【休職対応】「何度連絡してもつながらない…」休職者とのコミュニケーション術
こんにちは、日本綜合社会保険労務士法人の山田です。
人事担当者として、「休職中の従業員と連絡が取れなくなってしまった」というご相談をよくいただきます。皆様の職場でも、同様の悩みを抱えているケースはないでしょうか?
「電話にも出てもらえず、メールも既読にならない……」
「このまま放置していいのだろうか……」
真面目な人事担当者様ほど、このような状況に心を痛め、「何かあったのでは」「会社に見放されたと思われたらどうしよう」とご自身を責めてしまうかもしれません。
私自身、育児休業を2回取得した経験もあり、働く方々を応援する中で、休職対応には特に力を入れてきました。
最初は私も、連絡が途絶えてしまった社員さんに対し、どうすれば本人の負担にならず、かつ会社としての責任を果たせるのか、そのバランスに悩んだものです。
しかし、ご安心ください。連絡がつかない状況は珍しいことではありません。そして、このような状況でも、「配慮」と「ルール」の両輪で進める、会社として取るべき対応があります。
そこで今回は、休職者とのコミュニケーションにおける大前提から、連絡が途絶えた際の具体的な対処法までを解説します。
なぜ連絡がつかなくなるのか?

まず、休職中の方が会社からの連絡を避ける背景には、さまざまな心理状態が考えられます。
体調の問題:心身の不調が重く、電話に出たりメールを返したりする気力そのものがない
罪悪感:「会社に迷惑をかけている」という思いから、連絡を受けること自体が精神的な負担になっている
将来への不安:「このまま復職できないかもしれない」という焦りや不安から、会社と向き合うことが怖い
これらの背景を理解せず、一方的に連絡を続ければ、従業員の不信感を招き、復職への道を遠ざけてしまいます。
最悪の場合、退職時のトラブルに発展するリスクもゼロではありません。だからこそ、感情的にならず、ルールに則った冷静な対応が求められるのです。
休職は「会社のルール」に基づく手続き
休職者への配慮はもちろん重要ですが、その大前提として、休職は会社の就業規則(休職規程)に基づいて行われる正式な手続きであることを忘れてはなりません。
そして、休職規程には通常、従業員が守るべき義務も定められています。その中でも特に重要なのが「定期的な病状報告の義務」です。
これは、会社が従業員の状況を把握し、安全配慮義務を果たすために不可欠なものです。
休職期間中に病状を報告することは、労働者の義務であり、会社として当然求めるべき権利なのです。
【重要】トラブルを防ぐには「休職開始時」の取り決めが9割
後のトラブルを防ぐため、最も重要なのは休職に入る前の初期設定です。
以下の点を口頭だけでなく、必ず「書面(休職辞令や休職に関する同意書など)」で取り交わし、双方で確認しましょう。
連絡手段と頻度
本人の希望を聞きつつ、「毎月第〇営業日までに、メールでご連絡します」など、具体的なルールを決めます。
定期報告の義務
「毎月〇日までに、主治医の診断書(または所定の報告書)を提出してください」と明確に義務付けます。
復職の手続き
復職を希望する場合、「①主治医から復職可能の診断書を提出後、②会社の指定する医師(産業医等)の面談を受け、会社が最終的に復職を判断する」という流れを明確に伝えておきます。
この初期設定を丁寧に行うことで、「言った・言わない」のトラブルを未然に防ぐことができます。
連絡が途絶えたとき冷静に対応する3ステップ
では、事前に取り決めをしても連絡が途絶えてしまった場合はどうすればよいのでしょうか。慌てずに、以下のステップで対応してください。

ステップ①連絡内容を「事務的」かつ「配慮ある」ものに
まずは、これまでの連絡手段(メール等)で、相手に負担をかけないシンプルなメッセージを送りましょう。
休職理由への配慮
「お加減いかがでしょうか。ご無理のない範囲でご返信ください」と、相手の体調を気遣う一文は必ず入れましょう。
事務連絡を主軸に
「傷病手当金の申請時期が近づいておりますので、ご案内をお送りします」など、相手にもメリットのある事務的な内容に絞ります。
会社としての姿勢を伝える
「何かお困りのことがあれば、いつでもご相談ください」と伝え、孤立感を和らげます。
ステップ②連絡方法を段階的に変更する
メールや電話で複数回連絡しても応答がない場合は、連絡方法を切り替えます。
郵送(普通郵便)
傷病手当金の申請書類など、事務的な書類を送付します。
配達証明付き内容証明郵便
休職期間の満了が近づいている場合や、定期報告が長期間滞っている場合は、「〇月〇日までに病状報告書をご提出ください。
ご連絡がない場合、就業規則第〇条に基づき、休職期間満了をもって退職扱いとなります」といった通知を、記録が残る形で送付する必要があります。
これは、会社が適切な手順を踏んだことを証明するための重要な手続きです。
ステップ③ルールに則り、専門家と連携する
連絡が取れないまま休職期間満了が迫ってきた場合は、感情的にならず、就業規則に則って手続きを進める必要があります。
産業医との連携
復職の可否は、最終的には会社が判断します。その際、産業医の意見は非常に重要です。
主治医の診断書だけでなく、産業医の面談を経て、客観的な判断を下す体制を整えましょう。
就業規則に基づく対応
休職規程に「休職期間満了後、復職できない場合は自然退職とする」といった定めがあれば、その規定に従って手続きを淡々と進めます。
これは、他の従業員との公平性を保ち、会社組織を守るためにも不可欠です。
安心と信頼のコミュニケーションで円満な解決を

「何度連絡してもつながらない」という状況は、人事担当者にとって大きなストレスです。
しかし、大切なのは「なぜだろう?」と相手の状況に思いを馳せる配慮の心と、会社のルールに則って冷静に行動する姿勢、この二つのバランスです。
休職対応を丁寧に行うことは、従業員との信頼関係を再構築する絶好の機会。
休職中の方に寄り添いながらも、明確なルールを示すことで、その後の円滑な復職支援、ひいては「この会社でまた頑張ろう」という前向きな気持ちを引き出すことに繋がるはずです。
今回紹介した内容が、皆様の実務対応の参考になれば幸いです。
復職についてのロードマップや休職にかかる就業規則の定め方については過去記事でも触れているのでご参考くださいね。

