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四角いやつが、読めなかった

ひょんなことから、
叔母の遺産相続に
関わることになった。

といっても、
私たちが裁判で
何かするわけではない。

まず頼まれたのは、
叔母が今、どういう状況なのかを
一緒に整理すること。

夫の叔母は、
ご主人を亡くしてから、
もう4年ほど遺産相続の問題を抱えていた。

弁護士さんにもお願いしていて、
裁判も進んでいる。

ところが最近、

「もう、遺産は諦めようかな」

と言い始めたらしい。

叔母の姉である義母が心配して、
甥である夫に相談してきたのだ。




私は、がんの闘病中、
この叔母にずいぶん助けてもらった。

だったら今度は、
こちらの番。

まずは状況を把握しようということになり、
弁護士さんから届いている資料を
見せてもらうことにした。

今どきの裁判資料は、
メールにPDFやWordのファイルが
添付されて届く。




夫が叔母に、

「その添付ファイルを送って」

と頼んだ。

「うん、わかった!」

元気のいい返事。

ところが。

待てど暮らせど、
何も来ない。

夫が電話をかける。

「どした?」

「今ね、メールをひとつずつ読んで探してるところ」

どうやら、
私たちが送ってほしいものが
見つからないらしい。

「添付されてるファイルを送ってくれればいいんだけど」

夫が説明する。

すると、

「今、探してるのよ。あれでしょ?」

「あの四角いやつでしょ?」

四角いやつ。

……たぶん、それです。

しばらくして、

ピーン。

四角いやつが届いた。

ところが、
次が来ない。

かれこれ30分。

夫が再び電話。

「どした? ファイルだけ選んで、サクッと送ってよ」

「え? ふぁいるぅ?」

叔母の狼狽えた声が聞こえる。

「……あ、もういいや。大丈夫」

電話を切った夫が、

「昭和のポンコツロボット……だな」

と、つぶやいて笑った。

私の頭の中には、
『がんばれ!! ロボコン』の映像が甦る。




その後も、
数十分に一度のペースで
資料が送られてきた。

ただ。

叔母にも、
確実に“進化”が見られた。

だんだん送信のコツをつかみ、
ついには
ファイルそのものを添付できるようになったのだ。

おお。

ロボコン、
成長している。




……ただし。

送られてきたのはWordファイル。

これ、
叔母自身は読めていないんじゃないか。

今、自分が
どんな状況なのかも、
よくわかっていない可能性が高い。

可能性というより、
ほぼ確定。

これはもう、
放っておけない。

今後は夫が整理役として間に入り、
叔母にも状況がわかるように
していくことにした。

近いうちに、
弁護士の先生にもお会いする予定だ。

叔母への恩返しができる
チャンスだと思って、
私も一緒に関わることにした。

この先は、
いずれまた。





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