【日本遺産の基礎知識】藍のふるさと 阿波~日本中を染め上げた至高の青を訪ねて~(徳島県)
執筆:日本遺産普及協会監事 黒田尚嗣
徳島県の日本遺産「藍のふるさと 阿波~日本中を染め上げた至高の青を訪ねて~」の基礎知識を紹介します。
※本記事は、『日本遺産検定3級公式テキスト』一般社団法人日本遺産普及協会監修/黒田尚嗣編著(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。
日本遺産指定の背景
古くから日本人の生活に深くかかわり、神秘的なブルーといわれた「藍」。徳島県の北部を雄大に流れる吉野川の流域は、藍染料の日本一の産地です。
この地域の平野部に見られる高い石垣と白壁の建物に囲まれた豪農屋敷や、脇町の豪華な「うだつ」があがる町並み、「阿波おどり」のリズムからは、藍染料の流通を担い、全国を雄飛した藍商人のかつての栄華をうかがい知ることができます。
この地域では、今も、藍染料が伝統的な技法で生み出されており、その色彩は、人々を魅了し続けています。

1.藍の里の景観と風土
徳島県北部を東西に流れる吉野川の流域は、豊富な伏流水に恵まれ、洪水によって肥沃な土壌がもたらされることから、藍の栽培に適した土地柄でした。平安時代の終わりに阿波で栽培が始まった藍は、室町時代にはこの地域の特産となりました。江戸時代に入ると、徳島藩は、重要な財源として藍の生産を保護・奨励し、積極的に品質向上にも努め、江戸時代の中頃には、全国的な木綿の普及に伴い、藍染料が大量生産されるようになりました。
さらに、板野郡下庄村(現在の板野町)の藍農家に生まれた犬伏久助(いぬぶしきゅうすけ)が加工技術を改良したことにより、品質が高まった阿波の藍染料は「本藍」と呼ばれ、全国市場での人気を独占し、販売特権を与えられた阿波の藍商人は、莫大な利益を藩にもたらしました。
2.藍染料、「蒅」づくりの技
初夏に収穫した藍の葉を細かく刻み、乾燥させ、発酵させることで藍の染料ができ上がりますが、加工場である「寝床」では、積み上げられた藍の葉に水を打ち、攪拌し、発酵を促す作業が、秋から冬にかけて何度も繰り返されます。そして、初霜が降りる頃、藍師の手仕事によって発酵が進んだ藍の葉は、黒い土の塊のような姿になり、藍の色素が凝縮された「蒅(すくも)」と呼ばれる藍の染料ができ上がるのです。
3.阿波藍の流通と繁栄
阿波の藍師が手塩にかけてつくり上げた藍染料は、徳島藩から販売権を容認された藍商人を通して、大阪・名古屋・江戸をはじめとする全国の藍市場に供給されました。藍商人たちは、富を得るだけでなく、全国各地との文化交流の担い手となりました。徳島城下の盆踊りに、上方で流行していた俄踊(にわかおどり)が登場するようになったのをはじめ、今日の「阿波おどり」には、各地のさまざまな要素が取り入れられています。例えば、「阿波よしこの節」は、茨城県の「潮来節」が元になっているともいわれ、そこには全国を雄飛した阿波の藍商人の姿を感じることができます。
また、芸事を好み、金銭を惜しまなかった阿波の藍商人が頻繁に人形座を招いて人形芝居を楽しんだことから「阿波人形浄瑠璃」などの木偶(でく)文化も隆盛しました。

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著者プロフィール
日本遺産普及協会代表監事。近畿日本ツーリストなどを経て、現在はクラブツーリズム株式会社の顧問を務める。旅の文化カレッジ講師として「旅行+知恵=人生のときめき」をテーマに旅の講座や旅行の企画、ツアーに同行する案内人や添乗員の育成などを行う。また自らもツアーに同行し、「世界遺産・日本遺産の語り部」として活躍中。旅行情報誌『月刊 旅行読売』に「日本遺産のミカタ」連載中。著書に『日本遺産の教科書 令和の旅指南』などがある。日本遺産国際フォーラム パネリスト、一般社団法人日本旅行作家協会会員、旅の文化研究所研究員、総合旅行業取扱管理者
