【読書感想文】アカガミー1 窪美澄さん



【読書感想文】アカガミー1 窪美澄さん
トリニティを読んでから、窪美澄さん、けっこう好きです。「アカガミ」はディストピア小説ですが、読みではそこまで無く、
ディストピア小説と言われて、その代表と言えるような、オーウェルの1984、ハクスリーのすばらしい新世界、ブラッドベリの華氏451度のような小説を期待したり、スローキンのブロの道のようなロシア文学を思い描いたり、読書家を自認するような人が読んだら、物足りないとは思うかも知れない。
背景は2040年の日本・東京。
主人公はミツキ、20代半ば。介護職。
ミツキの母。かつてミツキの父親が浮気したことを原因に離婚し、それをきっかけにうつ病を発症、ミツキが介護している。
登場人物は博物館勤務、学芸員?研究職?アカガミ制度におけるミツキのパートナー、サツキ。
主人公にアカガミ制度を紹介した謎の女性、ログ。
ハルノ。アカガミに適合したミツキが移り住んだ団地で出会った童顔の女性。
少子高齢化が進んだ超高齢社会ながら、10代~20代のセックス離れ・自死率は高まっていた。
「識者」の喧々諤々の議論や対策もむなしく、ミツキも「問題」の世代で、大学在学時から、生きる事への虚しさや老いへの不安、焦燥感に侵され、大陸由来の怪しい店で睡眠薬を買い込み、普段は足を向けることないバーのトイレで自死を試みる。
トイレで倒れている彼女に気付き、救助・解放したのは、ログという女性だった。知人の店に迷惑をかけるな、という叱責されたミツキは、ログに好奇心が沸いた。
酒を飲まないものの、バーに通うようになった彼女は、はじめはログの話を聞くばかりだったが、自分の身の上を語るようになる。
ログは、風俗を仕事にしているが、公務員。かつては娘を産み育てていたが、15歳の時に飛び下りで自死したと語った。
「女にとって子宮は重要で。それを使わずにすべての時間が全て自分に向けられた時に、女は狂う…」
というログのことばを呪詛のように捉え、対して「アカガミ」制度の紹介をまるで福音のように、迷える子羊状態のミツキは、アカガミに志願する。
志願は特に年配に受けが良く、志願を伝えると職場の施設長はサポートや有休の融通など、快く受け入れた。
けれど、同居の母親は良い顔をせず、
「たった一人の家族を捨てていくのね」と言われてしまった。
厳密なメディカルチェックを経て、「適合」となり、団地に移り住むことになったミツキ。家族のケアも手厚く、自分の衣食住はもちろん、同居家族、つまりミツキの母も、ミツキが不在の間はヘルパーが定期的に様子を見てくれる。
一昼夜後に、ミツキの相手として部屋にやってきたのは、サツキという男性。
実は彼女は、仕事柄、男性器そのものは見慣れていて、抵抗がない。陰茎を持ち亀頭、次に陰茎・陰嚢を拭くという清拭はもちろん、卑猥なことばをかけられたり、体を触られたりすることも、ままあった。
自死未遂の経験あり、性欲が薄い
それらを包み隠さず明かし、
医師に「自分に問題はないか?」と問うても
「全くの健康体」と返事がある。
それでもミツキは、自分が生殖を行えるかどうか不安だった。
サツキとの共同生活が始まってから、健康状態は常に医者に送信していた。
サツキとの関係を強要されることはなく、アカガミは辞めたければいつでも辞めることが出来たが、いざ性行が始まれば、検診でそれは医師に知られることとなり、排卵日には、性行を行うように言われていた。
ミツキは不安を抱えながらも、少しずつサツキと打ち解けていった。
サツキは北陸出身であり、障害のある両親と弟たちを養うためにアカガミに志願した、という経緯をミツキに明かしたが、アカガミを辞退・もしくはミツキにパートナーチェンジを言い出すつもりは無いと言った。
二人の間には、いつしか恋愛感情が芽生え、団地に住み始めてから数ヶ月後に、子供を授かった。
サツキが、ミツキの母親に挨拶がしたいと言うので、ミツキはサツキを自分の家に連れていくことにした。
ミツキの母親が鬱である、という事情を除いて、アカガミという制度、及び職員は、団地に部外者を入れるということに、凄まじく非寛容だった。
アカガミ団地は、刑務所のような漆喰塀に囲まれ、その外で、抗議デモらしい車やスピーカーの音が、ざわざわと不明瞭に漏れ伝わってくることがある。
団地で知り合い交流ができたハルノは、そうした活動家を警戒してのことだろうと言っていて、ミツキも深く気に止めたことがなかった。
