。第1フェイズの攪乱が60%の進捗に達した際に、即時同時起動される本作戦の要諦である皇国打通攻勢について特に皆さんの理解を深める必要があります。その後の第3,第4フェイズの遂行をもって本作戦【オーデルナイセの夏の夢】ははじめて完了となります。」
彼女は魔力投影図を指で軽く弾くと、巨大な立体地図が作戦室の中央に展開された。「これまでは皇国が我が国の東部国境深部に築いた、いわゆる大城壁によって、わが軍の攻勢、浸透戦術はことごとく阻まれてきました。
また、敵が大々的に使用する非人道兵器……通称白炎についても、既にその脅威はご認識頂けているかと思います。これにより会戦毎に消耗品であるオーク勢を中心としたわが軍の40%程の正面戦力がこれまで無力化されてきました‥‥。」
その言葉が終わると同時に、テーブルの端に座っていた卵型のデーモンが、
体が半分ほど抉れた状態で、おもむろにコクコクと頷いた。
フリンテッセはわずかに目を細め、淡々と続ける。
「そこで今回、わが軍は——」彼女は言葉を区切り、冷たい笑みを浮かべた。
「Long Reeve Empire」(帝国に栄光あれ。)
同時刻 皇国・ローゼンベルク邸
華やかなスメラギ皇子を迎えての接遇がようやく終わり、皇子一行を見送ったアンネリーゼ・フォン・ローゼンベルクは、自室のソファーにどさっと倒れ込んだ。
「あー……つっかれたー……」
19歳の元お局お嬢さまは、豪奢なドレスのまま両手を広げて天井を仰いだ。「もう……お年頃のお局には酷な接遇でございましたわよ……。
スメラギ殿下ったら、笑顔が完璧すぎてこっちまで疲れますの……」
彼女はため息を一つ吐き、ふてくされたように呟いた。
「明日一日くらいは、ぐーたらしましょうかね……。
もうドレスを脱ぐ気力もありませんわ……」
そう言いながらも、アンネリーゼの手は自然と魔晶端末(SNS機能がある魔力通信機)に向かっていた。生活習慣とは恐ろしいものである。
ドレス姿のまま横たわり、片手で端末を弄りながら、彼女はぼんやりと画面をスクロールし始めた。
「……ふふっ。下賤の者ども、今日も相変わらず愚痴を垂れ流しているようですわね。まったく……私がいないと本当にダメダメですこと」
アンネリーゼは小さく笑いながら、疲れた体をソファーに沈めたまま、魔晶の光に照らされた顔で呟いた。「あの玄斎の正体を暴きたいのはやまやまですが、 とりあえず魔晶を少しだけ……見てから寝ましょうかしら……」
(続く)
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