膵癌、RTの本当のターゲットはTriangle zone/volumeにあり!(長いです)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0360301626005328

SBRTで、切除不能が前提の論文だが、照射野に関して一定の示唆を与えるので、読んでみた
切除不能PDACに対するMR-Linacを用いたAblative SBRT(高線量5回照射) の再発パターン解析研究

従来の膵SBRT

  • GTV(見えている腫瘍)のみ照射

  • 比較的低線量(33–40 Gy/5fx)

  • elective nodal irradiationなし

が一般的。

しかし問題は:

  • 2年局所再発率が約50%

  • in-field failureも多い

  • 血管周囲やリンパ節に再発しやすい


そこで著者らは:

  • 高線量化(50 Gy/5fx)

  • elective CTV追加

  • “triangle volume”照射 (後述)

が有効かを検討

<対象>
121例の非転移性PDAC。
特徴:

  • 局所進行癌が74% で88%が導入化学療法あり。ほとんどが、FOLFIRINOXやGEM+nabPTXといった現代的な化学療法。


放射線治療
基本線量
GTV:50Gy/Fr CTV elective:33Gy/5FrのSIB

時代とともに反省も踏まえCTV electiveはどんどん拡大していった。
最初はCTV electiveなし、そこから
CTV1:病変血管の同一断面のみ
CTV2:SMA/CA近位1–3 cm
CTV3:SMA first jejunal branch+CA bifurcationまで
CTV4:CTV3に“triangle volume”(後述)を含む
SMA・CA・CHA・PV・大動脈周囲まで含めた広範囲CTV。

主要結果
1. 局所再発率が非常に低かった
LRF(局所領域再発)は:

  • 全体で14% ・2年LRF率 25%

⇒従来報告(30–50%)よりかなり良好

2. In-field failureが極めて少ない
全121例中:

  • in-field:2.5%

  • marginal:6.6%

  • out-of-field:5.0%

高線量50 Gyがgross diseaseをかなり制御している

3. 予防照射を広げることで、局所領域再発が減る!
CTV4群は36例中局所領域再発ゼロ!

4. 再発部位
再発しやすい場所:

  • 傍大動脈LN

  • 肝門部

  • SMA周囲

  • CA周囲

<膵の腫瘍本体より血管周囲に再発する>

5. CTVありでLRF減少
Fine-Gray competing risk解析でCTVが広くなることで(なし-CTV1とCTV2-4の比較)でLRF↓その分、CTVが広くなると悪心などの副作用は増える。

<小括>
この論文は膵癌の“予防的なCTV”についていろいろな示唆がある。
SBRTなので、線量がシャープな分、入らなかった部分の影響がもろに出ているからである。
膵がん予防的照射について他論文・個人的経験、賢いAIの助けも借りて考察してみた。

ちなみに、今回の話はほとんど膵頭部・膵鉤部の膵癌のRTの話と思っていただきたい。

<なぜ膵癌で局所制御が重要か>
膵癌は「遠隔転移の癌」と考えられがちだが、実際には局所進行による死亡・症状も非常に多い。
Prezも読み直してみると手術をしても累積の局所再発は半分以上と。
Johns Hopkinsのrapid autopsy研究では

  • 約1/3の患者は広範な遠隔転移なしで死亡

  • 死因は局所進行(胆道閉塞、十二指腸浸潤、血管浸潤など)

⇒局所制御はQOLだけでなく生存にも影響しうる

膵癌の局所再発(領域再発)の主因として
pancreatic perineural invasion(PNI:膵外神経周囲浸潤)
が注目されている
膵癌は神経が好きで、実際神経浸潤は取り扱い規約に入っているし、
神経に沿って広がる

  • intrapancreatic PNI はほぼ普遍的

  • extra-pancreatic PNI も非常に高頻度

  • しかも小病変でも起こる


<神経叢浸潤の方が局所再発を規定している>
日本の術前CRT研究で

  • extra-pancreatic PNI → 局所再発予測因子

  • LN転移 → 遠隔転移予測因子

と報告されているらしい。 つまり「PNIを意識した予防CTV設定」を行う必要性を提唱。

Triangle zone/volumeという2020年ごろから提唱された
 概念の重要性について>
この領域には:

  • pancreatic head plexus I

  • pancreatic head plexus II

  • SMA plexus

  • celiac plexus

  • CHA plexus

など、膵頭部癌が進展しやすい神経叢が集中している
⇒「膵癌の“神経のハイウェイ”」
⇒膵癌の局所再発しやすい場所!!


日本の膵癌取り扱い規約の図



初期の膵SBRTは:

  • GTV と周囲の浸潤血管のみを小マージンで照射していた。(Alliance A021501が代表)

しかしJohns Hopkinsの解析では:

  • R0率92%なのに、局所再発率が高い

そこで、局所再発した31例について再発部位mappingを行ったところ。
>90%の局所再発がTriangle内、同様の結果が他施設からも

Triangle irradiationの臨床効果
Johns Hopkinsは2020年以降、SBRT CTVにTriangleを追加
結果 2年LRFS 49.3%⇒83.9% 2年局所再発 47%⇒12%
と劇的改善⇒Triangle Volumeへの照射の重要性が示された。

実際外科でも
SMA plexus・celiac plexus・CHA plexusは廓清しましょう、と提唱しているグループがある
ただ、神経叢を切除しすぎると難治性下痢のリスク↑ 
完全切除はなかなか難しい。

⇒そこをRTで補完すべき!

 

ただし、消化管などのOARへの配慮は重要
・MRIリニアックやCBCTでのアダプティブ放射線治療
・重粒子線
・(何と今になって)IORT boost
・SIBによるdose painting
が今後の方向性として臨床試験が行われていると。

<Triangle zone/Triangle volumeの実際>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40935439/


(非常に読みやすい)


 元祖的な論文

Triangle zone(トライアングルゾーン)とは、
膵がんの放射線治療における予防的照射領域の一つで、
腹腔動脈(celiac axis)、上腸間膜動脈(superior mesenteric artery)、
総肝動脈(common hepatic artery)、門脈(portal vein)、
上腸間膜静脈(superior mesenteric vein)によって囲まれる解剖学的領域
を指します。 この領域は、膵外神経路(extra-pancreatic perineural tracts)およびリンパ管路が高密度に存在しており、
顕微鏡的病変が潜在し局所再発の原因となる可能性があります。

とAIさん

外科手術時の展開像



<Triangle volumeの具体的contouring>

★上縁:CA起始部より7 mm頭側から開始さらにCA沿いに celiac bifurcationまで 追う
★外側境界右側:CHAを追跡 (GDA分岐まで)  PVはこのレベルで含める
★後方境界:PV後方〜大動脈前面を含めています。
さらに上方ではIVC前縁まで
⇒PLphI(pancreatic head plexus I)のPV/SMV後方 ・右腹腔神経節方向への進展を意識
★下縁:SMA first jejunal branch

  • SMAをかなり尾側まで追う !


さらに追記として
※7 mm paintbrush rule
血管周囲7 mm brushでTriangle Volumeを描くことを推奨
これは:血管周りの神経叢・リンパ路・線維組織を意識

※予防照射としてはこのtriangleに追加して
大動脈周囲、部位によっては脾動脈周囲も入れるべきと個人的には思う
(最低でもCTVでは大動脈左縁まで入れたい)


<個人的付けたし・まとめ>
・つまりは“膵癌の予防照射”はリンパ節ではなく、神経叢を狙うことを意識するのが大事。
・自己の経験はほとんど術前照射。33Gy/5Frの予防照射とほぼ同等のBED10を腫瘍本体・予防領域に照射していた。
・R0率は高く、SMA全周郭清はしていなかったはずだが、確かに「照射野内」再発はほとんどなかった。
・R1になったのは血管ではなくRPであった。
・CHA自体はあまり意識していなかったが、自分のコンツールを思い返すとGTVと予防的リンパ節領域にマージンつけた時点で自然に入っていた印象
・Triangle Volumeは意識していなかったが、再発形式などを振り返って調整していたらたまたま自然に入っていたのかもしれないのと、手術が入って上増しされていたのがあるのだろう

https://store.isho.jp/search/detail/productId/1600007370


も読み直してみた。神経叢浸潤は画像上ちょっとでも疑わしかったら
やっぱり怪しい。
PLphIIや大動脈とSMAの間の神経叢も意識して「SMAと大動脈の隙間」もしっかり
含むことが必要そう
・以前も書いたが、消化管がOARであることが最も問題であり、治療中にも動く。特に幽門部近辺はかなり動いている印象(胃のMALTの論文など読むと1cmぐらい治療中にうごくこともあると)十二指腸球部は潰瘍穿孔の好発部位だが、RT後にそこに穴が開いた経験がある。(DP症例)他の施設でPRVマージンを縮小したら、やはり消化管出血(幽門近辺)が多かったということも聞き、病理の検体でもこの辺りの十二指腸に潰瘍がありました、と言われることもあったので、この部分のケアは必用そう。
・自身の経験もあるが、膵癌をやっている放射線治療医と話するとSMA/SMVの末梢のあたり(今回の論文などでJ1までは含める、と書いてあったが、それはマストでそれ以上は?)に局所領域(というか照射野辺縁)再発してくることを皆経験している。痩せている人は難しいが、比較的脂肪が周りにある(腸間膜の中だから?)ので、個人的には常識の範囲内で末梢まで入れるようにしていたhttps://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0360301624035168 
も参考になる
・個人的経験上、根治照射はいい思い出があまりない。(50.4Gy/28Frで5年近く無再発で生きた人の経験もあるが、チャンピオンデータ)原発に線量をしっかり入れることが肝要なので、OARとも相談、IGRTも消化管には限界があるので、MRIリニアックでのSBRT、CBCTベースのアダプティブ放射線治療での線量増加、重粒子線治療などが今後の流れか。

※ 優秀な膵臓外科の同期にも聞いてみた
・R0切除したけど局所再発することは結構な頻度であって、まさにPNIが主な要因だろうと実感してる。

・PLPh-1,2の郭清は膵頭部癌ではマストだけど、PLsmは画像上接触がなければ(resectable膵癌)下痢のことがあるので郭清していない。
神経叢外周(outermost layer)がリンパ組織と神経叢の明確な境なので、
この層で剥離している。

・CRTやってもらってから手術でやっているところもあるが、
 日本全体では術前ケモのみでいくのが多いと思います。

・CRT後であっても元々浸潤/接触があった部位は神経叢郭清している。
 やっぱり下痢になる。

・某大学はCRT後は、そこにはviableな癌細胞はいないとみなして
 敢えて神経叢を残してくるoff road resectionという概念を提唱している。
・予防的照射で照射野を広げるというのは、
 病理のマージン評価で捉えきれない
 PNIの広がりを叩くということで、なるほどなと思いますが、
 いかんせん目に見えない標的なのでどこまで照射野を広げれば
 根治的になるのか、根拠がほしいところ。
 副作用との兼ね合いがあるので。

とのこと。


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